斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」: なぜ女性皇族が「分担」しなければならないのか | 護国夢想日記

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 日々夢みたいな日記を書きます。残念なのは大日本帝国が滅亡した後、後裔である日本国が未だに2等国に甘んじていることでそれを恥じない面々がメデアを賑わしていることです。日本人のDNAがない人達によって権力が握られていることが悔しいことです。

平成24年9月23日発行                   vol.248
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 斎藤吉久の「誤解だらけの天皇・皇室」
 (「斎藤吉久の天皇学研究所」メールマガジン)
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 1 陛下の御公務をなぜ女性皇族が「分担」しなければならないのか
   ──皇室典範改正、制度改革がどうしても必要なのか
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 久しぶりのメルマガ更新です。引き続き、いわゆる「女性宮家」創設問題について書きます。

 今年2月の政府の公表資料によると、その問題関心は「皇室の御活動」の維持であり、「両陛下の御負担」軽減でした。

「現行の皇室典範の規定では、女性の皇族が皇族以外の方と婚姻された時は皇族の身分を離れることになっていることから、今後、皇室の御活動をどのように安定的に維持し、天皇皇后両陛下の御負担をどう軽減していくかが緊急性の高い課題となっている」(「有識者ヒアリングの実施について」)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koushitsu/yushikisha.html

 しかし、この文章はかなり非論理的です。

 前半の「現行の皇室典範の規定では、女性の皇族が皇族以外の方と婚姻された時は皇族の身分を離れることになっている」は現行の皇室制度の中味ですが、後半の「今後、皇室の御活動をどのように安定的に維持し、天皇皇后両陛下の御負担をどう軽減していくかが緊急性の高い課題となっている」とは直接的に結びつかないはずなのに、いとも簡単に順接的につながっています。論理の飛躍です。

 政府の資料は、「このため、各界の有識者の方々から、皇室の御活動の意義や、女性の皇族に皇族以外の方と婚姻された後も御活動を継続していただくとした場合の制度の在り方等について幅広くご意見を伺い、今後の制度検討の参考とする」と続きますが、これも飛躍です。

 いつのまにか「天皇の御公務」が「両陛下の御活動」に衣替えし、「皇室の御活動」にすり替わっています。


▽1 御負担軽減に失敗した宮内庁

 宮内庁は御在位20年を契機として、陛下の御公務御負担軽減に取り組んできました。その場合の理由は「ご健康問題」でした。

 20年暮れの御不例を経て、翌21年1月には、御公務と祭祀の進め方についての方針が発表されました


春と秋の叙勲に伴う拝謁は回数・日程を削減する。首相級の外国賓客のご引見などは公賓・公式実務賓客の場合に限る。新年や天皇誕生日の祝賀行事は行事内容の見直しを行う。全国植樹祭などはご臨席のみで、「お言葉はなし」とする。宮中祭祀の新嘗祭は「夕の儀」のみ、旬祭は5月と10月のみ親祭とする──などとされました。

「調整・見直し」の背景には、「昭和の時代,例えば,昭和天皇が74歳になられた昭和50年当時と比べると,外国賓客や駐日大使との御会見・御引見等については,約1.6倍,赴任大使や帰朝大使の拝謁等については,約4.6倍,都内や地方へのお出ましについては,約2.3倍と,大きく増加しており,これらに伴い,両陛下の御負担も増大しました」という認識がありました。

 ところが、それから3年、今度は、御公務御負担軽減のために皇室典範改正が必要だというのです。女性皇族に婚姻後も皇室にとどまっていただき、御公務を「分担」していただく、というのです。目的も「ご健康問題」ではなく、「皇室の御活動」の維持です。

 キーマンである園部逸夫内閣官房参与は有識者ヒアリングでたびたび、こう述べています。

「天皇陛下の大変な数の御公務の御負担をとにかく減らさないと。それは大変な御負担の中なさっておられるわけでして、そうした天皇陛下の御公務に国民はありがたいという気持ちを抱いていると思いますが、国民として手伝えるのは天皇陛下の御公務の御負担を減らすことなんです。


そのためには、どうしてもどなたかが皇族の身分をそのまま維持して、その皇族の身分で皇室のいろいろな御公務を天皇陛下や皇太子殿下や秋篠宮殿下以外の方も御分担できるようにする。そして、減らしていくというのが最大の目的です」

 天皇陛下の御公務の御負担が大きいから、軽減が必要である、ということは理解できます。けれども、陛下の御公務を、なぜ女性皇族がご結婚したあとも「分担」しなければならないのか、が分かりません。明らかに説明不足です。

 まして、政府の資料にあるように、現行制度では婚姻後、女性皇族は皇籍離脱するから、「皇室の御活動」の安定的維持、「両陛下の御負担」軽減が緊急課題だ、という論理は理解不能です

 天皇は天皇であって、天皇の国事行為・御公務と両陛下の御負担は別であり、「皇室の御活動」などとひとくくりにされるべきではありません。

 結局のところ、宮内庁は数年前から「御負担」軽減策を具体的に進めたけれども、成果は実らなかったのです。私が一貫して指摘してきたように、祭祀が激減した一方で、御公務はかえって増えたのです。何が、どう増えたのか、なぜ減らないのか、という客観的な検証もなしに、女性皇族による御公務「ご分担」、皇室典範改正に一足飛びに飛躍させています。


▽2 宮内庁の数字に見るご多忙ぶり

 あらためて、天皇陛下のご多忙ぶりを、宮内庁の公表資料に基づいて、見てみます。

 宮内庁は、毎年暮れ、陛下のお誕生日に合わせて、「この一年のご動静」をリポートしています。そのなかで、内閣の上奏書類等にご署名・ご押印なさった件数、内閣総理大臣の親任式、国務大臣などの認証官任命式、新任外国大使の信任状捧呈式の人数などが具体的に示されています。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/gokanso-h23e.html

 以下の表は、それらの数値を、平成19年から昨年までまとめたものです。[]内の数字は私が調べました。宮内庁算出の数値がリポートにないからです。


内閣上奏書類のご署名・ご押印 19年1051件 20年1074件 21年(注1) 883件 22年885件 23年(注2)957

内閣総理大臣・最高裁長官の親任式 19年1件 20年2件 21年1件 22年1件 23年1件

国務大臣など認証官任命式 19年126件 20年136件 21年76件 22年136件 23年109件

新任外国大使の信任状捧呈式 19年29件 20年37件 21年24件 22年32件 23年34件

外務省総合外交政策局長のご進講・各種ご説明 19年[31件] 20年30件 21年46件 22年47件 23年54+33件(注3)

勤労奉仕団・献穀者などの御会釈 19年55件 20年52件 21年56件 22年54件 23年53件

宮中晩餐 19年2件 20年2件 21年1件 22年1件 23年[0件]

公式実務訪問賓客の午餐 19年6件 20年4件 21年6件 22年6件 23年[6件]

外国首相・国会議長ご引見 19年[14件] 20年[20件] 21年10件 22年10件 23年4年

海外国王・王族との御所でのご昼餐・ご夕餐 19年[7件] 20年[3件] 21年2件 22年[5件] 23年[3件]

都内・近郊へのお出まし 19年[43件] 20年49件 21年[38件] 22年45件 23年37件

地方行幸啓 19年1道1府8県[17市8町1村] 20年8府県[13市4町] 21年2府6県[12市1町] 22年9府県[29市5町1村] 23年12道県[24市5町1村]

宮中祭祀 19年38件 20年34件 21年[26件] 22年28件 23年21件

注1:平成21年7月3日~7月17日まで、カナダ及びアメリカ合衆国公式ご訪問。この間、皇太子殿下に国事公使臨時代行を委任。

注2:平成23年11月7日~12月6日までご入院・ご療養のため、皇太子殿下に国事行為臨時代行を委任。

注3:定例の外務省総合外交政策局長によるご進講や各種行事に関するご説明などが計54回、東日本大震災に関する諸分野の関係者・専門家のご説明が33回。