会見するパナソニックの大坪文雄社長=2月3日(古厩正樹撮影)
パナソニックが平成24年3月期に過去最悪の7800億円の最終赤字を計上する。テレビ事業など本業の不振に加え、買収した三洋電機の企業価値が低下し、巨額の損失計上を迫られた“誤算”が響いた。
今年1月に三洋とパナソニック電工の事業を本体に統合し、新たなスタートを切ったばかりだったが、グループの相乗効果で成長を目指すという戦略は産みの苦しみを味わっている。
のれん代に巨額損失
「買収しなければ、大きな成長は目指せなかった」
2月3日に都内で開かれたパナソニックの平成23年4~12月期決算発表会見。「三洋買収の判断は正しかったのか」と問われた大坪文雄社長は、語気を強めてこう反論した。
太陽電池や車載用電池などの成長事業を取り込むため、経営不振に陥っていた三洋を平成21年に子会社化。23年4月には完全子会社化に踏み切った。
投じた資金は約6600億円に上る。今年1月には三洋の各事業を再編して本体に吸収。3月末までに「SANYO」のブランドは原則としてなくなり、「Panasonic」に統一する。
だが、皮肉にも三洋の成長事業がパナソニックの業績の足を引っ張った。
「円高などで韓国勢の競争力が高まった」(パナソニックの上野山実常務)ことから、リチウムイオン電池事業の採算が悪化。三洋の企業価値が下がり、資産として計上していたブランドなどの付加価値である「のれん代」について、2500億円もの損失処理が必要になった。
ハイアールに“塩”
今年1月に三洋の白物家電事業を買収した中国の海爾集団(ハイアール)が15日に都内で開いた経営戦略説明会。杜鏡国副総裁は「三洋の技術とハイアールの調達力や情報収集力を融合し価値ある製品を提供する」と語り、相乗効果の発揮に自信をみせた。
同社は三洋から引き継いだ「AQUA(アクア)」ブランドの展開で日本での売上高を現在の約7倍の800億円に増やす計画をぶち上げた。
パナソニックは三洋買収後、重複事業の整理を進めてきた。白物家電の売却もその一環で、国内の340人を含む計3100人がハイアールに移る。東南アジアでは一定期間、ハイアールにSANYOブランドを使用することも認めた。
人員削減による合理化効果の一方で、白物家電で世界首位に立つ強力なライバルに、日本市場攻略のチャンスという“塩”を送ったことになる。
パナソニックは三洋の半導体やモーター、物流事業なども売却。グループの人員は昨年12月末段階で約34万8千人と、1年前に比べ約2万7千人減り、35万人以下に削減するとした目標を1年前倒しで達成した。
だが、「買収に伴う贅肉をそぎ落としただけで、業績の立て直しには一段のリストラが必要」(証券アナリスト)との指摘は少なくない。
リストラへの不安
三洋は主要な事業をパナソニックに統合した後も、デジタルカメラのOEM(相手先ブランドによる生産)や米小売り大手ウォルマート・ストアーズへのテレビ供給など、相手先との契約がある事業を継続している。
ただ、OEMは競争激化で採算が悪化。ウォルマートへの供給も将来的にはパナソニックブランドへの切り替えを検討中だ。三洋社員の間では、「新たな人員削減の対象になるのでは」との不安が消えない。
三洋にとって近年では最大のヒット商品となったコメを使う家庭用パン焼き器「GOPAN(ゴパン)」。三洋は今月1日にゴパンなどを生産する子会社「三洋電機コンシューマエレクトロニクス」(三洋CE、鳥取市)を4月1日付で吸収合併すると発表。
一部で「さらなるリストラの布石では」との不安が広がった。三洋は「新たな人員削減を意図するものではない」と、火消しに躍起となった。
「志を合わせてシナジー(相乗効果)を発揮しなければならない」。今年の元旦の午前0時。大坪社長はインターネットを通じてグループ約35万人の従業員に“結束”を呼びかけた。
リストラの荒療治は、グループの社員の士気低下を招き、シナジーの障害となる懸念がある。
今月3日の会見で大坪社長は「相乗効果を性急に求めるべきではない」とも語った。
だが、同日の株価は年初来安値の582円まで下げ、昨年1月に付けた直近高値の半分以下の水準に沈んだ。市場は早急な結果を求めている。大坪社長の苦悩は続く。(大柳聡庸)
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以前にもパナソニックが三洋の白物家電を中国のハイアールに売却したことを売国行為と糾弾したがそれが予想された通りになった。
中国企業は冷蔵庫や洗濯機などの白物家電の製造技術がなくフィリピンでは見たことがなかった。
その技術を提供すれば中国企業は安い労働力で日本製品に勝つのは当然であり、しかも三洋の名前で売って良いとおまけまでつけたのだから東南アジアや日本に上陸してくるのは予想されたことである。
では何故三洋を買収したのか?三洋の白物家電部門を何故ハイアールに売却したのか?
結果としてこれはハイアールに塩を送った売国行為であり経営陣の判断ミスである。