京都大学 藤井聡教授
TPPが推進される根源的な理由は、資本家やメディアの他に、思想的にいうと「内需が拡大できない」と日本国民が騙されているからです。
「日本はこのままでは経済成長ができない、世界から取り残されて、デフレが進行し、失業率が上昇するので、日本復活のためにはお家芸の輸出を延ばして経済成長しなければならない、だからTPPに入りましょう」という物語を、ジャンジャカジャンジャカ朝から晩までそればかり聞かされているんです。
「いやいや、内需拡大して自分の力で経済成長できますよ」ということを日本国民がキモでわかれば、なんだ、TPPなんて入らなくてもいいんだ、とすぐなるはずなんです。
だから世論形成のポイントは、内需拡大、自分の力で経済成長できるかどうかです。
だから、現代の日本における最大の課題は、
深刻に求められている公共投資のための大規模な財政出動を行い、
それにあわせた大胆な金融政策を行うことです。
デフレギャップがあるからデフレになる。
余った供給量を買うために公共事業をやるんです。
その時に、穴を掘って埋めるということをやっては意味がないので、本当に必要な公共事業を探して(なかったらやらない方がいいということがあるかもしれませんが)それをやればいいんです。
建設国債を発行して、日本銀行にそれを買わせればいい。
それをやれば適切なインフレになり、経済成長していきます。
さらにいうと、財政出動ができないという問題、「国債を発行すると破綻する」と国民が騙されているのですが、そういうことはありません。
これを通して「デフレを脱却して経済成長を果たす」ことができれば、どんないいことがあるかというと、
①復興ができます。ふるさとが再生できます。
②国土の強靱化
はっきり言って東京は危ないです。
東京大学の地震研究所の発表で、30年以内に首都圏で大地震が起きる確率は98%です。
今年生まれた子供が30才になるまでに、大地震に遭う確率は98%なんです。
過去のデータを見ると、東日本大震災のような大地震が過去に4回あり、その4回とも、10年以内に首都圏で大地震が起きている。
だから歴史的データから見れば、10年以内に起こるでしょう。
北大の地震研究者は今年の12月から危なくなるというデータを報告しています。
残念ながら、同じように西日本でも大震災が起こります。
中央防災会議は、首都圏でM8クラスの地震が起きたときの被害金額は350兆円と言っています。
今回の地震の10倍の被害です。
西日本でも同じようなことが起こるかもしれません。
しかし、年間20兆円ずつの大規模な公共投資でやれば、地震の被害を半分以下に抑えることができます。
これは土木工学的に自明です。間違いなくできます。
③財政再建もできます。
GDPが増えれば、そのかけ算として税収があるわけですから。
④失業率も減ります。
⑤格差社会も是正されます。
さらに僕の列島強靱化の計画は、地方に重点的に投資をすることを通じて、過剰に集中している都市機能を分散できます。
地方が豊かになれば格差社会が是正されます。
⑥円高対策
日本のGDPが増えると海外からものを買ってあげることができます。
貿易赤字を膨らましてもいい。貿易赤字を跳ね返すくらいの体力をもてばいい。
あまりやりすぎるとアメリカのようになってしまいますが。列島強靱化でGDPを拡大し、適切に輸入してあげたら、世界を救うことができるんです。
そうなると円高対策にもなる。輸入をたくさんすれば、円安になります。
そうすれば輸出企業はさらに輸出を伸ばせます。外国も資本家も儲かります。
⑦需要と供給の強化、は今申し上げたことです。
⑧高齢化対策にもなります。
高齢化は働く人が減り、供給量が減るということです。
今のうちにちゃんと投資をして一人当たりの生産性を高めておく対策を、今お金があるうちにせやっておかなければなりません。
そうすれば一人の人間が何人も養えることができるようになるわけです。
⑨当然お金持ちになれば人口減少対策にもなります。
⑩GDPが増大すれば国際的プレゼンスも高まります。
このようにいいこと尽くめなんです。
はっきりいって、日本にはこんなことができる能力があるんです。
これができれば、日本が豊かになるだけでなく、世界を救うことができるんです。
後生の日本人と世界の人々のために、平成日本人だけが負っている責任ですよ、これをやることは。
どう考えたってそうなんです。
でも、今、政局も世論も学会も官界も、その真逆の潮流があって、
少子高齢化の今、デフレは仕方がない
政府の借金が膨らみに膨らんだ今、内需拡大による経済成長なんて無理
だから、外に打って出るしか日本の活路はない。だからTPP…
と言われているわけです。
でもTPPをやると、本当に成長できない国になってしまいます。
本当にTPPを避けないといけません。
TPPに入ると、内需拡大のために20兆の公共投資をやっても、その何割かが外国に抜けていくわけです。
せっかく今、内需拡大ができる状況にあるのに、TPPに入るということはみすみす日本が成長できる環境を破壊することにもなる。
先ほど述べた日本人の責任を果たすことができないような、脆弱な国になっていくということです。
せっかく世界を救ってあげられるのに。
だから、本日11月7日の時点における最大の政治課題はTPPの阻止であることは間違いないです。
僕は大学の人間です。
全部の大局の中で、我が日本はどうするのか、ということを、恥ずかしながら口舌の徒なので、申し上げるしかできないんです。
僕の言っていることに間違いがあれば直しますが、今少なくとも僕はこれが正しいと信じています。
でも、これを実現する力は、残念ながら僕にはないんです。
口舌の徒として本に書いたり、こうしてお話するしかない。
だからこそ、政治の力が本当に今必要なんです。
僕はこう思います。
僕には選挙権があります。この先生立派だと思った人に投票します。
僕には口があります。この先生が立派だと思えば、応援してくださいと言ってまわることもできます。
言論の自由があるわけですから。
そして、実はそれ以外に僕たちは、被選挙権をもっているわけです。
しかし我々はそれを放棄している。
被選挙権を放棄した人間が、
「自民党もダメだから民主党にやらせたけど、民主党もダメ、でも自民党もダメだし、ほんと日本てダメだよな」
なんて言うやつがいたら、「じゃあ、おまえが出ろよ!」という話なんです。
被選挙権を行使しないで放棄している以上、誰かを応援する責任があると思います。
そして、僕は、自分の全力を賭して、西田昌司先生を応援したいと本当に心から思っているんです。
僕が正しいと思うことを、うれしいことに西田先生は聞いてくださいますし、国会の中で言ってくださいます。
ですから僕は全力を賭して西田昌司先生を応援いたいと思いますし、ぜひ皆様も応援していただきたい。
配付資料
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/images/stories/PDF/Fujii/201110-201112/presentation/fujii_seikeiseminar.pdf