説得して言い負かそうと思っていたのに、その一言とあいこが照れて俯いた表情のせいで、脳内にビックバン起こり、ドーンと爆発した。

そ…、そうだったんだ…!それはいい事を聞いた!
さっきのとろとろになったあいこの顔がふっと浮かび、脳内でゴングがカーンと鳴ったが、ぐっと踏みとどまった。
今日は試合開始してはいけないって、さっき言われたばかりだろうが!
それにマジで風邪がうつるし!

「……俺も、……あいことキスするの、……好きだよ。」
「……へっ…!?」
「それに抱きしめるのも好きだし、いつもどこかであいこに触れていたいって思ってる。あんまり二人きりになれるチャンスがないから、なかなかそんな事できないけど、キスするたびにあいこの事、どんどん好きになってくから……」
「うん………」
「だから…その…、俺はいやらしい事がしたいってわけじゃなくて、あいこと体を重ねてひとつになれたら、もっと幸せで、もっとあいこの事が愛しく思えるんじゃないかと思って……、それにあいこの事、もっともっと知りたいから……、それだけなんだ。」
「れ…ん……」
「だから……、今度、お願いします。」
「……………」
「……いい、……よね?」

目の前のあいこは俺の言葉に完全に心揺さぶられていて、今にも頷きそうな顔をしていたが、しばらくして急にハッと我に返り、ぎゅっと目を閉じると、首を横に振った。
なっ…、今のは俺の中で渾身のプレゼンだったのに…!!

「え……、ダメ……!?」
「わ…、わたし、廉の事大好きだし、言ってる事もすごくわかるけど……、だけど、廉はもうすぐ受験生なんだよ!?壮太くんみたいにがんばって勉強しないと……、そんな事ばっかり考えてちゃダメっ!」
「えええー………」

なんてこった、俺に一回させたら癖づいちゃうと思ってるのか。
……確かに……、大いにありえるな、それは………
あいこは一見、ぽやーんとしてる子に見えるけど、俺の事、いつも見抜いてるからな…!
さすがによくわかっているみたいだ。

「わかった………」
「えっ…?」
「わかったよ、俺がもっとちゃんとしていればいいんだろ?俺があいこに現を抜かさず、頑張って勉強して、結果を出してるって所を証明すればいいわけだ。」
「……え、えっ……??」
「そうだな……、じゃあ、俺がテストで学年十位以内に入っていたら、するって約束しよう。」
「へぇぇっ…!!?」
「何?学年十位以内なんかじゃダメ?じゃあ、五位以内。」
「ちょっ…、待って…!」
「あ…、今、十位から五位以内にして、少しほっとした顔したでしょ?確かにうちの高校は特進クラスの奴らが学年で六十人いるわけだし、相当厳しいよこれは。でも、俺はやる時はやるし、言っとくけど、俺、一年の頃から数学だけはずっと学年一位をキープしてるからね。努力次第では有り得なくないよ。それに、あいこがご褒美だったら俺、死ぬ気でやるし。」
「……っ!!?そ、そうなの…、それなのになんで普通のクラスに…!?」
「ふふっ…、だってあいこと同じクラスになれたからいいでしょ?居残り増えて音楽できなくなるのが嫌だったから。……そんな事より、俺の努力が数字で見えたら、あいこも覚悟を決めやすいだろ?……どうでしょうか?」
「……え、……うぅっ……」
「あいこが最初に言ったんだからねー…、あーあ…、あいこに断られたら、俺、やる気失くして、受験失敗するかもなー…」

俺があいこに嫌味っぽくプレッシャーをかけると、あいこは困り果てて泣きそうな顔になってしまった。
「……うううぅっ、わ…、わかったよぉ~!もうっ…、廉のいじわるっ!」
「えっ……、ホント!?」
「……それで廉が……、頑張れるなら……」
「あぁっ…、ハイッ!それで俺…、頑張れますっ!!」

あいこは頬を染めたまま、優しく微笑むと、小さく頷いた。
やった……、やっと……、やっと了解を取り付けたっ!!!
俺が薬指を差し出すと、あいこも布団の奥から迷いながらもそっと手を出し、そこに絡めてくれた。
やばっ…、嬉しすぎて鼻水出てきたっ…!


ほしほし☆ほしほしほしほし☆ほしほしほし

俺が鼻をすすると、あいこは慌てて、かぶっていた布団を俺にかけてくれた。
そうだ、薬が効いてて忘れていたが、俺、風邪をひいてるんだった。
俺に布団をかけようと少し前屈みになった時、あいこの鎖骨に俺がつけた痕がチラリと見えて、ドキッとした。

「ごめんね、風邪引いてるのに布団借りちゃって…!」
「全然大丈夫だよ。それよりよかった、あいこに本当の事が言えて……」
「……うん……」
「もう自分の部屋に帰った方がいいよ。今更かもしれないけど、風邪うつるし……」
「……………」
「……ん?」

あいこは二段ベッドから出ると、何か言いたげな顔をした。
やっぱ……、さっきの約束は無理矢理だったかな……
振り返って俺を見つめたあいこの顔は、もう赤みも消えて、真面目な顔だった。

「……あいこ?」
「“本当の事が言えて”って……、それはさっきまでの話の事を長い間心の中で思ってたけど、ずっと……わたしに黙ってたって事なの?」
「ん?……うん、……そうです……」
「どれくらい前から…?」
「……ずっとだよ。あいこを好きになってから、ずっと……」
「……そう…なんだ。あのね…、思ってる事があったらもっと口に出して言ってほしいの。さっきの海辺で廉が黙って行っちゃった時、よくわからなくてすごく悲しかったから……」
「……あ……、ご、ごめん……」

真っ直ぐに見つめる瞳が痛いほど刺さる。
……あいこ、……怒ってる?

「あとね、あのクリスマスに渡した券は、廉が何が欲しいかよくわからなかったからなの。だから、もっと遠慮なくお願いしてほしい……」
「え……?」
「何ていうか……、もっと腕時計がほしいとか、新しい靴が欲しいとか、そういう事をお願いしてくれると思ってたの。」
「あ……、あぁ…、ご、ごめん……」
「さっきの廉のお願い事は、わたしが廉の彼女でいるかぎり、いつかそうなるかも…って事だったから……、だから……、わざわざそんなお願い事…、しなくても……」
「……えっ、…ええっ!?う…、うん……」
「あのね…、廉が思ってる事、もっといっぱい教えてほしいの。廉ってわたしに遠慮して、頭の中でじっと考えている事が多いんだもん……、さっきの海での出来事みたいに、いきなりだとビックリするし、黙ってるなんて水くさい気がするから……、もっとちゃんと言ってほしい……。わたし、言われてビックリするかもしれないけど、廉の為だったらなるべく頑張りたいと思うの……」
「えっ……、は、はい……」
「んもうっ、わかってないでしょ!?」
「あ……、ええっ!?ご、ごめ……、ど、どういう……?」
「さっきの砂浜での廉のお願い事は、お願い事じゃないの!そういう事は……、えっと…、彼女だったら、……いつか“普通”の事だとか“当たり前”の事になっちゃうっていうか……」
「…………」
「うまく言えないけど……、もっと普段からそういう思ってる事は思った時に言ってほしいし、もっとわたしの事、廉に認めてもらいたいっていうか……、だから、券はなくしちゃったけど、さっきの願い事は止めて…、他のお願いを考えてほしいの。じゃないと、プレゼントにならないから……」

そ…、それって……
もっと、俺に甘えてほしいと思ってるのか…な……??
それって……、今すぐえっちするのは無理だけど、俺の彼女だから気持ち的には本当はOKだって事……?
こんな小細工せずに、もっと俺に求めてほしいと思ってる?

「えっ…、え?じゃあ例えば…、今、俺がここで、一緒に添い寝してほしいって言ったら、それもあの券を使ったことにはならないの?」
「うん……」
「……そんなの、俺の彼女だから当たり前にしてくれるって…事が言いたい…?」
「……うん……」
「ほ、本当に!?」
「うん……、わたしは……、廉のもの…だから……」

えっ…、うわっ…、どうしよ…!!
俺の……、“俺のもの”だって!!!!!
め…、めちゃくちゃ嬉しい……!!
ど、動悸がぁっ…、動悸が激しくなってきた…!!

「えっ…、じゃあ…、し、してくださいっ…!!」
「えっ…!?で、でも……さっき……」
「あぁ、さっきの約束はもう決めた事だから絶対守る!何にもしない、ただ添い寝するだけ!……たぶん……」
「たぶん……」
「ああああっ、たぶんじゃない、約束があるから、絶対そういう事はしない!」
「うん……、それに風邪ひいてるもんね。ちゃんと休まなきゃ。」
「えっ…、ほ、本当に……?」
「うん……、いいよ。」

あいこは優しく微笑むと、本当に自らベッドに入ってきて、俺の横に腰を下ろした。
そして俺にかけられていた布団を綺麗に広げ、それを肩まで被ってそこに横になった。
自然と上からその姿を見下ろす形となって、まるで、“さぁこれから”という姿にしか見えず、さらに動悸が激しくなってきた。

「廉も早く…。風邪引いてるんだから、肩まで温まらないと……」
「う、うん……」

俺も同じようにそこに横になると、すぐ目の前に、同じ枕で横になって微笑んでいるあいこがいて、あまりのドキドキで心臓が飛び出しそうになった。
完全に息子が反応しちゃってるし、少しでもあいこに触れたら気が狂いそうで、できるだけ触れないように、特に下半身は絶対にあいこに当たらないように、少しだけ身を離した。
すると、あいこは俺が横になったのを確認すると、すっと俺から眼鏡を外して、横にあったローテーブルの上に置いてくれた。
眼鏡なんて外したって、すぐ目の前にいるから、近眼の俺でもあいこの顔が見える。

あまりにも幸せな光景が……、目の前に広がっている……
あいこが同じ枕で一緒に横になって、俺の事、見つめてる……

夢すぎる……、いいのかな、本当に……
こんなすごすぎる事、“当たり前”にしてしまって…、本当にいいのかな…?
彼女がいるって…、すごい……!
欲張りかもしれないけど……、他にも頼んだら、「うん」って頷いてくれるのかな…?

「あっ…、あぁっ…、あのさぁ……」
「なぁに?」
「腕枕……、しても…いいです…か?」
「うん……」

俺があいこの頭の下に腕を回すと、本当に俺の腕に、ちょんと頭を乗せてくれた…!
必然的に体が密着し、あいこは俺の息子の成長に気がついて一瞬ギョッとしたが、何も言わず俺にそっと身を寄せてくれた。
あ……、あいこもドキドキしてる……
かすかに心臓の音がする……
枕にしている逆の腕で少し抱き寄せると、甘えるように、染めた頬を隠すように、俺の胸元に顔をうずめてくれた。

「あっ…、あああ、ありがとう…、ございます……っ!」
「……さっきから何で時々言葉が丁寧になるの?変だよぉ~」
「ほ、本当だよな…、ごめん…!う、嬉しすぎて……」
「うん…、わたしも嬉しい……。腕、痛くない…?」
「全然痛くない。大丈夫……、くぅっ……!」

温かい……、あいこの優しい匂いがする………
腕の中であいこが俺を見上げて、衝動がぐんと沸き起こってきてしまった。
キス…、したい……!
でも、キスしたらそのまま暴走しちゃうし…!!

「あっ…、やっぱり頭重かった…!?」
「ち…、違う!大丈夫……、ちょっと…ちゅうしたくなったけど、我慢しただけ…。風邪…、うつるから……」
「あ……、う、うん……、そっかぁ……」

あいこは少し何かを考えこむように押し黙ると、再び俺を見つめた。
そして俺の頬を両手で優しく包むと、首を伸ばして、俺の頬に口づけをした。

「あ………」
「はやく…、廉の風邪が治りますように……」

心が溶かされるような優しいキスに、胸がいっぱいになって……
ヤバい…、幸せ…すぎる………
もう、クリスマスにもらった券……、必要なくなっちゃったな……
そのままおでこをくっつけて、お互いに微笑みあうと、あいこは再び俺の懐に戻って目を閉じた。

俺の事…、きっと、すごく信じてくれてるんだろうな……
約束は……、守んなきゃ…な……

しばらくそうやって我慢したまま抱き合っていると、あいこの呼吸がいつの間にか安らかな寝息に変わり、そして俺も誘われるように、いつしか眠りについていた。


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横三角お話の続き:第15章「足りないもの」22話

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結局えっちな事なくてスイマセン!期待外れになってしまったでしょうか(-"-;A
臆病者のあいこにとって体を許しちゃうって事は一大決心なので、そう簡単に書けない部分もございまして…(←言い訳;)
いつかは書きたい…とは思っています!でも、十代の子達のはじめて体験をアメーバでできるか心配o(TωT )


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