I♡BATIK! プカロンガン&チレボン バティック旅 ④国宝級のバティック職人Cahyo氏 | 鮫鰐通信

鮫鰐通信

バリで5年暮らした後スラバヤ駐在の旦那サマと結婚。スラバヤ生活5年半を経て、2016年4月末に本帰国しました。
       島が変われば品変わる。フリーライター系駐在員新妻のスラバヤあれこれ、時々猫とバリ。

お昼を済ませて、さてバティック…と思ったのはいいけれど、どこへ行ったらいいのやら。
私たちには一応、アテがありました。
2015年5月のバティック・フェアで出会った、一人の職人さんのところです。

おっちゃん

この人。Pak Cahyoです。
バティック・フェアに、それはそれは素晴らしい手描きバティックの数々を持ってきていました。羽の模様が一羽ずつ全部違う鳥が全面にあしらわれたもの、手のひらサイズの細密に描かれた動物たちが優雅な曲線の植物の間に点々といるもの…。
色使いもモチーフもとにかくストライクゾーンど真ん中。トラディショナルだけに偏らない、かと言って奇を衒わない、本当に素晴らしいセンスの持ち主です。
単色、もしくは2色使いでお値段だいたい5jutaから。バティック・フェアではさすがに手が出せなかったのですが、本拠地まで行けばもう少しリーズナブルに買えるかな…?なんて下心もあったりしつつ、その時もらった名刺を元に、アポなし突撃訪問。

お昼前にホテルで道を聞いたら、「ホテルの裏側にある道だ。歩いていけるよ」とのことだったので、Alun-alunから歩いてみたものの…行けども行けども目指す道の名前が出てこない。
重たいネットにうんざりしつつGoogleマップで確認すると、今いるエリアからはちょっと離れたところにピンが立つ。
おーい、裏じゃねーよ全然ーーー。

というわけで歩くのは早々に諦めて、ベチャを拾いました。
ベチャで約10分ほど、目指す住所付近に到着。その辺の人に聞いたら、目的地まで連れて行ってくれました。

ふ、普通に家じゃん。もっと工房っぽいところを想像してた…。
Cahyo邸

そればかりか、ベルを何度も押して「おーい、お客さんだよーーー」と呼び出しまでしてくれて…。親切だなあ。
私たちだけだったら「普通に家だ…」となった瞬間に諦めるところでした。

呼び鈴を押して声をかけてしばし、ドアが開きました。

中

お、おう、家かと思ったら、ちゃんとショールームっぽくなってる…。

ドアを開けてくれたおばさまは、私たちをすぐ日本人と認めたようで、手慣れた感じで部屋の電気をつけ、エアコンを入れ、「ジャカルタから?まあ、スラバヤから! どんどん棚開けて見ていいわよ」と声をかけてくれました。

私はと言えば、バティック・フェアで見たおっちゃんの作品とはかなり違う色合いの布がどどんと積まれているのを見てどこから手をつけたものかと顎に手をあてて呆然。とにかくすごい量で、全部おっちゃんが描いているとは思えなかったのです。
おばさまに「Pak Cahyoは?」と聞くと、「今工房だけど、こっちに向かってるわよ」とのこと。よかった。もしかしたらパメランでどっか行ってるかな、と思っていたのですが、ラッキーでした。
そんならおっちゃんが来るまで待とうか、ということで、奥の部屋の方ものぞいたりしつつ、蚊と戦いつつしばし待機。
いやもうほんとに蚊が多くて、布見るのに集中できない。かゆいかゆい。虫除け持って来ればよかったー。

間も無くしておっちゃんが帰ってきました。
バティック・フェアの時におっちゃんのところで買い物をしたお友達の顔を憶えていたようで、目があった瞬間にやり。

「おっちゃんが描いたのを見たい」と言ったら、「ここにあるのはほとんど全部そうだ」ですって。えええ、すごい量だけど…と驚いていたら、「工房見に行くか?300人働いてるんだ。ここから車で15分くらい」。さ、300人!?そんなに抱えてるの!?
そうかそうか、おっちゃんが一人で描いてるわけじゃないんだ、デザインとかはやるし、自分でももちろん描くけど、それをサポートする人たちがたくさんいるんだ…。

なるほど納得。
そうかそうか。

おっちゃんはあれこれ説明しながら、いろんな布をいろんな棚から引っ張り出してきてくれました。
「これはジャカルタの人からのオーダーで描いた柄だ。こういうのが流行ってる」「これはトゥヌン(織物)にバティックしたものだ。珍しいだろ?2枚しか作れなかった。布も自分で織った。1枚はジャカルタのでかいタバコ会社の社長が持ってるよ」

でもそういうんじゃなくて、私たちが見たいのは…
パギソレ

「こういうのか」
そうそうーー!!きゃーーー!!
渋い色合い、かわいい動物たち! パギ・ソレだ~~、贅沢~~~!

さすがに、パメランに持ってきてたのより色数やモチーフのバリエーションが豊か。あれもこれもと出してくる布たちの華やかなこと!

パギソレ・ブケット

こちらもパギ・ソレ。プカロンガンらしいブケット(花束)。素敵…!

ホウコウカイ

こちらはホウコウカイの一部。ううう、かわいい色ーーー!

鳥アップ

鳥のアップ。この細かさがCahyoの特徴。グレーの細い線を出すのは非常に高度な技術だそうです。だろうなー、どうやってやってんのかわかんないもんな。
ちなみにおっちゃんが描いたバティックには全てサインが入っています。一点もの、作家もの。

ウィ・スーチュン工房で働いていた職人さんが描いたというブケットも出してきてくれました。ウィ・スーチュンというのはプカロンガン郊外にある伝説的なバティック工房。現在は3代目が継いでいます。オーダーしたら3年待ち。1枚30万円以上が当たり前。
花の周りに繊毛のような飾りを描くウィ・スーチュンの特徴そのものの、柔らかで華やかな色使いのフェミニンなバティックでした。

今回は「これぞ」と思った布は高くても買う、と決めていた私。
象さんに惚れたパギ・ソレの値段をおそるおそる聞いてみました。
「パメランに持ってったら35だけど、ここだからな。22juta。」
に、にじゅうにじゅた…!

さすがに目玉が飛び出かけました。
8くらいまでなら、と思ってたけど…いやはや失礼しました。甘く見てました。

「また5月にスラバヤに行くぞ」とおっちゃん。「動物モチーフのやつ持ってきてね」「間に合うかなあ…」。
が、頑張って描いて…!

結局1枚も買えずでしたが、おっちゃんは「これからどこ行くんだ。カウマン? 車はあるのか。ここまで何で来た?ベチャ? ベチャでいいなら探させるからちょっと待ってろ」と最後まで気遣ってくれました。
ありがとーおっちゃん。次に来る時はちゃんとアポとってから来るよ…。

また5月にね、と手を振って、ベチャに。完全に夕方だけど、カウマン地区行ってみよー!