思いの外早く金沢の図書館は三体Ⅱの上・下を入荷してくださった!感謝!!

しかも今回は入荷して予約2人目!新品同様で読む事ができましたぁ。

ただ、上下同時に予約の順番が来てしまったもんで、2週間で2冊を満足に読破は…

それで、『上』を先に借りて読み始め、4日後に『下』を借りました。

取り敢えず『上』を読み終わったのでここで一言二言。

 

第1作(第一部)で察知された宇宙遥か彼方からの凄まじい悪意に

人類はファーストコンタクトまでに残されたわずかな時間(400年余り)、

どのように備えるのか、このテーマでキックオフ。

キーワードは「宇宙社会学」。プロローグで第一部のジャンヌ・ダルク

葉文潔(イエ・ウェンジエ)が羅輯(ルオ・ジー)に研鑽をするように勧める。

よく分からんのだけど、という紹介のされ方なのですが、

要は文明が広大な宇宙に点在すると考えて、そう言った文明同士が

どう言った形で関わり会う事ができるだろうかという学問、だそう。

前提っぽい「公理」として2点。

文明は生きることを何よりも優先させる、ということ。そして

文明はガンガン成長・拡大するけれども「宇宙の総量」は一定だよ。

これらを前提に宇宙間文明の社会学を構築してご覧、という宿題。

さらにヒントが二つ「猜疑連鎖」「技術爆発」。それらの意味は闇の中。

 

当の羅輯はどこまで宿題と真剣に取り組んでいるのか。

むしろ結構好き勝手に気の向くまま人生を謳歌しているような…

しかし三体艦隊の圧倒的な敵意が迫る中、しかも智子(ソフォン)なる

三体のスパイによって地球で展開されるほぼ全てのものが筒抜けにある中、

人類は「面壁者」なる絶対的指導者を4名指名して対抗策を練る。

その中にどういうわけかこの羅輯が含まれる。誰よりも本人が腰を抜かす。

実は選任した当局も確たる理由がない。

ただ、三体が本気で繰り返し羅輯の暗殺を試みてきたことを根拠に、

敵が彼のことを脅威と見なしていると判断して選出した、というもの。

そしてそれは恐らく例の「宇宙社会学」という概念と関連しているだろう、

というところで物語が展開する。

 

羅輯が一夜を共にしたのに名前さえ思い出せないでいる女性に

別れを告げようとする中でこんなことを呟く。

経済学は、欲得ずくで行動するという人間の性向を基盤にしている。

 この前提がなければ、経済学のすべては崩壊する。

 社会学の基盤についてはまだ定説がないけど、

 たぶん経済学以上にダークなものだろう。

 真実はいつも埃にまみれる…(64頁)

社会学に対する陰々滅々とした印象を吐露する羅輯は、

宇宙社会学を旗振りながらこの物語を漆黒の中に導いていく。

ってか?!

▼ 経済学=Greed… is Good! 

(懐かしき『ウォール街』ゴードン・ゲッコーの金言!)

▼ 社会学、未だ得体がしれないけれども、その動力もロクなもんじゃないよな、

という言いようのない印象はやつがれもずっと社会学に対して抱いているんです。

それで一気に惹き込まれてしまった。

 

今ひとつ興味深い洞察は人の心と「欺」。三体文明にはこれが解せない。

それで『三国志』まで読んで学んでいるという笑い泣き

地上で行き来するあらゆる情報を漏れなく拾って三体に伝達する

智子も、人の心が読めない。まあ、それで「面壁計画」なんだけどね。

 

さて、遊び人羅輯もいよいよ本腰を入れる。そして思索を深める中、

何やら気づいた模様。それで、ある星系の座標を知らせるメッセージを

宇宙に向けて送信する(これが『呪文』)。ところがその直後、羅輯は

再度暗殺対象となり、人工冬眠を余儀なくされる…

他の面壁者たちもそれぞれ壁にぶち当たり、三体艦隊はますます近付く。

 

もう『下』を読まないと眠れんよ。

 

全体のストラクチャーとしてはやっぱり『社会学』的なアスペクトを

ファーストコンタクトにぶち込む感じなんでしょうね。

これって宣教師たちが『未開地』に入って宣教を展開したときの

戦略原理と気味悪く重なったりする部分があるような。

逆に昨今の宣教アプローチが振り子の反動で、

結果ただのお友だちごっこで終始してしまったら本末転倒…

まさにスタートレックの Prime Directive(最優先憲章?)、

「他文明の進退には断じて干渉すべからず」に近い。

  この男、結構最優先憲章を無視してるけどね→

ある意味、『三体』はその綺麗事を踏み潰してくれるのかなぁ?