そもそもこのタイトルが気になって宮部みゆきを読み始めました。
いや、厳密には数々のテレビドラマの原作者として関心はあったのですが。
これがシリーズものの3作目だと知り、
第1作目から読まないときっと歯抜けの歯痒さを経験すると思って
『誰か』を読み、『名も無き毒』まで読了した次第です。
1作目は400頁を越える長編でしたが、
『名も無き』は600頁を越えてきました。
そして3作目はとうとう上下巻になってしまった
約束します。
これで宮部さんとはしばらくお別れします。
ところがです上巻を読み進めている最中に
図書館にリクエストしていた『三体:黒闇森林』が
貸出可能になってしまったので、『葬列』の下巻に進む前に
そちらの上下巻を先に読まなければならない状況に
それで、今回は読後感よりも、『葬列』の下巻をやがて取り上げるときに、
上巻の内容を思い出せるような備忘録的なところも少なからず含みます
極力ネタバレのないようにしますが、してしまっていたらごめんなさい
本編は7つの章から成り立っています。
宮部作品に章名はありませんから、
自分なりにその区切りの意味をまとめて先に読み進めるスタイルです。
章は杉村が園田編集長とインタビューに出向いた帰路、乗車した路線バスが拳銃を携帯した老人によってバスジャックされる、という事件発生を描きます。こうも身の回りで事件が多発すると杉村も「事件慣れ」してしまう、とはシリーズを読んできた読者たちへのkudosかな。ここまで読んでくれて、みたいな。
章ではその老人と人質たちとの間で会話が交わされ、読者もまるで人質の1人になって情報収拾を始めてしまいます。やがて通報も届き、警察車両がジャックされたバスを囲みます。人質たちの中から数名を解放する流れとなり、園田編集長も解放される1人に選定されます。ところが彼女、どうも動揺の仕方が不自然なのです。そしてこれが後のストーリーラインを敷いていきます。
章、バスジャックの事件は一応の終焉を見ます。ネタバレにならないように気をつけますが、警察がバスに突入、人質は皆無事に救出という具合です。ただ犯人の老人が絶命。
続けて章からは所謂事情聴取の様子が描かれます。事件を一緒に振り返りながら、少しずつ事件の背景が彩りを見せ始めます。同時にさらなる疑問も湧いてきます。我らが杉村もようやく警察から解放され自宅に戻って桃子さんとの再会が一先ず空気を和ませます。
さて章に入り、杉村は日常に戻ります。すなわち菜穂子さんと桃子さんの家庭、社内報「あおぞら」の編集、そして『名も無き』で登場した私立探偵北見一郎の妻との繋がり。ただこの辺りにも事件との関連は分からないまま、「事件は終わっていない」的な空気が漂うのです。編集室ではハラスメント問題が勃発、労働組合が動く騒ぎに。他方私立探偵の妻には足立則生を名乗る人物からの気掛かりな連絡があったと言う。
そのような中章、園田編集長が復帰。そして色々と事が動き出す。差し当たってはニュースで足立則生が殺人犯に、そして忘れた頃にバスジャックの犯人から慰謝料が元人質たちに送り付けられてくる。それで、私ら読者の探究心(野次馬根性)は益々駆り立てられていくのです。
そして7章、杉村と義父の今多会長の会話の中で、ジャック犯人の人物像に迫ります。話は意外なところに飛びます。昭和時代の猛烈社員を洗脳した心理トレーナーたちの功罪。マインド・コントロールやら人格操作やら、団塊の世代は振り返りたくない黒歴史だろうな。ただ、その頃暗躍した連中は今も鳴りを潜めて同じような悪業を続けていたり、悔悛の術もなく自爆して行ったり、という話。豊田商事事件まで出てきますよ
え?宮部さんは実害を被る世代としては確かにド・ストライク。そう言う事なの?
どうでもいいんですが、
「かぶりを振る」って宮部用語じゃないですか?
わたしゃ人生50年生きて初めて出会いましたよ。(人生50年、本読んでねぇ)
頭(カブリ)を横に振って否定を表す、ってことですって。
皆さんご存知でした?
ネットでサーチをしてみたらどうやら東野圭吾さんもよく使うとか。
それからプチ情報:杉村三郎が山梨県の北部出身だと言う。
実家は果樹園だとか。北部で果樹園?何を栽培していたんだろう?
葡萄も桃も苺も桜桃も盆地だけどね。林檎か?
次はお待ちかね『三体:黒闇森林』(上)の読後感になります、多分。