相続・遺言・終活の知恵袋行政書士 雪渕雄一です
どこの家庭でも、親の介護が発生すると
その子供が、何らかの形で、
親の預貯金等を管理して、入院費や介護費用をそこから支払ったりしますよね。
私もそうでした。
家のこと一切を仕切っていた母が倒れ、
残された父は認知症。
子供がやるしかありません。
子供が複数いた場合は、親が居住する家に
同居する子供、または近くに住む子供が
これらの役割を果すことが多いと思います。
でも、その子供(長男等)が、親の口座から
不適切な払い出しを受けていると疑いを持ったら
どうしますか?
払い出しの明細、領収書とか見せて!と言いますよね?
その際、拒否されたらどうしますか?
再三、電話、メール等で伝えても、ノラリクラリかわされる。
弟さんは兄を窃盗、横領で訴えてやる!
と警察へ駆け込むかもしれません。
警察はどう対応すると思いますか?
親族相盗例
簡単に言うと家族の間で窃盗や横領があっても、
刑事告発しても罪にならない。
免除されるのです。
では、どうしたらよいでしょう?
第三者に親の財産管理を任せるのです。
この場合、成年後見人の登場です。
弟が親が住んでいる住所地を管轄する家庭裁判所へ
後見人等の選任申立をします。
〜司法書士さん、弁護士さんに頼むことも可能〜
弟が自分が親の後見人になります!
と名乗りをあげることができますが、
家族が親の財産で争っていたり、
一定額以上の財産があったりすると、
親族は後見人等には選ばれず、
弁護士、司法書士等の専門家が選任されます。
では、兄が後見人等の選任申し立てを拒否したら?
〜不適切な財産管理がばれるのを恐れて〜
原則、一定の親族の合意が必要です。
そして、申し立ての際には親の財産目録が必要です。
しかし、この場合は、兄が財産管理状況を開示しないから、
この申し立てとなったわけで、目録が作れません。
でも、財産目録を提示できない正当な理由が
家庭裁判所に認められれば、かつ親の診断書等がとれれば
財産目録なしで、選任申立の手続き〜審判は進められます。
この申し立ては、親の病状がどの程度かが重要なのです。
だから医者の診断書や鑑定書が必須です。
結果、専門家の後見人等が選任されます。
そして、その後見人等が、財産管理を始めるにあたり、
親の通帳、印鑑、ATMカード、権利証など財産を
すべて掌握し、専門家の管理下に移します。
そのため、後見人等選任申し立てを拒否していた兄を
この専門家が訪れるわけです。
〜財産管理代理権限に基づいた後見人等の職務だから〜
それを拒否すると、多分、専門家は、家庭裁判所に
相談して、しかるべき措置を講じることになるでしょう。
全てのケースで後見人等が親の財産をその管理下に
移せるかどうかは、個別事情や専門家の腕次第かもしれません。
それと、一般の方は
後見人
と聞くと、
認知症や体が不自由になった人の世話を
家族でできなくなったので、
後見人さんにお願いしよう。
家族の代わりになんでもやってくれる人!
と思われている方もいらっしゃるかも。
後見人は、直接的な介護はしません。
介護施設を探して契約したり・・・
財産管理に関わる、本来は本人ができる行為を
代理するだけなのです。
これまでは、親にお金を無心していたので、
後見人に「100万お父さんの貯金から降ろして、私に貸してください」
とお願いしても、すべて拒否されます。
なぜなら、後見人は
本人(親)の代理人であり、
家族の代理人ではないからです。
だから、後見人は、家族に嫌われると言われます。
「後見人を立てる」というのはこういうことなのです。
家庭裁判所に選んでもらう法定後見も
家族の誰かが親と事前に契約を結ぶ任意後見も
同じです。
弟が任意後見人に就任したから、
「堅いこと言わずに、お父さんの貯金をおろして、用立ててよ!」
と言ってもだめです。
特に任意後見人には、必ず、監督人がつきますので、
悪事はすべてチェックされます。
そして、後見人がついている間は、
ずっとこの状態で
親の財産は、後見人の管理下となります。
この成年後見制度を理解している人は、少ないでしょうが、
もしもに備えて勉強した人は、自分もしくは親が認知症になる前に、
・遺言書による争族対策
・両親の2次相続まで視野に入れた相続税対策
・家族で介護の役割、財産管理の方法を話し合う
・それを合意書にしておく
・必要なら任意後見も利用
・さらには、家族信託
これらの検討をされることと思います。
仮にすでに介護が始まっていても、認知症でなく、会話ができるのであれば、上記施策はすべて有効です。
認知症であっても、他方配偶者の方がしっかりしておられれば、両親全体を対象にとらえて、考えることができます。
どちらか一方がすでに他界されていて、残された親御さんが認知症であった場合、遺言、任意後見、家族信託はできませんが、子供さんの間で介護の役割、財産管理の方法を決めることができます。
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