介護離職を経験して復活した終活サポーター・行政書士の雪渕です
親に介護が必要となった時、子供が代理する行為は、
次の2つです。
◆財産管理
預貯金の管理・払い出し、公共料金の支払い、年金受領、不動産の売買・賃貸契約など財産の管理や処分など
◆身上監護
病院や介護施設との契約
このうち財産管理については、子供等管理している人が勝手に預貯金を引出して、使ってしまうという話をよく聞きます。
どうせ、相続するんだから!
そういう問題ではありません。
例えば・・
母親と同居している長男、別居している次男がいる家族
長男も次男も父親が亡くなった時に、相続手続きをしたので、
母親がどれくらいの財産を保有しているか、見当がついています。
・母親が倒れて、身近にいる長男が財産管理を開始します
・長男が必要以上に預貯金を引出して、使ってしまう
・母親が他界
・相続が発生
★母親の財産が大幅に目減りしている
★病身だったので、大きな買い物はしていないはず
★治療費や施設の利用程度
ここで次男が長男に疑いの目を向け、母親保有口座の記帳をすると、やはり時折、まとまったお金が引き出されています。
当然、兄弟で争いが発生します。
弟「兄さんが勝手に引き出した額はわかっている」
兄「それはお母さんに頼まれて買物をした・・・」
弟「じゃあ、その領収書を見せてくれよ」
兄「そんなもの、捨ててしまった」
弟「じゃあ、通帳で引き出されている大金はすべて、兄さんがお母さんから生前贈与を受けたものとして、残っている貯金に加算して、2分の1ずつ相続するのでいいよ。でも、僕の2分の1に不足する分は、お兄さんから払ってもらうから」
兄「俺だって、長男としてお母さんの世話をしてきたんだから、『寄与分』としてもらう権利があるんだ、文句を言うな!」
弟「そこまで言うなら、僕は弁護士さん立てて、もらえる分はちゃんともらうから」
兄「おまえがそう言うなら、俺だって弁護士さんを・・・」
容易に想像できる絵ですよね。
どうしたらこれらの争いを防げるでしょうか?
財産管理を始める前に・・・
・子どもたちで親の財産目録を作成する
・財産管理者、監督人を決める
・財産管理方法を決める
・それらを契約書(合意書)として作成しておく
例えば、次のような。
────────
「山田花子(母親の名前)の財産管理についての合意書」
山田花子(以下、甲)がその保有する財産を管理することが困難になった、または近い将来にそうなるだろうと考えたため、甲の依頼の元、甲の長男・山田太郎(以下、乙)と甲の次男・山田次郎(以下、丙)が甲の財産管理について協議をし、以下のとおり合意した。
第1条 管理対象財産
平成◯◯年◯◯月◯◯日現在での、甲の管理対象財産は次の通りであることを甲、乙、丙で確認した。
(1)預貯金 ◯◯銀行◯◯支店(普)◯◯◯◯◯◯◯ 残高・・・・円
(2)預貯金 ◯◯銀行◯◯支店(普)◯◯◯◯◯◯◯ 残高・・・・円
(3)保険 ◯◯生命終身死亡保険 ◯◯◯◯◯◯◯ 保険金・・・・・円
第2条 財産管理者等の選任
財産管理者を乙とする。
第2項 財産管理者の監督者を丙とする。
第3項 乙または丙がその任務を遂行することが困難な状況になった場合は、別途、協議する。
第4項 財産管理者または監督者が新たに選任されたときは、本合意書を新たに作成する。
第3条 財産管理の記録と監督
乙は甲財産の入出金明細書を漏らさず作成記載し、領収証等の証憑書類と共に管理し、月末に通帳等記帳し、繰り越された古い通帳も保管する。
第2項 丙は毎月月初に、乙に対して前月分の入出金明細書、証憑書類および通帳等の提示を求め、乙の財産管理状況を精査する。
第3項 丙はいつでも乙に対して、甲の通帳等乙が保管している書類の提示を求めることができ、乙はこれを拒むことはできない。
第4項 乙の財産管理に問題がある場合は、丙はこれを是正するよう乙に勧告でき、それでも善処されない場合は、丙は乙が財産管理者の要件を欠くとして解任し、別の管理者を選任できるものとする。
第4条 財産管理方法
乙が、第1条記載財産の通帳(ATMカード、届出印とセットで)等の書類を入出金明細書と共に自宅で保管する。保管場所は、丙にも開示しておく。
第5条 管理者の寄与分
甲の相続発生時、財産管理を行った乙の寄与分(報酬)について、相続人全員で協議するものとする。
または、
第5条 財産管理の報酬
乙が行う甲の財産管理の報酬を月額◯◯◯◯◯円とし、第1条記載の預貯金口座(◯◯銀行◯◯支店(普)◯◯◯◯◯◯◯)から、乙が毎月月末に払い出しを受けるものとする。
第6条 財産管理の終了
甲死亡時に終了し、精算した上で残余財産を相続財産と扱うものとする。
第7条 その他
本合意書に記載されていない事態が発生した時は、乙・丙が協議する。乙・丙で協議が成立しない場合は、甲の3親等内の親族を含めて協議し、決めることとする。それでも解決できない場合は専門家に相談することができる。
◯◯◯◯年◯◯月◯◯日
上記について合意したので、その証として本書を3通作成して、各自署名押印し、保有するものとする。
(甲) 住所 氏名署名 ㊞
(乙) 住所 氏名署名 ㊞
(丙) 住所 氏名署名 ㊞
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この合意書を元に財産管理を行うわけです。
契約書と言っても、口約束にならないように、約束を書面化しましょうというものです。
ただし、これがあるかないかで、大違いです。
口約束をしても、そんな約束はしていないと言われたら、それでおしまいですから。
できれば、上記で作成した契約書を最寄りの公証役場で公正証書にしてもらってください。公証人さんが第三者としてその書面を認証してもらえますので、当事者の一人が「こんな契約書無効だ!」と言っても、言い逃れできませんから。
さらに、これから始める財産管理だけでなく、
残余財産が相続財産になることも視野に入れるのであれば、
親御さんからの
・贈与
・貸付金
いずれも、贈与を受けた、またはお金を借りた本人と
親しか知らないと思っていても、
実は他の兄弟姉妹が知っていることがあります。
これを放置すると、相続時に
弟「兄さん、お母さんから、家の購入資金500万円借りたよね」
弟「まだ返済してないんだろ、その分は相続財産から差し引くよ」
兄「そんな証拠どこにあるんだよ」
と、また揉めるわけです。
だったら、このタイミングで兄弟腹を割って、
全部吐き出して、書面化しておきましょう。
本来であれば、親御さんとの贈与契約書、借入証にしたいところですが、認知症であれば、これらの書面を作成できないためです。
また、身内に財産管理をする人がいない場合、ご本人が第三者に委任することも可能です。(任意契約)
その場合、ご本人が元気なうちは財産管理の監督をできますが、認知症等判断能力がなくなった場合は、監督できなくなるため、
「任意後見契約」とセットで公正証書で
作成しておくことをおすすめします。
その場合は、ご本人の代わりに、家庭裁判所が選任した監督者が監督を行うこととなっています。(任意後見監督人)
契約書と言っても、ビビることはありません。
法律でも契約行為については当事者で自由に取り決めして良いことになっています。契約書を作成する、しないも当事者の自由です。
ただし、互いに不利益にならないよう、想定できることは細大漏らさず記載しておくことが肝要です。
【追記2017.6.17】
本記事は、すでに親が管理できなくなっている預貯金等を子供が上手く、後に争わないための一つの方策として書いたものです。
親の認知症が進んでしまい、子供が親の代理で銀行窓口でお金の払出を続けていると、銀行側から不審に思われて、下手をすると
「後見人を立てて下さい」と
払出を拒絶され、誰も払出ができない、いわゆる口座凍結状態になるリスクがあります。
その口座が普通預金ではなく、定期預金の場合は本人でないと解約等できません。投資信託商品の解約もそうです。
この場合も、まだ親が認知症になっておらず、子供に自分が生きている間の財産管理を任せたい、そして相続方法も決めておく、つまり生前も死後も自分の財産管理・承継方法を判断能力のある間に子供に任せたいと希望されるのであれば、別の手段があります。
家族信託です。
こちらの記事ををご覧ください。
家族信託を使えば、生前の預貯金や不動産等の財産管理を子供に任せることができ、しかも子供が誰憚ることなく、後見人をつけて!などと銀行窓口で言われることもなく、さらに遺言書を書かずに死後の財産の相続方法まで決めておくことができます。
興味ある方は、お読み下さい。
家族信託、特に認知症対策としての利用についてご相談をお受けしています。
【追記2019.1.13】
多分、この記事を読まれたのであろう、アメリカ在住の方(日本人)から、事務所HP問い合わせフォーム経由で、日本に残されたご両親の成年後見制度利用について、ご相談がありました。
本記事のように子供さんの間でご両親の財産管理を巡って、互いに不信感があり不仲な状態になっているとのこと。
行政書士の立場としては家族の紛争に代理人として介入することができません。
これを受けて私は、ご両親の住所地を管轄する社会福祉協議会に成年後見制度利用の相談窓口があるので、そちらへ相談してみてください、とアドバイス差し上げました。
ここでは、弁護士さんも相談に乗ってくださるようなので、この窓口経由で代理人として弁護士さんを紹介してもらえると思います。
【追記2021.3.3】
家族信託とか、親がその仕組みや契約書の理解が難しいなあって、ずっと考えていましたが、
こんなサービスを見つけましたよ。