労働基準法の解説ー休憩時間、労働時間、解雇、退職、残業など -4ページ目

労働基準法第12条 (定義)

労働基準法の平均賃金の計算方法について定めた条文です。


労働基準法の平均賃金は、解雇予告手当や有給休暇の賃金、休業手当などの計算の際に必要になります。


原則的な算定方法は、「算定すべき事由が発した日からさかのぼって3か月間にその従業員に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額」です。


「算定すべき事由が発した日」とは、解雇予告手当の計算の場合は解雇の予告をした日、有給休暇の賃金の計算の場合は有給休暇の取得日(ただし、有給休暇が2日以上連続する場合は最初の日)、休業手当の計算の場合は、休業した日((ただし、休業が2日以上連続する場合は最初の日)です。


ただし、この計算方法によると、勤務日数が少ない従業員は平均賃金が異常に低くなるため、1項の但し書きで最低保障額が設けられています。


なお、定額の残業手当を支給している会社で、有給休暇の取得の際に定額残業手当の分も平均賃金の計算に入れなければならないかがよく問題になりますが、この点については計算に入れなければなりません。




(条文)

この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。

賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十

賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額


2  前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。


3  前二項に規定する期間中に、次の各号のいずれかに該当する期間がある場合においては、その日数及びその期間中の賃金は、前二項の期間及び賃金の総額から控除する。


一  業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間

二  産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間

三  使用者の責めに帰すべき事由によつて休業した期間

四  育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 (平成三年法律第七十六号)第二条第一号 に規定する育児休業又は同条第二号 に規定する介護休業(同法第六十一条第三項 同条第六項 において準用する場合を含む。)に規定する介護をするための休業を含む。第三十九条第八項において同じ。)をした期間

五  試みの使用期間


4  第一項の賃金の総額には、臨時に支払われた賃金及び三箇月を超える期間ごとに支払われる賃金並びに通貨以外のもので支払われた賃金で一定の範囲に属しないものは算入しない。


5  賃金が通貨以外のもので支払われる場合、第一項の賃金の総額に算入すべきものの範囲及び評価に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。


6  雇入後三箇月に満たない者については、第一項の期間は、雇入後の期間とする。


7  日日雇い入れられる者については、その従事する事業又は職業について、厚生労働大臣の定める金額を平均賃金とする。


8  第一項乃至第六項によつて算定し得ない場合の平均賃金は、厚生労働大臣の定めるところによる。



労働基準法第11条(定義)

労働基準法の適用がある「賃金」とは、賃金、給料、手当、賞与などの名称にかかわらず、労働の対償として使用者が従業員に支払うすべてものを含みます。


ここで「賃金」にあたるものについては、労働基準法が定める賃金支払5原則の適用があります。


つまり、①通貨で、②直接労働者に、③その全額を、④毎月一回以上、⑤一定の期日を定めて支払わなければなりません。

ただし、賞与については「毎月一回以上支払の原則」は適用されません。


よく問題になるのは、従業員が会社に損害を与えて解雇されたケースで、会社が従業員に支払う解雇予告手当と、従業員が会社に支払うべき損害賠償義務を相殺処理できないかどうかです。


この点については、「解雇予告手当は実質的には賃金であるから労働者の行為に基づく損害と相殺することは許されない」とした判例があります。




(条文)

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。



労働基準法解説第10条(定義)

 労働基準法の適用がある「使用者」とは、事業主だけでなく、取締役その他、経営、労務管理、従業員に対する指揮監督を行うすべての者を含みます。


労働基準法は「使用者」に労働時間制の遵守や就業規則の作成などのさまざまな義務を課し、違反の場合は罰則を科していますが、この条文により罰則は事業主だけでなく、取締役や経営担当者にも科される可能性があります。


役職名で判断されるわけではありませんが、取締役、工場長、部長、課長等はこの「使用者」に該当する可能性があるといえます。


ただし、実際には中小企業の労働基準法違反事件で、事業主でない取締役や工場長、部長、課長等に罰則が科されるケースは多くはありません。




(条文)

この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。