ちょこまかとよく動く うさぎちゃんだ。
俺に追われて建物や路地を懸命に走り回ってるよ。
その先々には、いつの間に仕掛けたのかちゃちなトラップ。手数多めに用意してるとはね。
でもこんな物は何の役にも立たない。俺には通用しない。
本当に……うさぎちゃんは俺を楽しませてくれるよ。
「いいねぇ……かくれんぼよりずっといい」
目の前で必死に逃げ回る うさぎちゃんを見てるのは楽しくて仕方ない。
やっぱり獲物は逃げる姿を追いながら直接目にするのがいちばんいい。
そうして追いかけるうちに次第と うさぎちゃんの逃げるスピードが落ちてきて、建物の陰に隠れながら俺に向ける視線が絶望感と不信感に溢れてて。
いいねぇ……その目。
何を考えてるのか手に取るように分かる素直な目をしてるよ。
「どうして……撃たない?」
うさぎちゃんは俺が拳銃を持ってるのを知ってる。目の前でひとり始末してるしな。だから俺が何もせず追いかけるだけなのを不思議に思ってるんだろう。
「拳銃なんて野暮な物は使わない。じわりじわり追い詰めるのが醍醐味だろ」
一撃で終わらせるなんて勿体ない真似、するわけないだろ。
うさぎちゃんは誰にも渡せない俺の、俺だけの獲物なんだよ。
そんな俺の言葉に うさぎちゃんは冷静さを無くしたのか、隠れていた陰から姿を現して俺に拳銃を向けた。
「うっ……」
「使い慣れないオモチャは怪我のもとだよ、うさぎちゃん」
何処に隠してたのか危ないオモチャを持ってたもんだな。
でも うさぎちゃんは拳銃には縁がないのか扱いに粗がある。
そんなんじゃ俺は撃てないよ。
拳銃に対する反応速度はこっちの方が早いんでね。
うさぎちゃんの拳銃は即刻撃ち落とし、そのまま銃口を立ち尽くす うさぎちゃんに向けたまま様子をうかがった。
こんな状態でも俺を睨んで威嚇する うさぎちゃん。
いいねぇ……まだまだ楽しめそうだ。