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補助療法としての駆虫剤

  • 補助療法としての駆虫剤

医師として自分自身の体験から

 

メベンダゾール
フェンベンダゾール
内部資料

 

ベンズイミダゾール系薬剤

50年100年昔、駆虫薬(虫下し)はどこの家庭でも身近なお薬だった。
生活環境、食生活が変わり化学肥料と農薬を使った農業が一般化し、人への寄生虫感染は激減した。今は愛犬家にとって身近な薬となっている。最近ベンズイミダゾール系の駆虫剤に抗がん作用があることがわかり関心が高まってきた。 駆虫薬は家畜に日々エサに混ぜられて投与されている。スーパーに並んでいる豚肉、牛肉、養殖魚から輸入果実まで様々な食品に駆虫薬や輸入果実の消毒に用いられる抗菌薬の食品への残留が食品安全上問題となっている。ところがこの駆虫薬ががんに効くという細胞実験、動物実験から臨床試験の発表が相次ぎその抗がん作用が注目を集めるようになった。各国の製薬メーカーは抗がん剤の開発のために莫大な研究費をつぎ込み、さらに治験に莫大なお金を費やしているが副作用のために没になってしまう薬が後を絶たず、今やメーカーの開発力にも限界が見えてきている。最近注目されている免疫療法にしても、駆虫薬療法にしても、人と感染症との長いおつきあいや長い闘いの歴史を理解し分析する必要がありそうだ。皮肉な話、駆虫薬ベンズイミダゾール系薬剤はスーパーに並んでいる食肉に残留している可能性があるものだし、その残留薬剤に発がん性があるのではとメディアが騒いだこともある。これらの駆虫剤に抗がん作用があるのなら、残留している程度の肉類は食べた方が薬になるのではないか・・・パロディーのような話になりそうだ。イタリアのシモンチーニさんはがんの原因はカビだとして重曹療法を行い医師免許を剥奪された話は有名だ。ピーナッツなどのナッツ類のカビ毒であるアフラトキシンは肝臓がんを引き起こすクラス1の猛毒発がん物質なのだからシモンチーニ説を完全否定するのはいかがなものかと思う。近頃は健康ブームに乗ってオーガニックブームだ、つまり有機肥料を使った農作物を多くの消費者が求めている。だから質の悪いオーガニックで寄生虫が付いている確率も高くなる。冗談ではなく本当に駆虫剤を服用しなければならない人も現れているのだ。実際内視鏡検査で回虫が見つかることも珍しくない時代になっている。
駆虫薬ベンズイミダゾール系薬剤で国際的に人に対する使用が認可されているのは医薬品としてメベンダゾール、アルベンダゾール、チアベンダゾール、トリクラベンダゾールの4つである。このうち日本で医薬品としての駆虫薬はメベンダゾールとアルベンダゾールである。日本では認可されていないチアベンダゾールはなんと食品添加物として認可されている不思議。少し前まで万有製薬がチアベンダゾールをメンテゾールという商品名で腸管糞線虫や旋毛虫の治療用医薬品として販売していた。ところがイベルメクチンという新薬が開発されメンテゾールは販売を中止した。驚くことに、この新薬イベルメクチンの出身地は静岡県伊東市付近のゴルフ場である。2015年ノーベル生理学・医学賞受賞者大村智先生がこのゴルフ場から持ち帰った土の中にいた新種の放線菌が産生する物質を元にMSDが製品化したのがフィラリア症の特効薬だ。 ベンズイミダゾール系薬剤の多くはカルバメートという構造体を持っている。この構造体から出ている枝の形が少しずつ異なり名前と作用も少しずつ違うお互いお友達である。この枝の形で有効な寄生虫が少しずつ変わるように、もしかしたら人のがんもこの枝の形に対する相性があるのかもしれない。メベンダゾールの治験はすでに始まっているが、他のベンズイミダゾール系薬剤も近いうちに研究が進むだろう。食品への残留駆虫薬やバナナなどの残留消毒抗菌薬は発がん作用を持つ悪役どころか人のがんに効くありがたいお薬に変身する日がやってくるのかもしれない。いやいや是非やってくる。

 

メベンダゾールと脳腫瘍・転移性脳腫瘍

メベンダゾールはベンズイミダゾール系の駆虫薬。日本では蟯虫治療薬として保険治療が承認されている。多くの寄生虫である回虫、蟯虫、鉤虫、メジナ虫、エキノコックスなど広いスペクトラムを持つ医薬品。フェンベンダゾールもベンズイミダゾール系駆虫薬であり、メベンダゾールとほぼ同様の抗腫瘍作用を持っている。ただ医薬品として承認されていないため、治験として使用する道がある。

 

悪性脳腫瘍に対する作用機序

駆虫剤が悪性脳腫瘍に有効性を発揮することが2011年ニューロオンコロジーという学術雑誌に発表された(Bai RY. et al. 2011) この研究は米国NIHの研究助成を得てジョンスホプキンス大学で行われた。メベンダゾールの使用効果は腫瘍細胞の生育に必須である微小管形成阻害作用であることがわかった。元は駆虫剤のため消化管からの吸収は20%程度。そのうえ、脳には薬物の侵入を防ぐバリアがある。メベンダゾールは他の抗がん剤に比し血液脳関門というバリアを容易に通過する特性があり、抗癌作用を発揮すると考えられている。

 

悪性脳腫瘍

(膠芽腫)GBMに対する効果

現在の標準治療はテモダールによる化学療法と放射線療法との併用療法だが平均生存期間は15ヶ月と言われており、悪性脳腫瘍GBMの5年生存率は10%程度だ。
多くの研究が発表されている。1)テモダールは生存率を41.4%延長、2)メベンダゾール単剤が63.3%の生存効果、3)メベンダゾールとテモダール併用の生存効果は72.4%、4)2と3を比較した研究では有意差はなかったなどの報告がある。(Bai RY. et al. 2011)

 

転移性脳腫瘍に対する効果

最近、小細胞性肺癌の末期ステージ4の患者さんの治験において、フェンベンダゾールを選択した一人の患者さんは転移性脳腫瘍他、他の転移巣に対しても劇的な効果があったとメディアで報告されている。この結果からメベンダゾール・フェンベンダゾールは血液脳関門を通過する性質を持つため、転移性脳腫瘍に効果を発揮すると考えるのは早計である。

 

その他の脳腫瘍に対する効果

GBM以外の悪性脳腫瘍として脳悪性リンパ腫、小児の胚細胞腫瘍、髄芽腫には化学療法などの治療法がある。しかし、多発性浸潤性神経膠腫、二次性GBMは決め手となる治療法がない。これらGBM以外の難治性脳腫瘍に対してメベンダゾール有効との報告がある。(De Witt M. et al. 2017)

 

内服量および内服期間

メベンダゾール駆虫剤は妊婦、授乳中の安全性はCランクなど、安全性に関する長い使用実績がある。具体的な数値ではメベンダゾールは100~200mg/kg量で12週間投与しても子供に安全であるという報告もある(Messaritakis J, et al. 1991)。メベンダゾールは人のエキノコッカス症の治療に広く使われており50~70mg/kg/日を6~24ヶ月継続使用した場合最小限の副作用であったという報告が複数ある(Vutova K.et al.1999, El-On J. 2003, Todorov T, et al. 2005)。エキノコッカス症の別の臨床研究では上限200mg/kg/日を48日投与での耐用性は良く、血清中で最大93ng/mlに対し脳脊髄液には8.6ng/ml継続された( Bryceson AD, et al. 1982)。その他200mg/kgまでは毎日使用しても安全な用量だとする研究もある(Messaritakis J,et al.1991, Bryceson AD, Cowie AG, et al. 1982, Kammerer WS & Schantz PM. 1984)。しかし一方で進行大腸癌と肝細胞癌の患者さんに同じ系統の駆虫剤であるアルベンダゾール10mg/kg/日を28日投与した研究では抗腫瘍効果を示したが30%の高率に重度の好中球減少症の副作用を生じたとの報告がある(Morris DL, et al. 2001)。

 

内服量および期間と副作用

・メベンダゾール
体調の良くない悪性腫瘍を持つ患者さんへのメベンダゾールの処方適量および処方期間については今のところエビデンスに基づいたガイドラインは存在しない。投与量は10mg/kg/日を最大量とし、投与期間は最大28日以内とするのが安全性が高いと考える。最大量10/kg/日からすると日本人成人の平均体重は55~65kgとして500~600mg/日が安全域内の内服量と考えるのが常識的である。連続14日投与で一定期間の据え置き期間を設ける方法とか、21~28日連続投与で一旦休薬期間を設ける。いずれの方法にしても、血液検査の異常の有無を確認すると同時に腫瘍マーカーや画像所見から継続処方の是非を検討する必要がある。

・フェベンダゾール 
メベンダゾール同様、悪性腫瘍を持つ患者さんへの適性処方量および処方期間について、エビデンスに基づいた治療法についての発表はない。現在のところ、治験例からフェンベンダゾール222mg/日を3日連続使用、4日休薬のケースについての報告がある。

・肝障害副作用による死亡例の報告
駆虫剤は薬剤である以上副作用は必ずある。メディア報道や闘病ブログを参考に素人判断での安易な服薬は危険であり骨髄抑制から重篤な肝障害まで色々な副作用が報告されている。肝障害による死亡例の報告もあり安易な服薬は避けるべきである。

 

<参考>

メベンダゾールには再発予防効果も期待できる。悪性脳腫瘍の患者さんには術後のしかるべき時期からメベンダゾールの処方を検討する価値はあると考える。しかしメベンダゾール同様、悪性腫瘍を持つ患者さんへの適性処方量および処方期間について、エビデンスに基づいた治療法についての発表はない。現在のところ、治験例からフェンベンダゾール222mg/日を3日連続使用、4日休薬のケースについての報告があるのみである。⇒私自身はこの方法によりフェンベンダゾールを3ヶ月間内服した。

 

ベンズイミダゾール系薬剤

 

●メベンダゾール(Mebendazole)

FDA/EU:ヒトおよび動物に承認

日本:ヒトに承認

主適用:鞭虫症

用量(駆虫薬としての使用)

通常、成人及び小児に対してはメベンダゾールとして1回100mgを1日2回(朝・夕)3日間経口投与する。

ただし、体重20kg以下の小児には半量にするなど、適宜減量する。

(メベンダゾール錠100添付文書より)

 

●アルベンダゾール(Albendazole)

FDA/EU:ヒトおよび動物に承認

日本:ヒトに承認

主適用:包中症

用量(駆虫薬としての使用)

通常、成人にはアルベンダゾールとして1日600mgを3回に分割し、食事と共に服用する。

投与は28日間連続投与し、14日間の休薬期間を設ける。

なお、年齢・症状により適宜増減する。

(エスカゾール錠200添付文書より)

 

●チアベンダゾール(Thiabendazole)

FDA/EU:ヒトおよび動物に承認

日本:ヒトに承認

主適用:防かび剤

用量

日本では輸入果物(バナナなど)のポストハーベストの食品添加物として認められている。

医薬品としては「ミンテゾール」(万有製薬)の商品名で腸管糞線虫症や旋毛虫症治療用の内服用駆虫薬、動物寄生虫用薬品としても使用されていたが、同等の効果がありかつ安全性が高い新薬イベルメクチンが開発されたために駆虫薬としての製造・販売は中止されている。

(チアベンダゾールWikipedia)

 

●トリクラベンダゾール(Triclabendazole)

FDA/EU:ヒトおよび動物に治験中

日本:動物用駆虫薬で承認

主適用:肝蛭症

用量(駆虫薬としての使用)

トリクラベンダゾールは、チアベンダゾール系の肝蛭駆除剤であり、チューブリンに結合し微小管の重合を阻害することにより、微小管依存性の機能を抑制し、駆虫作用を示すと考えられている。(参照7) 肝蛭(Fasciola hepatica)及び巨大肝蛭(F. gigantica)以外に巨大肝吸虫(Fascioloides magna)や肺吸虫属(Paragonimus)に対しても有効であり、線虫に対しては活性を示さない。海外では、牛(搾乳牛を除く)、バッファロー(Baffalo)、羊及び山羊に使用されている。推奨用量は牛及びバッファローでは12 mg/kg 体重(経口)又は30 mg/kg 体重(ポアオン)であり、羊及び山羊では10 mg/kg 体重(経口)を投与することとなっている。日本では、牛(搾乳牛を除く)の肝蛭の駆除を目的とした経口投与剤が承認されている。承認された用法及び用量は、製剤0.12 mL/kg(トリクラベンダゾールとして12mg/kg 体重)を1 回強制経口投与することとなっている。なお、ポジティブリスト制度導入に伴う暫定残留基準値1が設定されている。

(トリクラベンダゾール.動物用医薬品評価書. 食品安全委員会. 2013年3月)

 

●フルベンダゾール(Fulbendazole)

FDA:実験で廃止、EU:ヒトに承認、薬局などOTCで購入可能

日本:動物用駆虫薬で承認

主適用:回虫症

用量(駆虫薬としての使用)

海外でのヒトの常用量は、100 mg を1日に1回あるいは2回で、連続3日間服用する。

(フルベンダゾール.食品安全委員会動物用医薬品専門調査会.2009年11月資料3より)

 

●フェンベンダゾール(Fenbendazole)

FDA/EU:動物に承認

日本:動物用駆虫薬で承認

主適用:線虫症

用量(駆虫薬としての使用)

イヌの駆虫で50mg/kg/日。

ブタは回虫、腸結節虫で3mg/kg/日×3日、鞭虫で15gを1tのエサに混ぜて3-4週間投与。

日本での承認は主にブタ。

(メイポール10添付文書、Panacur C説明文書)

 

●オクスフェンダゾール(Oxfendazole)

FDA:治験中、EU:動物に承認

日本:動物用駆虫薬で承認?

フェバンテルはプロドラッグであり、フェバンテルが生体内で代謝されてフェンベンダゾールとオクスフェンダゾールになる。

 

●フェバンテル(Febantel)

FDA:治験中、EU:動物に承認

日本:動物用駆虫薬で承認

主適用:線虫症、条虫症

フェバンテルはプロベンズイミダゾール(体内でベンズイミダゾールに変換)で、線虫や条虫に対する広い作用スペクトルを有する経口駆虫薬である。動物用医薬品として1978 年にオーストラリアで承認されて以来、馬、牛、豚、羊、山羊及び鳥類の駆虫剤として23 カ国以上で承認されている。現在わが国では、本製剤(マリンバンテル:フグ)の他、馬用経口投与剤が承認されている。また、フェバンテルの生理活性を有する代謝物であるフェンベンダゾールを主成分とする豚の経口投与剤も承認されている。本製剤については2004 年7 月に承認され、今回薬事法第14条の4 第1項第1号の規定に基づき、承認より2年が経過したため、2006年10月再審査申請された。

(フェバンテルの食品健康影響評価について.動物医薬品評価書マリンバンテル. 食品安全委員会動物用医薬品専門調査会2008年4月より)

 

 

悪性腫瘍に対する治療について

 

●メベンダゾール療法(米国ジョンスホプキンス大学で治験中)

成人は500~600mg/日ですが低用量200mg/日を3週間内服、一時休薬し再開、またはさらに低用量を長期で内服。 

癌細胞と腸内寄生虫は同じ嫌気性解糖を行っており寄生虫駆除剤であるメベンダゾール、フェンベンダゾールの抗悪性腫瘍効果が2008年以来相次いで発表されている。 

がん細胞の増殖の鍵となる解糖系酵素阻害作用と微小管阻害作用が報告されている。

悪性脳腫瘍に対し治験が始まっている。副作用はほとんどない。

ただし、3週間を超えると肝障害が7.14%、発疹は0.45%ある。

 

●フェンベンダゾール療法(医師主導治験申請準備)

癌細胞と腸内寄生虫は同じ嫌気性解糖を行っており寄生虫駆除剤であるメベンダゾール、フェンベンダゾールの抗悪性腫瘍効果が2008年以来相次いで発表されている。 がん細胞の増殖の鍵となる解糖系酵素阻害作用と微小管阻害作用が報告されている。

 

米国治験サイト

メベンダゾールはジョンスホプキンス大学とノースウェルヘルスによる治験が行われている。ジョンスホプキンス大学メベンダゾール第一相試験は2019年1月、研究全体は2020年9月終了予定

 

フェンベンダゾール、メベンダゾールに関する論文

 【参考文献要旨】

Duan Q, Liu Y, Rockwell S. Fenbendazole as a potential anticancer drug. Anticancer Res. 2013 Feb;33(2):355-62.

BACKGROUND/AIMS: To evaluate the anticancer activity of fenbendazole, a widely used antihelminth with mechanisms of action that overlap with those of the hypoxia-selective nitroheterocyclic cytotoxins/radiosensitizers and the taxanes.

MATERIALS AND METHODS: We used EMT6 mouse mammary tumor cells in cell culture and as solid tumors in mice to examine the cytotoxic and antitumor effects of fenbendazole as a single agent and in combination regimens.

RESULTS: Intensive treatments with fenbendazole were toxic to EMT6 cells in vitro; toxicity increased with incubation time and under conditions of severe hypoxia. Fenbendazole did not alter the dose-response curves for radiation or docetaxel; instead, the agents produced additive cytotoxicities. Febendazole in maximally-intensive regimens did not alter the growth of EMT6 tumors, or increase the antineoplastic effects of radiation.

CONCLUSION: These studies provided no evidence that fenbendazole would have value in cancer therapy, but suggested that this general class of compounds merits further investigation.

将来的な抗がん薬としてのフェンベンダゾール

背景/目的:フェンベンダゾールの抗がん作用について評価する。フェンベンダゾールは、低酸素選択的なニトロ複素環細胞毒素/放射線増感剤やタキサンなどと重複するような作用機序をもつ駆虫剤として広く使用されている。

試料と方法:私たちはフェンベンダゾールの単剤と併用療法の抗がん効果および細胞毒性を調べるため、EMT6マウスの乳がん細胞を細胞培養とマウスの固形腫瘍として使用した。

結果:培地のEMT6細胞に対してフェンベンダゾールの集中的な治療は毒性があった;毒性は、培養時間と重度の低酸素状態で増加した。フェンベンダゾールは、放射線やドセタキセルに対する用量‐応答カーブは変化しなかった;しかし、付加的な細胞毒性を産生した。フェンベンダゾールは、最大集中線量でもEMT6腫瘍の成長を変化させなかったし、放射線の抗腫瘍作用を増加させることもなかった。

結論:この研究では、フェンベンダゾールががん治療で有効であるという確証を得ることは出来なかった。しかし、この一般的な化合物の有益性については、さらに研究を進める必要性が示唆された。

Dogra N, Kumar A, Mukhopadhyay T. Fenbendazole acts as a moderate microtubule destabilizing agent and causes cancer cell death by modulating multiple cellular pathways. Sci Rep. 2018 Aug 9;8(1):11926.

Drugs that are already clinically approved or experimentally tested for conditions other than cancer, but are found to possess previously unrecognized cytotoxicity towards malignant cells, may serve as fitting anti-cancer candidates. Methyl N-(6-phenylsulfanyl-1H benzimidazol-2-yl) carbamate [Fenbendazole, FZ], a benzimidazole compound, is a safe and inexpensive anthelmintic drug possessing an efficient anti-proliferative activity. In our earlier work, we reported a potent growth-inhibitory activity of FZ caused partially by impairment of proteasomal function. Here, we show that FZ demonstrates moderate affinity for mammalian tubulin and exerts cytotoxicity to human cancer cells at micromolar concentrations. Simultaneously, it caused mitochondrial translocation of p53 and effectively inhibited glucose uptake, expression of GLUT transporters as well as hexokinase (HK II) – a key glycolytic enzyme that most cancer cells thrive on. It blocked the growth of human xenografts in nu/nu mice model when mice were fed with the drug orally. The results, in conjunction with our earlier data, suggest that FZ is a new microtubule interfering agent that displays anti-neoplastic activity and may be evaluated as a potential therapeutic agent because of its effect on multiple cellular pathways leading to effective elimination of cancer cells.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6085345/

 

フェンベンダゾールは、穏やかな微小管不安定化薬として作用し、多様な細胞経路を変化させてがん細胞死を引き起こす

がん以外の病状に対してすでに試験され、臨床的に承認されているものの、悪性細胞に対して認識されていなかった細胞毒性が見つかっている薬は、抗がん剤の有力候補である。メチルN(6-フェニルサルファニル-1Hベンズイミダゾール-2-yl)カルバメート[フェンベンダゾールFZ]は、ベンズイミダゾール系化合物で、効果的な抗増殖作用をもつ安全で高価でない駆虫薬である。私たちの先行研究では、フェンベンダゾールの強力な成長阻害活性が、プロテアソーマル機能の部分的な障害を引き起こすことを報告した。本研究では、私たちは、フェンベンダゾールが哺乳類の微小管に対し穏やかな親和性があり、マイクロモルの濃度で人間のがん細胞に対して細胞毒性を発揮することを提示している。同時に、p53のミトコンドリア転座を引き起こし、効果的にグルコースの取り込み、ヘキソキナーゼ(HKII)とGLUTトランスポーター類の発現-多くのがん細胞の増殖の鍵となる解糖系酵素を阻害する。ヌードマウスモデルにこの薬を食べさせたところ、ヒトの異種移植細胞の増殖が阻害された。私たちの先行研究とこの結果を合わせると、フェンベンダゾールは抗腫瘍作用をもつ新たな微小管阻害薬であることが示唆され、多様な細胞経路に作用して効果的にがん細胞を消失させる将来性のある治療薬として評価される可能性がある。

Shimomura I, Yokoi A, Kohama I, Kumazaki M, Tada Y, Tatsumi K, Ochiya T, Yamamoto Y. Drug library screen reveals benzimidazole derivatives as selective cytotoxic agents for KRAS-mutant lung cancer. Cancer Lett. 2019 Jun 1;451:11-22.

KRAS is one of the most frequently mutated oncogenes in human non-small cell lung cancer (NSCLC). Mutations in KRAS are detected in 30% of NSCLC cases, with most of them occurring in codons 12 and 13 and less commonly in others. Despite intense efforts to develop drugs targeting mutant KRAS, no effective therapeutic strategies have been successfully tested in clinical trials. Here, we investigated molecular targets for KRAS-activated lung cancer cells using a drug library. A total of 1271 small molecules were screened in KRAS-mutant and wild-type lung cancer cell lines. The screening identified the cytotoxic effects of benzimidazole derivatives on KRAS-mutant lung cancer cells. Treatments with two benzimidazole derivatives, methiazole and fenbendazole-both of which are structurally specific-yielded significant suppression of the RAS-related signaling pathways in KRAS-mutated cells. Moreover, combinatorial therapy with methiazole and trametinib, a MEK inhibitor, induced synergistic effects in KRAS-mutant lung cancer cells. Our study demonstrates that these benzimidazole derivatives play an important role in suppressing KRAS-mutant lung cancer cells, thus offering a novel combinatorial therapeutic approach against such cancer cells.

 

ドラッグライブラリー・スクリーニングによって、ベンズイミダゾール系薬剤がKRAS変異性肺がんへの選択的細胞毒性薬であることを明らかにした

KRASは、ヒトの小細胞性肺がん(NSCLC)で最も変異が頻発する発がん遺伝子の一つである。KRASでの変異はNSCLC症例の30%で検出され、ほとんどはコドン12か13で起こり、その他で起こることは稀である。変異性KRASを標的にした薬の懸命な開発努力にもかかわらず、今のところ、臨床試験で成功した効果的な治療戦略はない。本研究では、ドラッグライブラリーを使って、KRAS活性化肺がん細胞に対する分子標的を調べた。KARS変異型と野生型の肺がん細胞株で、全部で1271の小分子をスクリーニングした。スクリーニングよって、KRAS変異型肺がん細胞に対するベンズイミダゾール系薬剤の細胞毒性効果が同定された。2種類のベンズイミダゾール系薬剤、メチアゾールとフェンベンダゾール-両者とも特異的な構造をもつ-が、KRAS変異型細胞でのRAS関連レシグナル経路を有意に抑制した。さらに、メチアゾールとMEK阻害薬であるトラメチニブの併用療法は、KRAS変異型肺がん細胞で相乗効果があった。私たちの研究は、これらのベンズイミダゾール系薬剤がKRAS変異型肺がん細胞の抑制に重要な役割を果たすことを示し、このようながん細胞に対する新しい併存療法アプローチを提供するものだ。

Ren-Yuan Bai, Verena Staedtke, Colette M. Aprhys, Gary L. Gallia, and Gregory J. Riggins.Antiparasitic mebendazole shows survival benefit in 2 preclinical models of glioblastoma multiforme.  Neuro-Oncology 13(9):974–982, 2011.

Glioblastoma multiforme (GBM) is the most common and aggressive brain cancer, and despite treatment advances, patient prognosis remains poor. During routine animal studies, we serendipitously observed that fenbendazole, a benzimidazole antihelminthic used to treat pinworm infection, inhibited brain tumor engraftment. Subsequent in vitro and in vivo experiments with benzimidazoles identified mebendazole as the more promising drug for GBM therapy. In GBM cell lines, mebendazole displayed cytotoxicity, with half-maximal inhibitory concentrations ranging from 0.1 to 0.3 µM. Mebendazole disrupted microtubule formation in GBM cells, and in vitro activity was correlated with reduced tubulin polymerization. Subsequently, we showed that mebendazole significantly extended mean survival up to 63% in syngeneic and xenograft orthotopic mouse glioma models. Mebendazole has been approved by the US Food and Drug Administration for parasitic infections, has a long track-record of safe human use, and was effective in our animal models with doses documented as safe in humans. Our findings indicate that mebendazole is a possible novel anti-brain tumor therapeutic that could be further tested in clinical trials.

 

駆虫剤メベンダゾールは、多形膠芽細胞腫の前臨床モデル2例において生存効果があった

多形膠芽細胞腫(GBM)はよく見られる浸潤性の脳腫瘍で、治療の発達にも関わらず、患者の予後は依然として良くない。ルーティンである動物実験で、私たちは偶然にもフェンベンダゾールが脳腫瘍の生着を抑制することを観察した。フェンベンダゾールは、ベンジミダゾール系駆虫剤で、蟯虫感染を治療するために使用したものだった。その後、ベンジミダゾール系薬剤の体外および体内での実験からメベンダゾールがGBM療法にとって将来性のある薬剤として同定された。GBMの細胞株では、メベンダゾールは、抑制効果のある最大濃度の半分である0.1~0.3μMで細胞毒性を示した。メベンダゾールは、GBM細胞の微小管形成を破壊し、体外活性はチューブリン重合の減少と関連していた。続いて、私たちはメベンダゾールが、同系および異種移植の同所性マウスのグリオーマモデルで、平均生存率を63%まで有意に延長することを示した。メベンダゾールは、米国FDAで承認された駆虫薬で、ヒトの使用の安全性にも長い追跡記録があり、ヒトに安全な処方量で動物モデルでも効果があった。私たちの知見は、メベンダゾールが新規の抗脳腫瘍治療として臨床試験の対象となりうることを示している。

 

悪性腫瘍に対するメベンダゾールの臨床効果

メベンダゾールの脳腫瘍以外の臨床試験については、米国ミシガン大学(Dobrosotskaya IY, et al. 2011)とスウェーデンのウプサラ大学(Nygren P & Larsson R. 2014)の症例報告がある。

  • 2011年:1例は副腎皮質がんステージ4、複数の抗がん剤治療を受けたが効果がみられず、もう治療法がないとさじを投げられた段階になって患者自身がパブメドの文献検索でメベンダゾールの抗腫瘍効果を示した前臨床研究の結果を見つけ主治医に処方を依頼したものだ。メベンダゾール100mg錠一日2錠内服開始し転移巣の縮小を認め19ヶ月間親病巣の増大を認めない時期があった。24ヶ月後に腫瘍の増大が始まった記載がある。
  • 2013年:1例は進行大腸がんステージ4の74歳男性、カペシタビン+オキサリプラチン+ベバシズマブの標準治療を行い治療効果がなくなり、次にカペシタビン+イリノテカンによって治療されたがこの治療も効果がなくなった段階で本人了承の元にメベンダゾール100mg錠一日2錠で6週間使用、6週間経過後に肺とリンパ節の転移腫瘍は完全に消失し、肝臓の転移も著明に縮小した。しかし、元々ある肝転位のための肝機能障害のため一時的にメベンダゾール投与を中止している。初期投与量はわからないが、その後半分量に減らして再開し、その後の検査で主病巣の縮小を認めている。
  • 1例は末期がんの患者さんで腫瘍の部分縮小を認めている。詳細な記載はない。
  • 4例はメベンダゾールの効果を認めていない。詳細な記載はない。

文責:大田浩右  無断禁転載

【引用文献】

Bai RY, Staedtke V, Aprhys CM, et al. Antiparasitic mebendazole shows survival benefit in 2 preclinical models of glioblastoma multiforme. Neuro Oncol. 2011 Sep;13(9):974-82.
Bryceson AD, Woestenborghs R, Michiels M, et al. Bioavailability and tolerability of mebendazole in patients with inoperable hydatid disease. Trans R Soc Trop Med Hyg. 1982;76:563–564.
Bryceson AD, Cowie AG, Macleod C, et al. Experience with mebendazole in the treatment of inoperable hydatid disease in England. Trans R Soc Trop Med Hyg. 1982;76:510–518.
De Witt M. Gamble A, Hanson D, et al. Repurposing Mebendazole as a Replacement for Vincristine for the Treatment of Brain Tumors. Mol Med. 2017 Apr;23:50-56.
Dobrosotskaya IY, Hammer GD, Schteingart DE, Mebendazole monotherapy and long-term disease control in metastatic adrenocortical carcinoma. Endocr Pract. 2011 May-Jun;17(3):e59-62.
El-On J. Benzimidazole treatment of cystic echinococcosis. Acta Trop. 2003;85:243–252
Kammerer WS, Schantz PM. Long term follow-up of human hydatid disease (Echinococcus granulosus) treated with a high-dose mebendazole regimen. Am J Trop Med Hyg. 1984;33:132–137.
Messaritakis J, Psychou P, Nicolaidou P, et al. High mebendazole doses in pulmonary and hepatic hydatid disease. Arch Dis Child. 1991;66:532–533.
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Nygren P, Larsson R. Letter to editor: Drug repositioning from bench to bedside: tumour remission by the antihelmintic drug mebendazole in refractory metastatic colon cancer. Acta Oncol. 2014 Mar;53(3):427-8. Oct 28.
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【添付文書、評価書など】

メベンダゾール錠100(ヤンセンファーマ)添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/800155_6429005F1026_1_08

エスカゾール錠200(グラクソスミスクライン)添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/340278_6429007F1033_1_05

チアベンダゾール ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%80%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%AB

トリクラベンダゾール
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000077546.pdf

フルベンダゾール
https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc4_doubutu_flubendazole_211126.pdf

フェンベンダゾール
メイポール10 添付文書(メイジセイカファルマ)
https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/animalhealth/la/pdf/HMPBK.pdf

Panacur C 使用説明書(メルク)
https://www.merck-animal-health-usa.com/product/canine/PANACUR-C-CANINE-DEWORMER/1

フェバンテル
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/04/dl/s0413-2c.pdf
https://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-febantel-hyouka.pdf

マリンバンテル
https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc5_doubutu_mar_200410.pdf

大田浩右