10年前に「いじめ防止対策推進法」が制定されました。

そのころ、「いじめは犯罪です」とテレビCMやワイドショーなどの報道でアナウンスされました。

最近はあまりきかないなあ。と思いながらもいじめが要因と考えられる自死や不登校などがこの10年、

減るどころか、増加しています。

 

「いじめが犯罪」であることは事実です。

例えば、からかいや冷やかし等は「侮辱罪」、殺すぞ、殴るぞ、などと脅されることは「脅迫罪」、暴力的な行為は「暴行罪」、

ケガをさせたら「傷害罪」、土下座や飛び降りろ!などと義務のないことをさせられるのは「強要罪」などです。

どれも14歳以上の年齢に達していれば子どもでも警察に告訴すれば捜査しますし、場合によっては逮捕される場合もあります。

実際にいじめでの捜査も増えているという警察白書の報告もあります。

 

では、14歳に満たない子どもだったらどうするか?

犯罪性かあれば警察が捜査するし、ほとんどの場合、家庭裁判所送致になります。

家庭裁判所は児童相談所に書類をおくり、触法少年や虞犯少年として支援をしていくことになるケースもあります。

また、民法では、709条で「不法行為による損害賠償請求」が認められています。

つまり、子ども本人に刑法が適応されない場合は、その保護者に「損害賠償を請求できる」ということが認められています。

簡易裁判所や家庭裁判所に申し立てをすることで可能です。

このような意味で「いじめ=犯罪行為・不法行為」と言えます。

 

ここまではっきりしているのに、なぜ、このような対応がすくなく、情報がでないのか。

それは、「学校で起きたことなので学校で解決したい」という思い込みがみんなにあるからです。

先生方や保護者、加害者、被害者もそう思い込んでしまいます。

また、前述した対応は、「被害者の保護者が行動を起こさないと何も始まらない」という性質があります。

被害届ではなく、告訴状を書いて、警察署に出す。もしくは、不法行為を受けたとして、保護者に損害賠償請求をする。

このことで家庭、学校以外の大人が調査、確認するという介入ができます。

 

このことに被害者側にデメリットはほとんどなく、メリットが大きいです。

なぜかというと、「いじめがあったのか、なかったのか」だけでなく、「加害者がいじめを認めるか」ということが捜査機関によってはっきりするからです。

学校内で調査が行われる場合、加害者側は、「いじめを認めない」もしくは、「うちの子だけじゃない」や「被害者からも以前、

嫌なことをされた経験がある」などの理由をのべることがあり、学校は審判を下す権限はないので、

「学校では事実を確認できません」や「ここまでが限界です」ということになります。

それでは、被害を勇気をもって訴えたことが苦痛となって跳ね返ってくるだけです。

そんな経験を見ているから他の子もいじめを先生などに相談しずらいのだと思います。

もちろん、警察やその他の機関では「被害者からも以前、嫌なことをされた」という言い訳は全く通用しません。

「それはそれ、これはこれ」で全く別の事案です。

「そう思うのならその時同じように訴えを起こせばよかっただけです」

 

子どもを警察に通報するなどは学校は二の足を踏みます。それは教育機関なので当然ですが、

実は学校は警察と協定を結んでいます。

学校長が犯罪と考えられるいじめは警察へ「学校警察連絡制度」の用紙に記入し、警察署長へ送ります。

それは犯罪の告知に相当します。

ですから、これで動いてくれれば、被害者の子や保護者に負担はまったくありません。

この制度は、平成19年に結ばれ、全国で実施されています。

入学式の後にすべての学校でこの「学校警察連絡制度」についての話をすることが通達されています。

時間もないのでさらっと、「学校での犯罪行為は校長から警察に通告するなど、連携をとっていきます」くらいの短い話になるのですが、これには「いじめ」も入っています。

 

私は仕事上、警察はもちろん、家庭裁判所や少年鑑別所、児童相談所の方と仕事をすることが多かったのでよくわかっていますが、現場の先生方や校長先生方も含めてあることは知っていても詳しくご存じない方が多いと思います。

このような「いじめの対応」は学校内で処理するだけが選択肢ではありません。

加害の事実がはっきりしない。や加害者が非を認めない。加害者の保護者が結託して理由をつけ、被害者を責める。などの

トラブルが発生する場合はすみやかに捜査機関に依頼し、客観的に判断するようもとめることが必要だと私は思います。