good morning Kiss。128
※Notice※ この作品はフィクションであり実在する、 人物・地名・団体とは一切関係ありません。 また時折不適切、尚、BL要素が含まれる事もございます。 上記の意味が理解できない方、受け止めれない方はそっと静かにこのサイトを閉じて頂く事をお勧めします。 サクラコ
「ねえ、別棟にある来客用の応接室って今借りれる?」
内線でさっきの守衛に確認し、『特別ですよ』と言う念を押され、パソコンの電源を一旦落とし、エレベーターに乗る。
今にも弾み、駆け出しそうになる足先を、抑え
頬が緩みそうになるのを、必死に抑え
一階に降りると、守衛室に向かい鍵を借りた。
「誰かと会われるんですか?」
「まあ、そんなところ。ほら、流石にこの時間、店なんて飲み屋ぐらいしか空いてないし、本社に通す訳には行かないでしょ?」
『だから別棟の応接室』と納得した様子の守衛と話してると
コツン
コツン
革靴の音が聞こえて来る。
「じゃあ、少し借りるね。届出は明日俺がしておくから」
そう言うと、足音が聞こえる方に振り向き、軽く、本当に軽く手を振り、駆け寄る。
「こんばんは、急にこんな所まで押しかけて、すみません」
「大丈夫ですよ。あーでも本社は流石に無理だし、カフェもこの時間は閉まってるんで、別棟の鍵借りておいたのでそっちで、………って買い物か何かの帰りですか?と言う前に終電
………………終わってますよね?」
あの日以来
あの駅から、大野さんの姿は、消えた。
大野さんが決断するための
一年は
そう
あの日から数日後に、完全に
終わったのだ。
それでも俺は電車通勤を辞める事なく、大野さんとは電話やLINEでのやりとりを続けてはいたが、大野さんの会社での俺からしたらくだらない処分が決まらずに、バタバタと時間だけが過ぎていき、
「それに、会うのって、
………………あの日、以来ですね」
「確かに、そうですね」
駅横の社宅に住んでいた大野さんは当たり前のように引越しを余儀なくされ、あの町から姿を消した。
連絡先をしっかりと交換したから、その辺りの心配はもう無いのだけれど
今更ながらに
同じ町、徒歩圏内に愛する人が居る、その事の幸せ感を思い知らされた。
「まあ、寒いのでとにかく、どうぞ」
「あ、二宮さん、これ」
コンビニの袋を俺に渡した大野さんはふにゃりと笑い、『差し入れです』と。
LINEでどこにいるかと聞かれたのはそう言う事か、、と同時に、この近くに大野さんも居たんだと言うことも知る。
なんだか、
すごい偶然なのだろうけど
嬉しかった。
「丁度お腹空いてたんですよ。あ、今、暖房つけますから、ソファーにでも座って待って下さ、、、…………っ」
ずっと
ずっと
二宮さんに
逢いた
かった
です。
その声は密やかに
そしてやんわりと
俺の背中に、久しぶりの大好きな温もりが触れた瞬間だった。