お昼前に、新国立劇場バレエ団の人事ニュースが流れて、あわてているうちに日が暮れて、「第17回世界バレエフェスティバル」を夜6時から見てきました。

 

幕開けは、マッケンジー・ブラウンとガブリエル・フィゲレイドの「黒鳥」。ジョン・クランコ版で、アダージオとコーダはほぼ同じですが、王子はチャイパドの男子のやつ、オディールは通常版の王子のヴァリで使うやつ、な曲で踊りました。オディールの踊りはキュートだったんですが、若いブラウンさんだったからかな。フィゲレイドさんは妖しの美少年から、健全な青年に成長していました。

 

ヤスミン・ナグディとリース・クラークはウェイン・マクレガーの「クオリア」 こちらも健全で、衣装がイケナイ下着に見えなかったです。あまり練習できないで来日したのかな。

 

マリア・コチェトコワとダニール・シムキンの「アウル・フォールズ」、これは楽屋オチ系のパ・ド・ドゥらしく、プリマが態度悪く歩いていたりしていたのですが、見ていてイメージがまとまりませんでした。おふたりけっこうベテランかと思うのですが、見た目がフレッシュ。

 

オルガ・スミルノワとヴィクター・カイシェタは、ジャン=クリストフ・マイヨー版「くるみ割り人形」 スミルノワさんはマイヨーのミューズのおひとりですよね、眠れる森の美女も、じゃじゃ馬ならしのビアンカも、彼女のためのクリエーションだったと思うのですが。というわけで瑞々しくて素敵でした~ 同時期にロシアを離れて、オランダへ渡った2人、清々しい表情も印象に残ります。

 

ドロテ・ジルベールとユーゴ・マルシャンは、ジェローム・ロビンスの「アン・ソル」 ラヴェルのピアノコンチェルトでこんな作品があったのですね。というかパリオペの映像を持っているのに見ていなかったでした。パリオペはロビンスがいいんですよね。マルシャンさんがとくに上手で、ドロテさんはそこまで緻密に踊ってなかったかも。世界の名コンビですが、なぜかピンと来ないんですよね。

 

休憩15分をはさんで第2部。菅井円加とアレクサンドル・トルーシュの、ノイマイヤーの「Hello」円加さんのえんじ色のユニタードが、今どきこれはとひっかかってしまいました、1996年の作品だそうですが、なんだかレトロ。楽器叩き系の現代音楽にも懐かしさが。

 

サラ・ラムとウィリアム・ブレイスウェルはマクミランの「マノン」1幕の馬車のところの出会いのパ・ド・ドゥです。衣装がそれらしく微妙にちゃちでした。新国に客演したマシュー・ボールさんたちの「眠れる森の美女」の衣装も、本国の全幕公演のときとは違うものだったし、ドン・キホーテのネラさまたちも、見慣れない感じの衣装でした。ロイヤル・バレエは、ガラ公演などの出張ものは、本家本元の衣装を使えない規則とかがあるのでしょうか。ラムさまは安定、ブレイスウェルさんも舞台が美しくなっていました。

 

オニール八菜とジェルマン・ルーヴェは「ル・パルク」 ガラのル・パルクは禁止してほしい出すぎ演目です😢 こちらもあまりツメられないままの上演というか、なんというかでした。もっと衣装がきれいな場面も見せてほしい。

 

永久メイとキム・キミンは「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」 メイさん、パワーが加わって、これからレパートリーも広がっていきそう、はかないだけの個性ではなくなりました。キミンさんは最初のほうはバランシンらしく気をつかって踊っていたけど、だんだんテク全開の独自路線になってました。

 

休憩15分のあと、オルガ・スミルノワとユーゴ・マルシャンで、ハンス・ファン・マーネンの「3つのグノシエンヌ」 今回のベストでした~ このコンビがどうして実現したのか、どこかですでに組んでいたのでしょうか、つま先の1ミリのところまでぴったり合う、奇跡のコンビでした。感情のやりとりも、微妙なゆれ動きが自然に行きかっていて雰囲気抜群でした。久々の萌えコンビネーション、見られてホントによかったです。一期一会な予感がしますが、なにかまた組んでほしいです~、日本で見られなくても、インスタのお流れだけでも見たいです🥰

 

マリーヤ・アレクサンドロワとヴラディスラフ・ラントラートフはローラン・プティの「スペードの女王」 アレクサンドロワさんは公爵夫人でした、リーザじゃなかったです、まあそうか。初演のツィスカリーゼ主演の映像が好きでした、プティ後期の佳作ですよね。ラントラートフさんの足が超美しかったですし、アレクサンドロワさんも現役時代よりほっそりしていたかも。断片上演ですが雰囲気は素敵でした。

 

シルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコは、クリストファー・ウィールドンの「マーキュリアル・マヌーヴァーズ」 このおふたりでウィールドンが意外、すごく似合ったかというとそうでもなかったかも。リアブコさんというと、勅使川原三郎の新国の「オルフェオとエウリディーチェ」が大プレゼントでしたけど、あそこから抜粋とかできなかったものかしら、NBSと新国は不倶戴天の敵であったか。

 

ジル・ロマンと小林十市は「空に浮かぶクジラの影」ヴォーカル曲をいくつも連ねて、男ふたりのデュエット。今のダンス、の雰囲気が際立ちましたが、思っていたより3倍長かったです。コンセプトが大きく変わるわけではないので、長さに負けました。今回のためのオリジナルらしいのですが、でしたら上演時間も調整してほしかったかも。

 

15分休憩、最後の休憩なのでワインをいただきました。

 

アレッサンドラ・フェリとロベルト・ボッレで、クリストファー・ウィールドンの「アフター・ザ・レイン」まさかまだ大丈夫だったのかなフェリさま、さすがに体型がくずれてきていましたが、意外なほどの説得力が響きました。ボッレさんの表現力も強かったです。

 

ディアナ・ヴィシニョーワとマルセロ・ゴメスはトワイラ・サープの「シナトラ組曲」 トワイラ・サープは懐かしい感じになりましたが、今見たら塩梅よくというか、バランス感覚のいい作品です。大人なふたりが程よく踊ってきれいでした。

 

エリサ・バデネスとフリーデマン・フォーゲルはノイマイヤーの「椿姫」 このペア、3年前はマルコ・ゲッケを見たのになー バレエ団の来日公演も控えているし、仕方ないのかしら。シュツットガルトは遺産も豊かですけど、新作が超活発みたいなんですよね、インスタを見ていると。せっかくの機会が勿体ない…。

 

トリはマリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフの「ドン・キホーテ」 ネラさまはこんなところで?な反りかえり技が入ったりの工夫いり、ムンタさまはちょっと身体が硬く感じました、細身だからかな。手拍子が起こったらどうしよう、と見ていて緊張してしまいました。事前のおことわりは皆さん読んでいたみたいです。

 

ピアノを活かした作品が多くて、菊池洋子さんはラヴェルとモーツァルトとショスタコーヴィチとショパンのピアノ協奏曲を、単楽章ずつとはいえひと晩で弾くという、他にサティのソロと現代曲も。本日のMVPでした。技巧が凄いのに透明感があって素敵でした。とはいえ大変すぎでは、ピアニストさんをもうひとり呼んでもよかったのでは、指揮者は2人体制だったのに。

 

長時間公演でしたが、カーテンコールもさくさくと進んで、あまり感情も波立つことなく見られました。ベテランすぎる出演組には抵抗があったのですが、いざ舞台となると、不完全燃焼な若手のほうが気になったかも。過渡期なのでしょうか。