聞くところによると、先日都内某所にて「ベース呑み会」なる催し物が開催されたそうな。幹事はフラワーカンパニーズのグレート前川氏。彼の人柄か、当日は我が国屈指のロックバンドのあーんなベーシストやセッション稼業のこーんなベーシストが勢揃い。なんと総勢60名を超えたというその宴会は、それはそれは盛り上がったそうな。

 60本オーバーの重低音。それこそ“地を這うような”空気で盛り上がったのでしょうか。いやいや、ベースなのに声が高い人ってえのは意外に多いもんです。ベース呑み会なのに会場は結構きゃっきゃきゃっきゃしていたのかもしれません。

 いずれにしろ、楽しそう。ギターやボーカルや、相棒であるところのドラムに対する憎まれ口で思いっきり普段の“縁の下の力持ちストレス”を発散したのであろうことは想像に難くありません。

 この催し物、あまりの好評に次回も開催されそうな勢いだとか。しかも、その規模を拡大しつつ。

 こうなると当方ギター担当としてもうかうかしてはいられません。

 とはいえ戦隊ものでいえばさしずめ青、すなわちカッコつけかつ自己主張の強い傾向にあるギター弾きのこと、集まればお互いのスタイルのダメだし合戦でも始まりかねず、親睦を深めるどころかバンドのベースがせっかく広げてくれた横のネットワークを根こそぎ破壊しかねません。

 ここはひとつ、私がここ2~3年温めたあの企画を実行に移すべく、具体的なプランニングを始めるべきでしょうか。

 あの企画とはすなわち、題して「100人ブラック・バード」。

 内容はいたってシンプルです。

 100人もしくはそれ以上の数のギター弾きに一同に会して頂き、それぞれの自慢のアコースティックギターでビートルズの「ブラック・バード」を一斉に弾く。で、それを録音する。そんだけ。

 「ブラック・バード」といえば結婚式の2次会の余興等でもすこぶるポピュラーなギター演目。普段はスーツの彼が、仕事やデートの合間に学生時分を思い出すように自宅ワンルームでちょくちょく爪弾いていたのでしょう。いわゆるひとつのスリーフィンガー奏法が2次会会場に染み入るように響きます。当然、歌は歌いません。爪弾くギターのみで数分間を我がものに。

 そんな演目、「ブラック・バード」

 しみじみとしたプライベート感丸出しのこの曲を、100人いっせーので弾いたらどうなるのか。3フィンガー×100で300フィンガー。一斉に300フィンガー。

 年末の第九みたいに、ゴージャスな曲をよりゴージャスにするために人数を集うわけでなく、自分にそっと語りかける物件をデモ行進のように世に訴えるひととき。

 未知の迫力が発生しそうな気がしません?

 なにもプロのミュージシャンである必要はありません。老若男女も問いません。資格はひとつ。「ブラック・バード」を弾けることのみ。

 100人同時にレコーディングだと録音できるスタジオも限られてくるな。天下のソニーのスタジオでも100人はちょっと厳しいか。早稲田のアバコスタジオの一番でかいとこならなんとかいけるか。それともどこかのホールにレコーディング機材を持ち込んで録音するというのも一考か。しかしながら、どうせならデジタルレコーディングでなく、現場ミックスのアナログ・ハーフに直録りっつー荒業でいきたいな。居合い抜きのような緊張感が生々しく録音されるにちがいなかろうて。

 ちなみにですが、当然ギャラは払えん。

 ひとり日当税込み1万渡しても…。考えただけでも恐ろしい。参加にあたっては、こんなことに大事な一日を棒に振るお茶目さも、目には見えずとも要求される資格であることはご理解いただきたい。

 あと、写真撮って使うんで、そこんとこもよろしくお願いいたします。

 卒業アルバムの、校舎の屋上から中庭の卒業生全員を撮るアレ。あれ、やりますんで。みんなでギターを抱っこして。まぶしそうなカメラ目線で写るアレ。プロダクションやレコード会社等の問題がある人はそれぞれ自分で事前に処理しておくように。あとから怖い大人に怒られるのは、あたし、いやよ。

 ギャラは出せませんが、当日のスタジオ代等の諸経費はあたしが。それはもう、言いだしっぺのあたしの道楽ということで、当然。

 出来た音源を販売するといろいろめんどくさそうなので、いっそMP3音源でダウンロードし放題にするというのはどうでしょう。クレジットや集合写真ももれなく添付して。全世界に垂れ流される300フィンガーとそいつらのツラ。

 ただ、せっかくイイ音で録音するんだから、いいソフトでも聴きたいですよね。まして参加されるのがミュージシャンならなおのこと。そこは、販売用でなく個人で楽しむためということでCDをマスタリングしますか。お土産用も含めて一人3枚持って帰るとして、計300枚ですか。これぐらいプレスするなら別予算を組んだところで頭割りすれば許容範囲の予算になるのではないかと。




 全国のギター小僧諸君、どうでしょう。

 ひとまずはこのプレゼンの反応を、様子見してみようかと。

 企画の至らぬ点、新たなアイデア等、忌憚なきご意見を乞う。




 現時点での懸念は、レコーディング後の打ち上げにて、酔った青レンジャーがよその青レンジャーのギター・スタイルにいちゃもんつけてケンカとか始まりそうな…。