kimiasu 第十八回山本周五郎賞を受賞した作品。
リストラを企業の人事部から以来され実施する会社に勤める男が出会う、様々なリストラ候補生たち。
様々な人間とのドラマが生まれるその酷な仕事と恋愛を織り交ぜた娯楽小説。


主人公・真介は33歳。

日本ヒューマンリアクトという会社の会社員だ。
企業の人員削減を手伝っていると言えば柔らかく聞こえるが、要はクビ切り候補の社員と面談し、早期退職を促すのが仕事だ。
本当に会社に不利益を及ぼしているオッサンもいれば、役立っているものの他部署とのバランスの為にクビ候補になる女もいるし、会社が統合されたことで負け組になってしまった人もいる。
様々な企業へ行き面接を行う日々。
その中で気の強いタイプの女・陽子と出会う。
かなり強引に攻めて、陽子と付き合い始めた。
気の合う彼女が出来ようと、毎日仕事がある。
恋に溺れる暇はない。
時には残酷に、時には紳士的に、面接をこなしていく。
偶然出会った同級生との面談など、神経をすり減らす業務も少なくない。
しかし、こんな仕事にやりがいを見出している自分もいる。
そんな真介の日常に恋やビジネスを絡めて描く。


想像したよりも恋愛寄りだったり、性描写が多かったりしてちょっと拍子抜けした部分もあるが、トータルしたら合格点。
面白い小説だった。
このご時世、よく耳にするもののその実状を知らない「リストラ」のリアルな世界を垣間見ることが出来るし、働く者への問いかけのようなくだりもある。
耳が痛い部分もあるし、自分に自信を持てる部分もあるし、衿を正して明日から真面目に仕事に取り組もうと思わせてくれる部分もある。
ビジネス7割、恋愛3割。
真介が主人公だが、恋人の陽子やリストラ対象者たちの側からの章もあり飽きることなく読むことができる。
これから就職する人、サラリーマン、OL、転職を考える人、仕事にやりがいを見出せない人などが読むと現状を改めて見直し何か答えが見えてくるかもしれない1冊。


<新潮社 2005年>


垣根 涼介
君たちに明日はない