今週はゆっくり出来なかったので、舞台映像は、NHK-BSプレミアムシアターのバレエ特集のみ。

ロシアで活躍した古典バレエの父、振付師マリウス・プティパのドキュメンタリーが、面白かったです。19世紀の写真を彩色して、伝説のバレリーナ達も甦る。娯楽優先、ヒット狙いな振付師だったプティパが、如何にして芸術家となったのか。ボリショイの「ファラオの娘」、パリ・オペラ座の「ラ・バヤデール」、ベルリン国立バレエの「眠りの森の美女」、ミラノ・スカラ座の「白鳥の湖」と、挿入されたプティパ作品の映像も豪華。チャイコフスキーとの蜜月で作られた「眠りの森の美女」。現代的なダンサーの踊り方を追求するナチョ・ドゥアトのアプローチ。プティパ時代のダンサーがどのように踊ったか、原振付がどうだったかを探っていくラトマンスキーの「白鳥の湖」は、スピーディーで音楽ありき! むしろ新しいと感じました。

その後にミハイロフスキー・バレエの「ラ・バヤデール」。プティパの原典を残しながらナチョ・ドゥアトが改訂した振付で、なかなか斬新。

◇ミハイロフスキー・バレエ「ラ・バヤデール」(0:16:30~1:54:30)
<演 目>
バレエ「ラ・バヤデール」(全3幕)
原振付:マリウス・プティパ
改訂振付:ナチョ・ドゥアト
音楽:ルドヴィク・ミンクス

<出 演>
ニキヤ(寺院の舞姫):アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ
ソロル(戦士):ヴィクトル・レベデフ
ガムザッティ(王女):アンドレア・ラザコワ
王(ガムザッティの父):アンドレイ・カシャネンコ
大僧正:セルゲイ・ストレルコフ   ほか
ミハイロフスキー劇場バレエ団

<管弦楽>ミハイロフスキー劇場管弦楽団
<指 揮>パヴェル・ソロキン

収録:2019年11月14・16日 ミハイロフスキー劇場(サンクトペテルブルク)

ナチョ・ドゥアトは、全てのキャラクターを踊らせ、隙間なくダンスで埋め尽くす。英雄ソロルには新しいモチーフ的な動きを付け加え、舞姫ニキヤは左右に振る頭、優美な手のポーズ、足の運びなどインドの古典舞踊の動きを見せます。
そして、大僧正、ラジャ(藩王)、武将達まで踊る。上半身ムキムキな大僧正怒りのダンスは力強く、ソロルをなぎ倒せそうな迫力でした。「ソロルとニキヤは付き合ってます、懲らしめなければ」と大僧正が密告し、ラジャが「邪魔者のニキヤめ、殺してやる」と怒るシーンまで踊った! 民族舞踊的な場面は、プティパの振付を残しながらもカタカリやオリッシーなど、インドの舞踊を取り入れたりして、摩訶不思議でした。


ラジャの宮殿のアーチや円屋根の透かし模様、豪華な玉座、星が瞬く影の王国、舞台装置が美しい。また、淡いピンクのニキヤ、鮮やかなブルーのガムザッティ王女、ラジャや大僧正の衣装も素敵。バレエ衣装でサリーを何処まで再現できるか、デザイナーの工夫も面白かった。


ニキヤのアンジェリーナ・ヴォロンツォーワは、股関節が柔軟で、ポワントが強い。彼女はいわくありな経過でミハイロフスキーに移籍したけれど、テクニックに優れた素晴らしいバレリーナ。表情が柔らかく優しげな雰囲気で、ニキヤの強情さはあまり感じず、一途に恋する乙女。インド舞踊的なドゥアトが振付した部分と、影の王国のヴェールのヴァリエーションが、見事でした。


ガムザッティのアンドレア・ラザコワは、高慢な美女で、嘆くニキヤに見せた勝ち誇った微笑みが、氷のように美しかった。豪華なブルーのチュチュがよく似合う。王国の頂点に立つ王女の姿と、プリマバレリーナの輝きが見事に重なります。細い脚で見事なイタリアンフェッテを披露。


影の王国は、見慣れた古典の振付のままでした。影のバヤデール(踊り子)たちのチュチュは薄い水色かしら?

ソロルを踊ったレベデフ、動きの一つ一つが明確、良かったです。


イリ・キリアンの舞台は、また改めて見ます。