息子が亡くなってもうすぐ6年が経つ。亡くなって一週間くらいは、夢うつつだった。

休みが明けて久しぶりに電車に乗った時は、
 
「私の中ではこんなに大変な出来事があって、こんなに変わってしまったのに、世の中は何も変わらない。」
 
と思った。にこやかに友達同士お喋りを楽しむ女子高生達、黙って座っている乗客達をぼんやりと眺めながら、自分だけ違う世界にいる様に思えた。
 
数日経った頃、誰かが耳元で息を吹き掛けて来る気がした。
 
「息子かも知れない。何かを語りかけている気がする。」
 
と感じた。
 
「何を言っているのだろう?」
 
聞き取ろうと精一杯神経を研ぎ澄ました。それから一週間くらいした頃だろうか?自然と息子が語りかけて来るのが聞こえた。耳で聞くのではない、目の前にいて普通に会話している様な感じだった。
 
息子はゆっくりと語りかけて来る。私は焦って息子の言おうとすることを先読みしてしまう。
 
「今のはお母さん。」
 
息子が正す。私が勝手に考えたことと、息子の言いたいことの区別がつくように教えてくれた。
 
そうしながら、息子の言葉が自然と聞き取れる様になって行った。
 
それが幻聴の始まりと言われればそれまでだが、不思議な経験だった。