・・・・・夢を見た。

あの時、何度も何度も助けを求めたのに、
誰にも届かなかったのに・・・・・

私は―――――
独りじゃ、なかったのね・・・・・・




ange 【ボクだけのdiva】 vo.17 ~co-starⅦ~




クオンに、抱きしめて貰いながら、きっと一生分泣いたんだろう・・・・

私は、疲れて眠ってしまっていた。


気が付いた時には、もう次の日の朝。
前に社長の家で借りていた部屋のベッドの上だった。

あっ・・・・・・


私、寝ちゃった???


ベッドサイドの時計を見たら
―――――午前6時、少し前――――


ちょっと早いけどもう眠くないし、家に帰って着替えてシャワーしてって考えてたら・・・・・
ふと、昨日の事を思い出した。

・・・・・話の途中だったんだけど、大丈夫、だった、かな?

まっ、何とかなる、かなっ!!!

夢見もよかったせいか、かなりスッキリしていた。



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〈キョーコside〉

(時間が少し戻り、二人が事務所を出た後)


今日の夕方からのロケは、今の梅雨時期のせいもあり、急な雨で延期になった。
敦賀さんのスケジュールがあえば、また明日の夕方になるみたいだけど・・・・

・・・・・ちゃんと、愛莉の演技が出来るのか、心配だった。

最近は、かなり愛莉がついてきてるようになったのだが、明日の撮るシーンは
第一話のクライマックス・・・・・・


大夢が、取引先の社長令嬢である麗奈に、無理矢理キスをされているところを偶然目撃し・・・・・
初めて、実の兄である大夢への特別な想いに気付く、という大切なシーン。

私は・・・・・
愛莉の心の変化を、上手く表現出来るのだろうか・・・・!?

悩んでいても仕方がないのはわかっている。
でも私は、もう恋をしないと誓ったのだから、と

今でも躊躇う自分がいるのも本当で・・・・・・
―――――愛莉になるのが、怖い――――――

そう、思ってしまう・・・・・・


事務所からだるまやに帰ろうと玄関へ向かうと、見知った後ろ姿を見かけた。



「・・・・・・社、さん??」


声をかけると、社さんは振り向いてくれたのだけど、

いつもの社さんじゃないみたいに・・・・

落ち込んでいたみたいだった。

・・・・今は声をかけちゃいけなかったかしら?


「・・・・・キョーコちゃん・・・・こんばんは。」

ふっと笑ってくれたのだが、いつもよりも、笑顔が寂しそう。


「社さん、どうかされたのですか?
・・・・・あまり、元気がないように見えるのですが・・・・・
体調が悪いとか、食欲がないとか??」


「・・・・ありがとう、特に体調が悪いわけじゃないから、大丈夫だよ?
心配かけちゃってごめんね・・・・」


「・・・・本当に、大丈夫ですか??
とても・・・・・苦しそうです、よ????」


「!!!・・・・・そう・・・かも、ね・・・・」


本当に、顔色が悪くて、元気がなさそうで・・・
見るからに苦しそうですよっ!?


「どうされたんですか!?不肖最上キョーコ、

いつもお世話になっている社さんの為、何でもいたしますので、何なりとお申しつけ下さい!!!」


胸をドンッ、と叩きながら言ってみたのだが・・・・
社さんは、ビックリした表情のまま、固まっていた。

・・・・あれっ!?反応が悪い、かも・・・・??


「・・・・・・社、さん??」


呼びかけると、ハッとしてから・・・・


「(ハーーーッ)・・・・キョーコちゃん・・・・、有り難いことなんだけど・・・・、

余り色々な人に、同じ様な事、言わないで、ね?
(蓮が聞いてたら、闇の国の蓮が出てきちゃうからさぁ~~~~)」


「・・・・わかりました。」


あんまり納得はしてないんですが・・・・・



「キョーコちゃん、今日はもう仕事終わったの!?」


「はいっ!!!夕方からのドラマのロケが延期になったので・・・・って、社さんもご存じでしたね。」


「(ニコッ)じゃあ、ちょっとだけ・・・・今、いいかな?
・・・・・・話を聞いててくれるだけでいいんだ・・・・」


「話、ですか??
・・・・・・悩み事、ですか???」


「う~~~~ん、そんな所、かなぁ・・・・・??」

と苦笑いしながら言うので、一体どんな話なんだろうかと思っていた。

余り他の人には聞かれたくないみたいだったのと、立ち話も何なので、

という事でラブミー部の部室に行ったのだが・・・・・

ここでの話がまさか、こんなに私に影響するなんて、思ってもみなかった。



*



「コーヒーぐらいしかありませんが、どうぞ・・・・」


部室についてから、コーヒーを二人分いれて社さんに渡した。


「キョーコちゃん、さっき会ってから一度も聞かれなかったけど・・・・
蓮が今事務所に居ないって知ってたの?」


「えっ!?
・・・・・・そういえば・・・・社さんが余りにも深刻そうな顔をしてらしたので・・・・
忘れてましたっ!!!!」


「・・・・・そうなんだ・・・・・
内緒にしておこう、ねっ!!!」


と言いながらウィンクをしてくださったので・・・・

大魔王に逢わなくてすみそうで良かったって思っていたら・・・・


「蓮ね・・・・・・
ちょっと仕事にならなくなっちゃったから、今取り込み中なんだ・・・・・」


「えっ??仕事にならないって・・・・・???」


あの、敦賀さんがっ???


「最近、ずっと蓮の様子がおかしかったんだ・・・・・
どうしてか全く検討もつかなかったけど、少しだけわかった事があってね・・・・」


「わかった事、ですか・・・・」


確かに、ドラマの撮影の合間に考え込んでみえた事が多かったけど、

それは役に入るためだと思っていたから、ビックリしていた。


「和奏ちゃんに・・・・・俺が事務所で会った後からだったんだ・・・・・」


「えっ!?」


和奏ちゃんって・・・・・
歌手の??
どうして、敦賀さんの話から、彼女の名前が・・・・???


「俺が初めて事務所で会ったって蓮に話した後、次の日位から、どこか上の空でね・・・・
ただの偶然なんだと思ってたんだ・・・・
ドラマの顔合わせの時も・・・・
ちょっと和奏ちゃんの態度が、今までの女の子達と違うなぁ~って思ってたんだ。
大体、初めて蓮に会う女の子は皆、ポ~~~~ってしちゃってる事が多いから・・・・・
キョーコちゃん以来だなって思ってたんだよ・・・・??」


「なっ!!!」


確かに、敦賀さんとの初対面は最悪だったからとはいえ・・・・
当時の事を思い出すと、恥ずかしくなってきちゃうっ!!!!


「・・・・ホントに、今日まで全く気づかなかったんだ・・・・・
多分、二人は・・・・・・
顔見知り、と言うよりも、知り合い??
イヤッ!!!
もしかしたら・・・・・・」


「・・・・・・もしかしたら??」


「・・・・昔、付き合ってた、とか・・・・???」


えっ!!!!!

(ズキンッ)

な、何!?
胸が・・・・・痛い・・・・・・


「今日ね、CM撮影があって、二人でのシーンを撮ったんだ・・・・・
彼女、全くの素人だって言うのに、余りにも自然で・・・・
それ以上に、スゴかった。
蓮が・・・・・・固まってしまったくらい・・・・・」


「・・・・・・えっ???」

なっ、それって・・・・・

敦賀さんが、演技中固まったってコトォ~~~~~~????

そ、そんなこと、あ・り・え・な・い、でしょ?????


「・・・・・やっぱり、ビックリするよね・・・・
俺も、現場に居た人達もみ~んな、ビックリしてたからっ!!!!
彼女、蓮より上手いかもって・・・・・」


「っ!!!そ、そんなことありえませんっ!!!
敦賀さんより演技が上手ななんてっ!!!!
敦賀さんが一番ですっ!!!!!!」


「・・・・ありがとう。
蓮も、きっと喜ぶよ!!!」


ガシッ
社さんの両手を掴んだ。


「・・・・社さんは、敦賀さんの演技が不調なのを、ずっと気にしてらしたのですねっ!!!
素晴らしいですっ!!!!
マネージャーの鏡ですねっ!!!!!」


感動して、涙が出て来そうになっていたら・・・


「・・・・イヤッ、キョーコちゃん。違うから・・・・・」


「フエッ・・・??」


違うって、何が・・・・??


「蓮の、演技の心配じゃなくて・・・・・・・
二人の関係が気になって・・・・・・
まさか、自分でも気づかなかったんだ。
今日の、蓮と彼女の姿を見るまで・・・・・・

・・・・・こんなにも・・・・
胸が苦しくなるなんて・・・・・
思わなかった・・・・・・」


えっと・・・・・・・・
それって・・・・・・・・・・・・


「・・・・・社さんって・・・・・・・
じ、実は、そっちの人だったんですかぁ~~~~~!?」


「(・・・・・そっちって・・・・、ま、まさか・・・・・)
なっ!!!!!ち、違うからっ!!!!!!!
ありえないからぁ~~~~~~っ!!!!!!!!!!

ちゃぁ~~~んと、女の子が好きだよ!?
っていうか、和奏ちゃんが好きなんだよっ!!!!!」


ハアハア・・・・・


必死に言って息を切らした社さんが、余りにも面白くて(ちょっと失礼かも!?)、少し見入ってしまった。



「・・・・・・・・・」



「マネージャーが芸能人に恋をしちゃいけないって、ずっと思ってた・・・・。
仕事で自分の担当している者を売り込んでいかなきゃいけないのに、

他の子に気を取られる事になるからね・・・・・。
ましてや、同じ事務所なんだから、いわば事務所の商品に手を出すなんて、ありえないって・・・・・・。

でも、ね・・・・・
気付いてしまったらもう、止まらないんだ。
今も、蓮と二人で何を話しているのか、気になって仕方がない。
本当は、その場に一緒に居たかったのに・・・・・。
プライベートな事だからって、今社長の家で二人で話をしてて・・・・・
蓮には話せて、俺はダメって、どんな話なんだろうって・・・・・
気になって気になって・・・・・・
キョーコちゃんに話すような事じゃなかったかもしれないのに、誰かに聞いて欲しかったからって・・・・

・・・・・って、キョーコちゃん??
顔色、悪いよ???大丈夫????」


社さんの話の途中から、私はちゃんと聞けなくなっていた。

・・・・・二人きりで話って?
プライベートな事って・・・・??

(ズキンッ)

また・・・・・・胸が痛む。
頭も・・・・・・ボーッとしてくる。

ただ・・・・・・・


敦賀さんの笑顔が・・・・・
グルグルと頭を回ってる。

「最上さん」と、あの素敵なテノールの声で微笑みながら話かけてくれる、敦賀さんが・・・・・

もしかしたら・・・・・・

彼女と・・・・・・??


(ズキンッ・・・ズキンッ・・・)

私の中に・・・・・

どす黒い感情が流れ込んで来る。


「・・・・・キョーコちゃん??
ホントに大丈夫???」


社さんが心配そうに覗き込んでくれるので・・・・
何とか気持ちを持ち直し、


「・・・・大丈夫ですよ!?」


と言い、その場は凌げた。

その後、どうやってだるまやまで帰ったのか、余り記憶にない。

私は、自分の部屋につくなり、ヘナヘナとしゃがみ込んだ。



今まで、ちょっと他の人よりかは近くにいたと自惚れてたのかしら・・・?
敦賀さんが、今まで全く女性と、その・・・・・お付き合い、ということがなかったなんて考えられないし、敦賀さんにだって、過去や・・・・
プライベートとかもあるわけだから、ただの後輩が知らないのは当たり前なのに・・・・・


かなり・・・・ショックだった・・・・・・

もう、頭の中が真っ白で・・・・・・

しばらく部屋で、放心状態が続いていた。


そして―――――――

余り眠れないまま、次の日がきた。

夕方には天気も持ち直し、昨日延期したロケも行われる事となった。


このロケで私は―――――

愛莉を自分のモノにした。

ただ、私の中の何かが大きく変わっていくのが、わかった・・・・・・・・・





vo.18


(この回は、私の中でとても大切な話なのですが・・・・・

あまり自分の伝えたかったことが、ちゃんと出せたのかが

わからないです。


文章力、皆無ですね。

表現は、ホントに難しいです。


これで少しずつオリキャラを出した理由が

わかってもらえると良いんですが・・・・

どうなんだろう????)