八百屋お七は実在したの!?イラストとお七の謎にせまる!【10分でわかる伊達娘恋緋鹿子】 | さきじゅびより【文楽の太夫(声優)が文楽や歌舞伎、上方の事を解説します】by 豊竹咲寿太夫



〜本日のお品書き〜
八百屋お七の物語。



















八百屋お七というと、実際に放火事件を起こした娘のお話で、それを題材に今まで多くの物語が作られてきました。

この伊達娘恋緋鹿子もその物語のうちのひとつです。







10分でわかるあらすじ



ヒロインのお七は家が火事になり、焼け出されてしまいました。

吉祥院というお寺に避難します。

家が再建されるまで、下女のお杉とともに吉祥院に置いてもらうことになりました。




そんな吉祥院で生活を送るうちに、お七は寺小姓吉三郎という人とに落ちます。


吉三郎とお七は深い恋に落ちたのですが、いつまでもお七がお寺にいることができるわけではありません

家の再建が終わったのです。



と、同時に吉三郎の元にも何やら使いがやってきました。


実は吉三郎は自由な恋愛ができない身
何故なら、故郷の近江の国の高嶋家のお守り役である安森源次兵衛の息子であり許嫁がいるからなのです。


そんな吉三郎の元に来た使いは衝撃の事実を吉三郎に告げました。


父、源次兵衛が切腹したのです。


近江の高嶋家から天皇家へ奉納するはずの天国
あまくに
の剣が何者かに盗まれ
、その責任を取って切腹をしたのでした。

また、高嶋家の若君の左門之助は100日の猶予が与えられ、その間に天国の剣を取り戻すよう命じられていたのでした。


吉三郎は許嫁と結婚し、父の跡を継がなければなりません



しかしもちろん、それを邪魔する人間がいました。

それは天国の剣を盗んだ実行犯武兵衛でした。


武兵衛は「許嫁のいる身である吉三郎がお七と不義を犯した」と言い、失脚させようとしました。



その苦境を、吉祥院の上人が救いました。

そうして上人は、2人に恋を諦めるよう言いました。




Point


吉三には許嫁がいて、武兵衛に剣を盗まれた!!




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お七は吉三と別れて。



吉三郎は家を継ぎ近江の若君を手助けして天国の剣の行方を探すこととなりました。



お七ももちろんそう簡単に吉三郎を忘れることはできませんが、近江の高嶋家の存続がかかった問題、吉三郎と別れることを決意しました。



お七とお杉は再建された家へ帰りました。

お七の両親は再建費用をやり繰りするために、借金をしていました。


その借金相手が、なんと悪いことに、あの武兵衛だったのです。

武兵衛はその借金をいいことにお七と結婚させろと迫りました。



吉三郎は近江の若君左門之助の剣の詮索の100日の期限が当日となり、最後にせめてひと目でもお七に会いたいとやってきました。

お七の家がそのようなことになっているため、お七の下女のお杉は吉三郎を縁の下へ招き入れました。



武兵衛のお金を盾にした強引な結婚の申し出に、お七の両親も従わざるを得ません。

泣きじゃくるお七をなだめすかして、結婚の話を進めたのでした。


それを聞いていた吉三郎は縁の下でこれまでの経緯を手紙に記し、そっと去りました

お杉に縁の下に吉三郎がいると聞かされたお七は縁の下のその書き置きを見つけました。



今日の期限中に剣を見つけることができなければ、若君の左門之助とともに切腹する決意が記されていました。


吉三郎の切腹を回避するためにも、お七は剣を見つけなければと焦ります。



と、戸棚の中で居眠りをしていたお七の家の弥作が、武兵衛が弥作の存在に気付かず、大変なことを口走っていたことを伝えにきました。




そうです。

武兵衛は天国の剣を盗んだ張本人。




彼は自分の脇差と見せかけて、天国の剣を自分の腰に差していたのです。



灯台下暗しです。


お杉と弥作は天国の剣を取り返すため、すぐに武兵衛のもとへ向かいました。



Point


武兵衛はとことん身勝手な男。











火の見櫓へ




さてこの時点で時刻は夜十二時(九つ)。


街の門は閉まってしまい、外にでることができません。


朝になるまでに吉三郎に剣を届けなければ、切腹になってしまいます。



街の門が開く時というのは、街が危険な状態の時、すなわち火事がおこり燃え広がらないうちに住民が避難できるよう門を開かなければならない時。



しかし、偽の火事情報を流すと、極刑になってしまいます。


お七は決意します。



好きな人の切腹を防ぐため、自分は武兵衛に無理矢理結婚をせまられるくらいなら、好きな人のために、極刑になってもかまわない、すなわち、偽の火事で門を開こうと決意したのです。




お杉と弥作が武兵衛から剣を取り返し、お七は火の見櫓を登りにいきます




雪が降る夜、手足は凍り、柱を登るのも踏み滑り苦労します。



髪も解け、ようやく火の見櫓の上にたどり着き、お七は火事を知らせる鐘を打ち鳴らしました。




火事だ火事だと街の門が次々開いていきます




お杉と弥作は剣を携え、街を抜け出していきました。




そうして、お七も火の見櫓から飛び降り、その後を追っていったのでした。



Point


火の見櫓の段はラストのひとくだり。

















火の見櫓は人気作



文楽座以外にも各地に人形浄瑠璃の一座の皆さんがいらっしゃいます。


よく上演されるのが、この火の見櫓の段。



あとは、日高川の渡し場の段や、絵本太功記の尼ヶ崎の段や、傾城阿波の鳴門の巡礼歌の段などでしょうか。




八百屋お七は江戸のお話で、江戸での演劇化が先行していたようですが、女の子が恋する人のために死刑を恐れず火事を引き起こした事件は上方にも瞬く間に広がり、上方でも演劇化されていきます。



江戸では江戸の歌舞伎がお芝居にしていく中、時代物のような形に変容されてストーリーの肉付けをしていったようです。

その中で、ヒロインのお七の極刑というラストを回避させるよう、史実のように火事を起こさず、火の見櫓から偽の火事の報せを送った設定が広まっていったようです。


当時、江戸の火の見櫓の上に設置されていたのは鐘ではなく、太鼓でした。




上方のお七の演劇化においては、人形浄瑠璃・上方歌舞伎ともに世話物としての性格を強く打ち出すため、ヒロインお七を最後は死へと向かわせる必要があり、史実のまま火事の事件を起こす設定での芝居が流行ります。




しかし、そこに江戸の火の見櫓の設定を取り入れ、上方の観客に新鮮な目線で受け入れられたのがこの伊達娘恋緋鹿子でした。



上方の火の見櫓の上に設置されていたのは鐘でした。



かくして、お七が櫓の上で髪を振り乱して鐘を打つという美しくも衝撃的なこの作品は現代まで残る名作となったのです。



上の文章でざっと解説させていただいた近江の国のお家のお話、本来の筋はもう少し入り組んでいるのですが、現在では上演されません。


八百屋の段、火の見櫓の段でほとんど筋が通ることもありますし、なにより観客のボルテージが最高潮に達する火の見櫓の段が繰り返し上演されることとなったのは、仕方のないことかもしれません。


上演時間も火の見櫓の段は十五分ほどと、気軽に見ていただけますし、筋を知らなくてもそのお芝居の美に引き込まれることは請け合いでございます。



十二月は文楽の鑑賞教室公演で東京の国立劇場で上演いたします。



お楽しみいただければ幸いです。



Point


12月に上演するよ!!





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とよたけ・さきじゅだゆう
:人形浄瑠璃文楽
ぶんらく
太夫

国立文楽劇場・国立劇場での隔月2週間から3週間の文楽
ぶんらく
公演に主に出演。


その他、公演・イラスト(書籍掲載)・筆文字(書籍タイトルなど)・雑誌ゲスト・エッセイ連載など
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