日本酒の甘口・辛口って?
今日は、日本酒の味わい・・・『甘口・辛口』について。
消費者が日本酒を選ぶ基準の圧倒的第1位が『味わいの甘口、辛口』だといわれます。
居酒屋に行ってドリンクメニューを見ると、
よっぽど日本酒に力を入れているお店以外は、
日本酒を飲むときに何を基準にしたらいいのか?
日本酒の種類が多すぎて、何が何だかわからない?・・・という場合も多いでしょう。
時には、『冷酒、生酒、熱燗』 としか、書かれていないメニューを
見たこともあるのではないでしょうか。
わたしが数々の居酒屋に行って、見てきたメニューの書き方としては、
①お酒の名まえ
②酒類業組合法による特定名称分類・・・吟醸酒、大吟醸酒、純米吟醸酒、純米酒、
純米大吟醸酒、特別純米酒、本醸造酒、特別本醸造酒
(この分類についての詳細は、また後述することにします。)
③産地(県)
④甘口・辛口
⑤日本酒度(+-)
このような項目が書かれているメニューがほとんどだと思います。
そして・・・お店の方のティスティングコメントが書いてあると、
『おぉっ!日本酒に詳しい人がいる?』
『ちゃんとティスティングしてる人がいる!』
・・・と、ちょっと嬉しく感じるのはわたしだけでしょうか?
圧倒的に1位がゆえに、きき酒師としては、
甘辛度の判定をしなければならないのですが、
甘辛の判定は簡単にはいきません。
その理由として、
1.日本酒の味わいは、他の酒類と比較すると『甘味』と『旨味』が持ち味なので、
すべての日本酒が甘味をもつため。
(どんなに辛口といっても、甘味のない日本酒はほとんどない。)
2.基本的な味わいである甘味、酸味、辛味、鹹味、塩味、旨味の中の辛味とは、
トウガラシやワサビ、ショウガなどに代表される刺激的な味わいを指すので、
日本酒でいう辛口とは意味合いが違う。
なので、『辛口』と言っても、
『甘味がより少ないものが日本酒の辛口』と曖昧な位置付けになったり、
『苦味や酸味などが強いものが辛口』だったり、
『アルコールのピリピリっとした刺激が強いものが辛口』となったりする。
そしてもうひとつ『日本酒度』も、よく知られる日本酒の甘辛の計量法です。
これは糖分が多いと比重が重くなることを利用し、日本酒度計で測定する際、
水を0(ゼロ)として、それよりも比重が重い『甘口』の日本酒を-(マイナス)、
比重が軽い『辛口』の日本酒度を+(プラス)で表記するものです。
でもこれには、比重以外の味わいの要素が全く考慮されていないので、
やっぱり一概に『甘口・辛口』 の判断はできないんですね。
また、ほとんどの日本酒が、口に含んだときには甘味を感じさせ(最初は甘い)、
余韻ではアルコールの刺激が広がる(最後は辛い)ため、
どちらの要素を取るかでも、印象は全く変わります。
さらに、果実や花のような華やかな香気成分を持つものは、甘い香りの印象から、
味覚上で『甘い』と感じることも十分に有り得るのです。
どちらにしても、甘辛の捉え方は人によっても違うことが多いので、
単純に『甘口・辛口』というひとことに頼ってはならないことを踏まえておけば
いいのではないでしょうか。
≪ともりんココだけの話≫
わたしもきき酒師になるまでは、『辛口がサッパリとしていていい!』と言って、
『辛口・超辛口』 しか選んで飲みませんでした。
でも、知識としての日本酒を勉強し、
その知識を基に、日本酒の味をきちんと味わうようになってから、
『ホントに奥が深くて、すごく美味しい~』 と、
今までの味わい方を反省しました。
でも、なかなか1種類だけで、味を比べて分けることは難しいのかもしれません。
だから、『きき酒』をたくさんしていきたいと思います。