■日本酒と料理の相性を愉しむ…■ -7ページ目

■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【一ノ蔵 純米大吟醸 米楽(MELA)】

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 ㈱一ノ蔵(宮城県,大崎市,松山千石)

特定名称ほか 純米大吟醸 原酒

原料米 兵庫県産「山田錦」(精米歩合 40%) 

酸度 3.1! アミノ酸度 ?

日本酒度 -7! アルコール度 16~17%

酒造年度 H21BY

【リンゴ酸高生産性多産酵母】の酒再び

 ゴールデンウィークの真っ只中となった5月最初の週末は、いつもとはチョット気分を変えて、久々に池袋のデパ地下まで足を伸ばして酒と肴を物色してみましたが、そこで見つけたお酒がコレ、
 【一ノ蔵 純米大吟醸 米楽(MELA)】です。
 これは宮城の「一ノ蔵」の蔵元が、兵庫県産の「山田錦」を40%まで磨き、通常の約4倍のリンゴ酸を造り出す「リンゴ酸高生産性多産酵母」を使って醸した純米大吟醸の原酒を、1年間蔵で熟成させてから出荷した少し変り種のお酒です。

 ちなみに「MELA」とは、イタリア語で「リンゴ」を意味する言葉だそうです。


 香りは、「シードル」を想わせるリンゴ酒の香りや、「ユーカリオイル」のような香草類の香りがあり、「爽やかでフレッシュな果実の香り」が感じられます。

 口当りは軽やかで、まずはいきなり鋭角的で強めの酸が口一杯に広がります。

 甘味は控えめで旨味はほとんど無く、味の余韻も短くて、舌の上に爽やかな酸の刺激と僅かな苦味が残ります。

 コクやボリューム感は控えめで、「極めてシャープな飲み口で、リンゴ酸が際立つエクストラドライな味わい」の個性酒でした。


 日本酒というよりは、「極辛口の白ワイン」を呑んでいるような感覚のお酒なので、今回は酸味の効いた洋食のオードブルを2品選んでみました。 
■【利き酒師世界一】のひとり言■  まず1品目は

  【タコとトマトのイタリアンサラダです。
 これは「タコのぶつ切り」,「フルーツトマト」,「オリーブ」etc.を、レモンドレッシングみじん切りのオニオンで和えたイタリアンテイストのマリネ風サラダで、やや酸っぱめのドレッシングと、フルーツトマトの甘味とのコントラストが楽しめる前菜です。

 「MEL」]と合わせてみると、このお酒が持つ強めのリンゴ酸と、サラダのレモンドレッシングの酸味の強さのレベルが丁度良く合い、フルーツトマトの「酸味を伴なった甘味」との相性もOKです。

 「MELA」のスッキリとした味わいが、そのまま活かされてゆくような組合せでした

■【利き酒師世界一】のひとり言■  2品目は
【五島産 アジのマリネ】です。
 
これは長崎県の五島列島で水揚げされた真アジを、「グレープシードオイル」「アボガドオイル」,そして「穀物酢」を混ぜたマリナードに漬け込んだもので、程好く脂の乗ったアジに、それぞれのオイルの風味と穀物酢の酸味が良く浸みていて、その後に続く料理への食欲がそそられるようなアンティパストです。

 お酒と合わせてみると、「合わない」という程では無いのですが、この料理と組み合せることによって、「MELA」の余韻の苦味が口の中で増幅されて、やや違和感を感じてしまいます。

 どうやら「リンゴ酸」と、このマリナードに使われているどちらかのオイル(穀物酢ではないと思う)が同調しなかったようで、利酒師としてはチョット失敗の料理選択でした。


 実は、この「リンゴ酸高生産性多酸酵母」のお酒は、昨年の8月に「一ノ蔵」の蔵元が、「試験醸造酒」としてノンラベルで販売した時に既に一度呑んでいて、今回はスペックが一部変更されて正式販売しているのをたまたま発見し、もう一度改めて呑んでみたという訳です。

 確かに「リンゴ酸」が爽やかでユニークなお酒なのですが、この香味の分野は「白ワイン」「シードル」に任せておいて、「日本酒」で敢えて挑戦する必要は無いような気もしています。
 もちろん人によって意見は分かれる所だとは思いますが…。

【田酒 「百四拾」 純米吟醸】 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 西田酒造店(青森県,青森市,大字油川字大浜)

特定名称ほか 純米吟醸酒

原料米 「華想い(百四拾)」(精米歩合 50%) 

酸度 非公開 アミノ酸度 ?

日本酒度 非公開 アルコール度 16.5%

酒造年度 H22BY

山田錦を超えるか?【百四拾】

 4月も下旬に入り、東京の桜は花がすっかり散って葉桜」となってしまったので、週末を利用して桜の代わりに「亀戸天神」「藤の花」を観に出かけたのですが、残念ながらまだ三分咲き程度で、見頃となるには1週間ほど早かったようです。

 そんな週末の夜に選んだ一本がコレ、
 【田酒 「百四拾」 純米吟醸】です。
 これは青森の西田酒造店が、青森県産の酒造好適米「華想い」を贅沢に半分まで磨いて醸した、「大吟醸規格」の純米吟醸酒です。

 ちなみに「華想い」は、青森県が「山田錦」を超える県産米の育成を目標として、兵庫の「山田錦」と青森の「華吹雪」を掛け合わせて造った酒造好適米で、ラベルに書かれている「百四拾」という名称は、この酒米が平成14年に「華想い」と命名される以前の、「青系140号」という酒米名からきているそうです。


 香りは、「白桃」のような果実の香りや、「サバラン」を想わせる洋菓子の香りがあり、「上品さを伴なった穏やかな吟醸香」が感じられます。
 口に含むと、やや艶のある甘味とキレイな印象の酸,そして滑らかな旨味が口に広がり、味の余韻は比較的長く続きます。

 後口は割としっかりとしていて適度なボリューム感があり、「程好くコクのある飲み口で、心地良い充実感とボディを感じさせる味わい」のお酒でした。


 食中酒として料理との相性が幅広いと思われたので、今回はあまり深く考えずに季節の味覚をシンプルに合わせてみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■ まずは 【青柳のお造りです。
 「青柳」「ばか貝」の剥き身の市場での名称で、これは舌の様に見える足の部分をお造りにしたもので、別名「舌切り」とも呼ばれています。

 味わってみると、シャクシャクとした歯応えと共に磯の香りが感じられ、心地良い甘味とほのかな渋みがあります。

 「田酒」と合わせてみると、このお酒のやや艶のある甘味と「青柳」の優しい甘味が寄り添って、ごく自然な美味しさが口の中に広がってゆきます。

 ちなみに「青柳」は、「わさび醤油」より「天然塩」につけて食べた方が、より「田酒」との相性がアップするように感じられました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては
【茹でそら豆】です。
 茹でたての状態で塩を振って食べてみると、独特の豆のフレーバーと共にほんのりとした甘味が口に広がります。

 お酒と合わせてみると、そら豆のシンプルな味わいに、「田酒」の透明感のある酸や膨らみのある旨味が加わることで、そら豆の味にやや複雑性が加わるような印象を受けます。

 そして余韻には、再びそら豆と「田酒」の両方の甘味がフワリと戻ってきて、お酒とおつまみの両方が止まらなくなってしまうような、なかなか相性の良い組合せでした。


 話は冒頭に戻りますが、週末に亀戸天神に「藤の花」を観に出かけたのには、実は「藤の花の香りをチェックする」という目的もありました。

 一般的に「藤の花のような…」という表現は、利酒師の間では「ほのかな吟醸香」を表す時に使うことが多いのですが、実際には「藤の花」は種類によって香りの強いものもあれば殆ど香らないものもあり、香りの種類も様々でした。

 日本酒の香りの表現のボキャブラリーについては、まだまだ勉強が必要なようですね。

【だるま正宗 熟成酒用仕込 生原酒】 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 白木恒助商店(岐阜県,岐阜市,門屋門)

特定名称ほか 純米生原酒 長期熟成酒用仕込み

原料米 麹米「雄山錦」(精米歩合 70%) 

       掛米「日本晴」(精米歩合 75%) 

酸度 ? アミノ酸度 ?

日本酒度 -20! アルコール度 17.0%

酒造年度 H22BY

初体験!【長期熟成酒用の新酒】

 4月第3週の土曜日は、東京では日中の気温が24℃まで上昇し、早くも初夏を想わせるような1日となりました。

 そんな陽気の中、いつも通り新宿のデパ地下をハシゴしつつ、日本酒売り場をチェックしていて見つけたお酒がコレ、
【だるま正宗 熟成酒用仕込 純米生原酒】です。
 これは日本酒の熟成古酒というジャンルにこだわり続けている岐阜の「だるま正宗」の蔵元が、本来であれば3年以上の熟成を経た後で、「古酒」として出荷する為の「熟成酒仕込用の生原酒」を、敢えて「新酒」の段階で限定出荷したチョット珍しいお酒です。


  香りは、「黄色りんご」を想わせる果実の香りや、「りんご羊羹」のような和菓子の香りがあり、「ほんのりと甘く華やかで、穏やさも感じさせる香り」といった印象です。
 口当りは強めで、ややトロリとした甘味と輪郭のハッキリとした酸がバランスを取り合いながら主張し、全体の味わいに甘酸っぱいイメージを与えています。

 旨味は滑らかかつ控えめで苦味は無く、余韻は比較的短くて後口には嫌味の無い甘味と明快な酸が感じられ、ボリューム感はしっかりとあります。

 日本酒度が「マイナス20!」(長期熟成に耐えられる為か?)というスペックですが、「意外とスッキリとした飲み口で、練れた甘味と豊かで厚みのある酸が特徴の個性的な味わい」のお酒でした。

 このお酒を呑んでみて、「貴腐ワイン」に良く似た印象を受けたので、今回はボルドーの甘口白ワイン「ソーテルヌ」とのマリアージュを意識した料理を選んでみました。

 まずは
【スペアリブのハニーフルーツソース】です。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  ソムリエの間では、「ソーテルヌ」に合わせる料理にハチミツやフルーツの甘味を繋ぎとして加えるのが一つのセオリーなのですが、これも「豚スペアリブ」をハチミツやパインを入れたソースに漬け込んでからオーブン焼きにした、ちょっと甘口のハワイアンテイストの料理です。

 「だるま正宗」と合わせてみると、両方の甘味が同調しながらも、ハニーフルーツソースの果実味のある甘味が、このお酒のトロリとした甘味をスッキリとした甘味へと変化させてゆきます。

 2つの異なるタイプの「甘味」の組合せですが、「甘味×甘味」でくどく重たくならないのは、「だるま正宗」の厚みのある酸が味のアクセントとなっていからだと思われます。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては【キャステロブルー】です。
 「ソーテルヌ」と「ブルーチーズ」は、ソムリエの世界では良く知られる「黄金の組合せ」ですが、青かびの刺激が強い「ロックフォール」etc.では、このお酒に対してはややシャープ過ぎるように思われたので、今回はデンマーク産の「キャステロブルー」を選んでみました。

 クリーム色の断面に大理石のような青カビが均一に広がっていますが、食べてみると青カビの刺激は比較的穏やかで、余韻にはやや強めの塩味と凝縮したミルクの旨味が感じられます。

 お酒と合わせてみると、「だるま正宗」の練れた甘味と厚みのある酸,そして「キャステロブルー」の強めの塩味と濃厚な旨味という4つの味の要素が、口のなかで融合して「第3の美味しさ」を造り上げ、予想はしていたものの素敵なマリアージュを楽しむことができました。


 さて、この「熟成酒仕込用の生原酒」が、これから蔵元で3年間熟成されることによって、「どんな色や香りや味わいへと変化してゆくのか」という点が非常に気になります。

 そこで、3年後に「だるま正宗」の「H22醸造年度仕込の3年熟成酒」を再び購入し、今回呑んだ新酒段階のお酒で受けた印象との比較をしてみたいと思っています。

 もちろん、もう一本購入して自宅で3年間熟成させるという方法も考えましたが、絶対に途中で我慢できなくなって呑んでしまうだろうな,と思って今回は諦めることとしました。

【南部美人 特別純米 無濾過生原酒

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 ㈱南部美人(岩手県,二戸市,福岡字上町)

特定名称ほか 特別純米 無濾過生原酒

原料米 岩手県産「吟おとめ」(精米歩合 55%) 

酸度 1.5 アミノ酸度 ?

日本酒度 +2 アルコール度 17.5%

酒造年度 H22BY

■【ハナ サケ ニッポン!】のお酒

 4月第2週に入って東京の桜は満開となりましたが、被災地への配慮から一部ではお花見の自粛ムードが広がっています。

 そんな中で、岩手の「南部美人」蔵元の久慈氏「You Tube」に配信した、「被災地岩手からお花見のお願い」というメッセージが様々なメディアに取り上げられています。

 この中で久慈氏は、「自粛という二次災害が被災地の経済を苦しめている,今は自粛をしてもらうよりも、「お花見」に行って被災地のお酒を呑んで頂くことの方がありがたい。」と訴えています。

 このメッセージに対しては様々な意見はあるとは思いますが、私としては十分に共感できたので、今週は迷わずこのお酒を選びました。

 【南部美人 特別純米 無濾過生原酒】です。

 これは、岩手県産の酒造好適米「吟おとめ」を55%まで磨き、同じく岩手県が開発した香り系酵母「岩手2号」を使って醸した、「オール岩手」の組合せの特別純米の無濾過生原酒で、1月~3月の酒造期間のみ出荷される期間限定のお酒です。

 香りは、「三色スミレ」のような花の香りや、子供の頃夜店で買った「ハッカパイプ」を想わせる香りがあり、「清涼感と心地良さを伴なった、甘く華やかな香り」が感じられます。

 口当りは強めで、ジューシーな甘味と鮮やかでキレのある酸,そして豊かでコクのある旨味とが、それぞれお互いに主張しつつも、ダイナミックな飲み口の中でバランスを取り合っています。

 後口はしっかりとしていて、余韻には僅かに苦味も感じられます。

 コクやボリューム感は十二分にあり、「フルボディな飲み口で、芳醇さと力強さを同時に感じさせる味わいのお酒でした。


 繊細な味や薄味の料理では、このお酒の「飲み応え抜群」な味わいに負けてしまうので、今回はこんな料理を選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■   1品目は【あいなめの南蛮漬けです。

 「あいなめ」はこれから初夏にかけてが旬の魚で、これは細かい包丁目を入れて骨切りにしたものを衣揚げにし、香味野菜と一緒に「南蛮酢」に漬け込んだものです。

 衣に南蛮酢がしっかりと浸み込んでいて、やや口をすぼめる程の穀物酢のキツサを感じますが、そこに「南部美人」が加わると、このお酒の艶のある甘味と南蛮酢の酸味とが、口の中で丁度良くバランスが取れてゆきます。

 両者の味の強さのレベルも同じ位で、「無濾過生原酒タイプのお酒」「魚の南蛮漬け料理」とは、どうやら相性の良い組合せのようです。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いて2品目は、
【鰯の竜田揚げ 梅肉ソース】です。
 これは、醤油etc.で下味を付けたイワシに片栗粉をまぶして揚げて、仕上げに梅肉ソースを絡めた惣菜なのですが、脂の乗ったイワシの味わいに、梅肉の酸っぱさがアクセントとなって食が進みます。

 「南部美人」と合わせてみると、このお酒のボリューム感のある味わいが、イワシの脂をスッキリと流してくれて、またお酒と梅肉の相性についても全く問題はありませんでした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  話は元に戻りますが
、動画で久慈氏のメッセージを見た時に、大きな被害を受けた岩手,宮城,福島を中心とした「東北の食と酒」を、日常生活の中で消費することによって、長期的に被災地を支援してゆこうという,「ハナサケニッポン!」の活動を初めて知りました。

 お店でも震災前から、宮城の「一ノ蔵」と「浦霞」,そして福島の「飛露喜」をメニューに載せていましたが、今後はこの3銘柄を店頭でアピールし、微力ながらこの活動に参加させて頂きたいと思っています。

【御前酒 菩提もと純米酒 さくらほろり

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 辻本店(岡山県,恵庭市,勝山)

特定名称ほか 菩提もと仕込 純米生貯蔵酒

原料米 岡山県産「雄町」(精米歩合 65%) 

酸度 1.6 アミノ酸度 1.3

日本酒度 +3 アルコール度 15.5%

酒造年度 H22BY

【菩提もと】仕込みの花見酒

 3月末~4月初旬にかけて、東京では日中の気温が15℃を超える日が続いて一気に桜の蕾が膨らみ、週の初めには「東京の桜の開花宣言」が出されました

 例年この時期になると、「お花見」を意識した季節限定酒が各蔵元から登場してきますが、今年はこんな「花見酒」を選んでみました。

 その名も【御前酒 菩提もと純米酒 さくらほろり】です。

 「菩提もと」とは、室町時代に確立された「酒母(もと)」仕込みの方法で、日本酒造りの段階の一つに「米麹」と「蒸米」と「水」に「酵母菌」を加え、酵母を大量に培養する「酒母(もと)造り」という工程がありますが、「菩提もと仕込み」においては、通常の「仕込み水」の代わりに天然の乳酸菌を沸かせて酸性にした「そやし水」が使われるのが大きな特徴で、現在もこの方法によって酒造りを行っている蔵元は、全国で2~3蔵しか無いと思われます。


 香りは、「洋梨」を想わせる果実の香りや、「イチゴのショートケーキ」のような洋菓子の香りがあり、「爽やかな印象を伴なった、ほんのり甘く華やかな香り」が感じられます。

 口に含むと、まずはやや鋭角的な酸のバランスが強く感じられ、それを自然な甘味と滑らかな旨味とが後からフォローしてゆきます。

 コクやボリューム感は控えめで余韻も短く、スッキリとした酸が後口をスパッと切ってきます。

 まるで爽やかな酸を持つ「白ワイン」のような、「軽快でキレのある飲み口で、シャープな酸が主張する個性的な味わいの辛口酒でした。

 今回は「花見酒」ということで、「さくら」にちなんだ「酒の肴」を用意してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは
【釜揚げ桜海老です。

 これは、春の漁期が始まった駿河湾産の「桜海老」を、大釜で塩茹でにしたもので、敢えて醤油などを付けずにそのままで味わってみましたが、薄い塩加減が桜海老の甘味を引き出して、口の中に海老の風味が一杯に広がります。

 早速「御前酒」と合わせてみると、このお酒のやや淡麗な味わいが、桜海老の繊細な甘味を決して消すことなく、うまく膨らませて行ってくれます。

 お酒が、桜海老をより美味しくする「調味料」の役割を果たしてくれているような、そんな印象を受ける組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては【さくらチーズ】です。
 これは北海道の「共働学舎農場」から、毎年「桜の季節」限定で販売される「酵母熟成」チーズで、このチーズと色々な日本酒を合わるのが、私の例年の愉しみの一つとなっています。

 中身はしっとりとしていて口溶けがとても良く、程好い塩味と共にほのかな甘味と酸味が感じられ、食べている間中何とも言えない優しい桜の香りに包まれます。

 お酒と合わせてみると、「御前酒」のほんのり甘いフレーバーとシャープな酸,そして「さくらチーズ」のほのかな桜の香りとマイルドな酸味とが、それぞれお互いに心地良くマッチングし、今年も例年通り、このチーズは日本酒との素敵な「マリアージュ」を見せてくれました。


 話は変わりますが、室町時代には各地の寺院で「僧坊酒」と呼ばれる酒造りが盛んに行われていて、その中の一つで奈良の「正暦寺」で造られていた「菩提泉」という名前のお酒の仕込み方法が、今回の「菩提もと」のルーツとなったと言われています。

 何となく時代のロマンを感じさせてくれるお話ですね…。

【瑞鷹 純米酒 菜々】 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 瑞鷹株式会社(熊本県,熊本市,川尻)

特定名称ほか 純米 原酒

原料米 「吟のさと(菜の花米)」(精米歩合 65%) 

酸度 2.0 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3 アルコール度 17.0%

酒造年度 H22BY

【菜の花米】で醸した春酒

 震災から2週間が過ぎて、スーパーやコンビニで「ミネラルウォーター」をはじめとした幾つかの商品が、依然として品切れ状態が続いている以外は、東京都内に関してはかなり平常な状態を取り戻してきています

 そんな週末の夜に選んだお酒がコレ、
【瑞鷹 純米酒 菜々】です。
 これは熊本の「瑞鷹」の蔵元が、阿蘇の伏流水と八代市産の酒米「吟のさと」を使って醸した純米酒なのですが、八代市鏡町で作られるこのお米は、春に菜種を収穫した後の菜の花を田んぼに鋤き込むと共に、菜種の絞り粕で作った肥料を使って栽培されていることから、別名「菜の花米」とも呼ばれています。


 香りは、「わらびの水煮」のような菜類の香りや、「藤の花」を想わせる花の微香があり、「ほんのりと甘く、穏やかで落ち着いた香り」が感じられます。

 口に含むと、自然で控えめな甘味と割としっかりとした酸,そして滑らかな旨味が、バランス良く口に広がってゆきます。

 余韻は比較的長く、後口には程好くキレのある酸と優しい旨味が感じられ、「スッキリとした飲み口で、甘味,酸,旨味のどの要素も突出しない、三味の調和の取れた味わい」のお酒でした。


 「菜の花米」で醸したお酒ということで、今回は春を感じさせる料理を2品選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは 【菜の花のお浸しです。
 菜の花には「白和え」「辛子和え」etc.の食べ方もありますが、この時期の菜の花の香りと味わいを楽しむには、シンプルに「お浸し」で食べるのが一番で、心地良いほろ苦さを伴ったベジェタルな味わいと共に、野菜が本来持つ甘味も感じられます。

 「菜々」と合わせてみると、このお酒の優しい味わいが、菜の花のフレーバーをちゃんと残したまま柔らかく包み込み、そして余韻にはややお酒の酸が引き立ってきます。 
 全くと言って良いほど違和感が感じられない、ごくごく自然な相性の美味しい組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては
【はまぐりの山椒煮】です。
 これは
「はまぐり」を、醤油,みりん,出し汁と山椒で炊いたもので、やや濃いめの醤油味にピリ辛の山椒が効いていて、口の中で噛み締めていると、「はまぐり」の旨味がタップリと滲み出してきます。

 そこにすかさず「瑞鷹」を合わせてみると、山椒煮のやや濃くてスパイシーな味わいがマイルドに変化し、そして後口には再び「はまぐり」の旨味がジワリと戻ってきます。

 お酒と料理の両方がより一層美味しくなって、お酒がグイグイと進んでしまうような、とても相性の良い「酒と肴」の組合せでした。

 ちなみに、3月の「ひな祭り」の季節に「はまぐり」を食べる習慣には、貝殻が元々の組合せ同士のものしかピッタリと合わないことから、「良い伴侶に巡り会えるように」とうい願掛けの意味があるそうです。

 料理も「菜の花米」のお酒も、それぞれの背景にある物語を知った上で呑んだり食べたりすると、一段と美味しさが増してくるから不思議ですね…。

【山猿 特別純米酒

■【利き酒師世界一】のひとり言■ このお酒のデータは…
蔵元 永山酒造(山口県,山陽小野田市,大字厚挟)

特定名称ほか 特別純米酒

原料米 山口県三隅町産「穀良都」(精米歩合 60%) 

酸度 2.0 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3 アルコール度 15-16%

酒造年度 H22BY

【日本一背の高い?】お米の酒

 東日本大震災が発生してから1週間が過ぎました

 この間も連日余震が続き、また福島原発事故の深刻な状況や計画停電による混乱etc.の影響で、予約が全てキャンセルとなり、お店はちゃんとした営業をすることができませんでした。

 「春分の日」を含めた3連休に入っても、被災地のことを考えると、「とてもお酒を呑む気分にはなれない」と思っていたのですが、NET上で様々な方々の意見を聞いているうちに、義援金や物資を送ることももちろん大切な支援方法ですが、幸いにも被災を免れた我々が日常の消費生活に戻って経済活動を元気にすることも、結果として被災地の支援活動に繋がってゆくのではないか,と考えるようになりました。

 そんな訳で、週末毎の「今宵の一本」を復活させることとし、早速デパ地下の日本酒売り場へ出かけて買ってきたのがコレ、
 【山猿 特別純米酒】です。
 これは山口県の永山酒造が、山口県三隅町産の「穀良都(こくりょうみやこ)」を100%使って醸した特別純米酒で、この「穀良都」という酒米は明治時代にもともと山口県で生まれたものです。

 しかしながら、稲穂の背が日本一?高く栽培が難しかったことetc.の理由で戦後は消えてしまい、一時期は「幻の酒米」となっていましたが、平成時代に入ってから農業技術の進歩によって復活し、現在は再び酒米として使われるようになっています。

 

 香りは、「サルビア」を想わせる花の蜜の香りに、「栗の薄皮」のような木質の香りが加わって、「ほんのり甘く穏やかで落ち着きのある香り」が感じられます

 口当りは強めで、明快で豊かな酸が味わいの中心となりますが、控えめで穏やかな甘味と丸みのある旨味が、酸の主張を程好くフォローしています。
 後口にも輪郭のハッキリとした酸が感じられ、
「インパクトのある飲み口で、キレの良い酸が主張するやや辛口の味わい」のお酒でした。


 「山猿」には海の幸よりも山の幸ということで、肉料理を2品選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  まずは
【ぼんじりの塩串です。

 「ぼんじり」「さんかく」とも呼ばれる鶏の尻尾の部分の肉で、鶏の各部位の中でも最も脂が乗っています。

 今回は塩を振って串焼きにしたものを買ってきましたが、肉は思ったよりも柔かくてジューシーな脂が口の中で溶けてゆき、噛み締めていると旨味も感じられてきます。

 「山猿」と合わせてみると、このお酒のしっかりとした酸が「ぼんじり」の脂をキレイに流してくれて、そして余韻にはお酒の酸と肉の旨味だけが残ります。

 「ぼんじり」だけ食べ続けていると、やや脂っこく感じられてくるのですが、このお酒があれば「ぼんじり」を何串でも食べられるような、いわば「お酒が料理を食べ易くしてくれる」といった印象の組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては【筍の豚肉巻き焼き】です。
 これは筍の穂先の柔かい部分を豚バラ肉で巻き、甘辛系のコッテリ味のタレで焼いた和惣菜で、筍のシャキシャキとした歯応えが楽しめますが、味付けが濃いので食べている内にやや「しょっぱさ」が感じられてきます。

 
そのタイミングで「山猿」を合わせてみると、狙い通りこのお酒のやや辛口の味わいが、料理の味の濃さを丁度良いレベルに抑えてくれて、それでいてお酒の酸はしっかりと消えずに持続してゆきます。

 こちらは「お酒が料理をより美味しく感じさせてくれる」という、そんな印象の組合せでした。


 さてこのお酒の「山猿」というネーミングですが、山口県の北長門地方では「猿」は縁起の良い動物とされていて、また山口県には有名な地方芸能の「周防猿回し」があるetc.、山口は猿と縁の深い土地柄であること,さらには「やまざる」=「けっして諦めない」という言葉の意味から、幻の酒米「穀良都」を復活させた、農家の人々の「やまざる努力」がこのお酒を生んだという意味があるそうです。
 ちなみに、宮崎県に同じ名前の「山猿」という麦焼酎がありますが、それとは全く関係がないとうことですので、念のため…。

 3月11日(金)14時46分に発生した東日本大震災,その時お店は開店準備中で、棚の上にあったグラス類や瓶物が多数落下して破損しましたが、幸いにも人的な被害はありませんでした。

 震災で犠牲になった方々のご冥福と、被災地の1日も早い復旧を祈るばかりです…。

【貴 純米吟醸 山田錦 無濾過生原酒

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 永山本家酒造場(山口県,宇部市,車地)

特定名称ほか 純米吟醸 中取り 無濾過生原酒

原料米 自家栽培「山田錦」(精米歩合 50%) 

酸度 1.6 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3 アルコール度 16.8%

酒造年度 H22BY

今年の【dancyu注目の酒】

 3月に入って最初の日曜の夜~月曜の明け方にかけて、東京では時ならぬ雪となり、ようやく膨らみかけていた桜のつぼみも、再び縮こまってしまうような寒さとなりました。

 そんな「春の雪」の夜に選んだお酒は、

 【貴 純米吟醸 山田錦 無濾過生原酒】です。


例年この時期になると、雑誌「dancyu」の日本酒特集号が良くも悪くも話題となりますが、このお酒は、今年の3月号の巻頭で「実力派蔵元」として紹介された山口県の永山貴博杜氏が、自家栽培した「山田錦」を50%まで磨いて醸した純米吟醸の無濾過生原酒で、この蔵元が出荷する今シーズン第二弾の新酒となります。

 香りは、「熟したパイナップル」のような果実の香りや、「缶入りのフルーツドロップ」を想わせる菓子類の香りがあり、「ほんのり甘く華やかで、飾りの無い心地よい香り」が感じられます

 口に含むと、やや艶のある甘味と軽快でシャープな酸,そして膨らみのある旨味が、豊かな果実味と共に口に広がり、後口にはやや苦味も感じられます。
 味の余韻は長めで、キレの良い酸と心地よい甘味と旨味が、微炭酸の刺激と共に舌の上に残ります。

 コクやボリューム感も十分にあり、「躍動感のあるジューシーな飲み口で、キレイなお米の旨味が感じれられる芳醇旨口タイプ」のお酒でした。

 今回は、旬の味覚「筍」を使った料理を
2品選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 まずは 【若筍の京風煮です。

 「若竹煮」はこの時期の定番の筍料理ですが、これは京風の薄口の味付けで炊いたもので、柔らかな筍にだし汁がタップリと浸み込んでいて、筍独特の食感や風味が楽しめます。

 「貴」と合わせてみると、このお酒のジューシーな甘味や余韻の苦味が、若竹煮のだし汁の旨味やほのかなエグ味とそれぞれ結び付いて、基本的な相性は悪くありません。

 しかしながら、「貴」の芳醇旨口な味わいとボリューム感が、この料理の上品な味付けに対して「上手」となって、せっかくの筍の風味がやや消えてしまうようにも感じられました


■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては【揚げ筍のサラダ仕立て】です。
 これは、香ばしく素揚げにした筍の穂先を、醤油ベースのドレッシングで和えたもので、シャクシャクとした食感の筍の穂先に、程好く酸味の効いた醤油味が絡んだ、チョット面白い味わいの創作料理です。

 合わせてみると、醤油ドレッシングの「穀物酢」の酸味とお酒の「酸」が思った以上に同調し、そして料理と「貴」の両方の味わいの個性が、どちらも消えずに口の中でうまく共存してゆきます。

 こちらは、このお酒の「食中酒」としての懐の深さを感じさせてくれる、そんな印象の組合せでした。


 話は元に戻りますが、雑誌「dancyu」の記事の中で永山貴博杜氏は、「日本酒における酸は、お酒の旨味を際立たせ、味わいにメリハリを付ける大切な存在だ。」と語っています。

 今後日本酒が、「食中酒」として国内のみならず世界中へと広がってゆく為には、「酸の存在の明快さ」ということが重要な要素の一つになってゆくのかも知れませんね。 

【亀齢 万事酒盃中 純米 生酒 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 亀齢酒造(広島家,東広島市,西条本町)

特定名称ほか 純米 生酒

原料米 「八反錦」(精米歩合 80%) 

酸度 1.5 アミノ酸度 ?

日本酒度 +5 アルコール度 16-17%

酒造年度 H21BY

【80%精米】なのにキレイな酒

 2月最後の金曜は、東京では気温が20℃まで上がって急に春が来たような陽気となり、それと共に私の今シーズンの「花粉症」が発症しました。

 花粉症の間は、利き酒がしづらくなるのが難点なのですが、年々効果のある「花粉症対策グッズ」が登場しており、そのおかげで今年はあまり影響を受けずに済んでいます。

 さて、今週WEBサイト上のSAKE SHOPで見つけたお酒がコレ、

 【亀齢 万事酒盃中 純米 生酒】です。

 これは広島の亀齢酒造が、精米歩合を「80%」に抑えた広島産の「八反錦」を麹米に使い、低温発酵によって醸した純米の生酒で、全国で30軒の酒屋だけが取り扱っている限定流通のお酒です。

 香り「熟したネーブル」を想わせる果実の香りや、「ローズマリーのハーブティー」のような香草の香りがあり、「ほのかに甘く爽やかで、全体としては穏やかな印象を受ける香り」が感じられます

 口当たりの強さは中程度で、キレの良い酸がメインとなっていますが、穏やかな甘味や程好く柔らかい旨味との調和はちゃんと取れています。
 後口はスーっと切れて、舌の上にしっかりした酸の余韻が感じられます。

 コクやボリューム感も十分にあり、「酸がしっかりとした芳醇な飲み口で、80%精米とは思えない雑味の少ないキレイな味わい」のお酒でした。

 今回は、このお酒の「ライスワイン」的な印象の香味を意識して料理を選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  まず1品目は
 【金目鯛のお造りです。

 金目鯛は、煮付け,鍋物,粕漬け,干物と色々な食べ方ができる魚ですが、個人的にはお造りにして食べるのが一番美味しいと感じています

 程好く脂が乗った上品な味わいを堪能しつつ「亀齢」と合わせてみると、金目鯛の甘味に近いような旨味とこのお酒の芳醇でキレイな味わいが、口の中で全く違和感なく自然に寄り添ってゆきます。

 「亀齢」が「食中酒」としての本領を発揮してくれているような印象の、なかなか「美味」な組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり言■  2品目は【プリニー・サンピエール】です。

 これは山羊乳を使ったフランス産のシェーブルチーズで、底辺が正方形の背の高いピラミッド型をしていますが、今回は縦半分にカットしたものを買ってきました。

 シェーブル特有のフレーバーがあり、ミルクのほのかな甘味のある味わいで、酸味は思った程強くはありません。
 合わせてみると、このチーズの爽やかな酸とほんのりとした甘味,そして「亀齢」のシャープな酸と穏やかな甘味とがそれぞれ同調し、お互いに相手に対して勝つことも負けることもなく、改めてこのお酒の「食中酒としての懐の深さ」,を感じさせてくれるような組合せでした。


  話は変わりますが、このお酒の名前の「万事酒盃中(ばんじさけさかずきのなか)」とは、「世の中の全ての出来事は、お酒の入った盃の中で起こる事のようなものだ」という意味だそうです。

  これを「小さな盃の中の瑣末な出来事」と捉えるか、または「お酒の味わいの様な複雑な出来事」と捉えるかは意見が分かれる所だと思いますが、とりあえず今宵はあまり難しいことは考えずに、盃の中の美酒を心ゆくまで飲み干すこととしました…。