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■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【華鳩(はなはと) 貴醸酒 無濾過生原酒】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 榎酒造(広島県,呉市,音戸町)

特定名称ほか 貴醸酒 無濾過生原酒

原料米 「中生新千本」(精米歩合 65%) 

酸度 4.4! アミノ酸度 ?

日本酒度 -52.0! アルコール度 17.0%

酒造年度 H22BY

【真夏のヌーボー】貴醸酒の生

 7月9日に、気象庁より関東地方の「梅雨明け」が発表されて、今年もいよいよ夏本番へと突入しました。

 さて梅雨明け後の週末に、新宿のデパ地下の日本酒売り場を物色していて、チョット珍しいお酒を見つけました。

 その名も【華鳩(はなはと) 貴醸酒 無濾過生原酒】です。

 通常の日本酒の「モロミ」は、「水,米麹,蒸し米」を3回に分けてタンクに入れる「3段仕込み」という方法によって仕込まれますが、「貴醸酒」はその3回目の仕込みの際に、「水」の代わりに「純米酒」が使われることによって、エキス分が多く濃厚で甘口な酒質となるのが特徴です。

 「華鳩」榎酒造は、日本で最初に貴醸酒造りを始めた蔵元で、一般的な貴醸酒は蔵で8年程度熟成させてから出荷されるのですが、これは春先に搾った貴醸酒を無濾過生原酒のまま瓶詰めし、長期熟成させずに出荷したもので、いわば「貴醸酒の新酒(ヌーボー)」とも呼べるお酒です。


 香りは、「桃の缶詰のような果物のシロップの香りや、「レーズン」を想わせるドライフルーツの香りがあり、「微かにナッティで、厚みのある甘美な香り」が感じられます。

 口当りはトロリとしていて、まず始めに濃密な甘味があり、その後すぐに頬がすぼまる位にシャープな酸が口全体に広がって行きます。

 後口には爽やかで心地良い酸が感じられ、そして最後には艶やかな甘味の余韻が舌の上に長く残ります。

 口当り~余韻までの間に、甘味と酸が交互に何度も現れてくるような感覚で、「濃密な甘味と爽やかで心地良い酸が、不思議なハーモニーを奏でる魅惑的な味わい」のお酒でした。


 この貴醸酒は、食前酒食後酒としてお酒単体でも十分に愉しむことが出来るのですが、味わいの個性がフランス,ボルドー地方の甘口貴腐ワイン「ソーテルヌ」と似ていることから、
 まずは【フォアグラのパテを試してみました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  ソムリエの間では、「ソーテルヌ」には「フォアグラのテリーヌ」を合わせるのが定石なのですが、今回選んだ「パテ」は、鴨の脂肪肝に生クリーム,玉子,白ワイン,豚肉etc.を混ぜ合わせてペースト状にすり潰したものです。

 スプーンですくってそのまま食べてみると、舌触りはしっとりとしていて、コクのある濃厚な味わいと共に、レバー独特のフレーバーが口の中に広がります

 「華鳩」と合わせてみると、このお酒の濃密な甘味とフォアグラのクセのある風味がどちらも大人しくなり、そして両者がごく自然に融合してゆきます。

 それぞれの個性がやや消えてしまうことの良し悪しを別とすれば、「貴醸酒」「フォアグラ」は相性の組合せと言っても良いでしょう

 続いては
【アトランティックサーモンのムニエル】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  これは、ノルウェー産のサーモンに、「ハーブスパイス」で下味を付けてパン粉をまぶし、バターでじっくりと焼き上げた「ムニエル」なのですが、今回は「華鳩」の持つ爽やかな酸を意識して、仕上げに生のレモン果汁をタップリと搾ってみました。

 合わせてみると、脂の乗ったサーモンとバターソースのコクのある味わいが、「華鳩」の濃密な甘味を程好くマスキングし、その一方でハーブのフレーバーとレモン果汁の酸味が、このお酒の心地良い酸をさらに増幅させてくれます。

 ちょっとした思い付きで試してみた料理だったのですが、「生原酒タイプの貴醸酒」「バターソースとレモンを使った魚介料理」は、意外に相性の良い組合せであるという発見をすることができました。

   

 ちなみにこの蔵元では、貴醸酒を数年に一度のペースでしか仕込んでいない為、今回呑んだ「華鳩 貴醸酒 無濾過生原酒」が、次回いつ出荷されるのかは現時点では未定となっています。
 つまり、今後数年間は「幻のお酒」となってしまう可能性があるわけで、無くなってしまう前に何本か購入して、お店の冷蔵庫で熟成させてみようかと半分本気で考えている所です。

【屋守 純米中取り 無調整生原酒】 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 豊島屋酒造株式会社(東京都,東村山市,久米川町)

特定名称ほか 純米吟醸酒 中取り 無濾過生原酒

原料米 広島県産「八反錦」(精米歩合 55%) 

酸度 1.3 アミノ酸度 ?

日本酒度 +1 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

東京の住宅地で醸す【ヤモリ酒】

 夏場の電力不足対策として、7月から大口需要家に対して15%の電力使用量の削減を求める「電力使用制限令」が発動されたことを受けて、企業のサマータイム制の導入や輪番休業,また電車の運行ダイヤの変更etc.の取り組みが本格的に始まりました。

 そんな「節電の夏」に選んだ一本がコレ、
 【屋守(おくのかみ) 純米中取り 無調整生原酒】です。

 醸造元の豊島屋酒造は、東京の西武池袋線「東村山駅」から徒歩15分程の住宅地に面した所にあり、地下150mから富士山系伏流水を汲み上げて酒造りを行っていて、代表銘柄である「金婚(きんこん)」は、明治記念館での結婚式の鏡開きにも使われています。

 この「屋守(おくのかみ)」は、蔵の4代目の田中孝治氏が「金婚」とは別のブランドとして平成14年に立ち上げたもので、広島県産の「八反錦」を半分近くまで磨いて醸し、搾りの工程における「中取り」の部分を、「濾過」「滓引き」「加水」「火入れ」etc.を一切行わずに瓶詰めした「無調整生原酒」です。


 香りは、「すももを想わせる果実の香りや、「ラムネ」のような甘味炭酸飲料の香りがあり、「ほのかに甘く爽やかで、フレッシュ&フルーティーな香り」が感じられます。

 口当りはやや強めで、優しく艶のある甘味とふくよかで膨らみのある旨味がメインの味わいとなっていて、それを程好い酸が脇役となってサポートしています。

 余韻は比較的短く、後口は割としっかりとしていてキレの良さが感じられます。

 コクやボリューム感は十分にあり、「程好く飲み応えがあり、お米のしっかりした旨味と心地良い甘味が主役となっている味わい」のお酒でした。


 このお酒の持つ香味の印象を考えて、「コクと旨味+やや酸味」という味わいの惣菜を、和食と洋食から1品ずつ探してみました。
 まず
【賀茂茄子の柚子味噌田楽です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■   「賀茂茄子」は丸茄子の女王とも呼ばれる京野菜で、皮は柔かく肉質は引き締まっているのが特徴です。

 「田楽」と言うと普通は甘くて濃い味噌の味を連想しますが、これは「柚子の皮」「スダチ酢」を加えた白味噌を使った田楽で、とろけるように柔らかい茄子の甘味と上品な白味噌に対して、柑橘類の爽やかな味が絶妙のアクセントなっています。

 「屋守」と合わせてみると、柚子味噌の風味がこのお酒の中からスッキリとした味わいを引っぱり出して来て、「屋守」の艶のある甘味と茄子田楽の甘味が、決してくどくなることなく上手く融合してくれました。


 続いて2品目は【ロールキャベツ トマトソース】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「ロールキャベツ」は洋食の基本のおかずの一つで、色々なバリエーションのものがありますが、今回は挽肉玉ネギのみじん切りetc.を混ぜて丸め、それをキャベツの葉でくるんでコンソメスープで煮込み、仕上げにトマトソースをかけたものを選んでみました。

 合わせてみると、挽肉の旨味とキャベツの甘味,そしてトマトソースの酸味が、「屋守」の持つ心地良い甘味や旨味,そして程好い酸と、それぞれ意外な程に自然な相性を見せてくれます。
 このタイプの日本酒と「洋食のおかず」を組み合せる時は、「マイルドな酸味のあるトマトソース」を使うことが、相性を良くする為のポイントとなるように思われました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
 さて話は変わりますが、この「屋守」の瓶の裏ラベルには、初めてこのお酒を見た人の大部分が、「おくのかみ」ではなく「やもり」と読んでしまうのを逆手に取って、右のような「ヤモリのイラスト」が描かれていて、背番号の④は「仕込み4号」であることを示しています。

 この「屋守」ブランドは、これから年々造りの量が増えてゆくと思われますが、「東京のヤモリ酒」として、今後どんどん人気が高まってゆきそうな予感がしています。

【無風(むかで) 純米吟醸 涼や香】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 玉泉洞酒造(岐阜県,養老郡,養老町高田)

特定名称ほか 純米吟醸酒 生詰

原料米 兵庫県特A地区産「山田錦」(精米歩合 60%) 

酸度 1.3 アミノ酸度 1.3

日本酒度 +2 アルコール度 14~15%

酒造年度 H22BY

暑さ対策に【ムカデの夏酒】

 6月第4週の水曜~金曜にかけて、東京は3日連続で気温が30℃を超える「夏日」となり、昼間の開店準備中は「節電」で空調を切っている店内も、我慢できない程の暑さとなりました。

 暑さ対策として、週末に家電量販店に店内用の扇風機を買いに出かけましたが、何とほとんど全て売切れ状態!

 何とか購入することができましたが、チョット異常な状況を感じました。

 そんな暑い夜に、WEBサイト上のSAKE SHOPをチェックしていて見つけたお酒がコレ、
 【無風(むかで) 純米吟醸 涼や香】です。

 これは、日本の名水百選にも選ばれた「養老の滝の水が湧く、岐阜県の養老町にある玉泉洞酒造が、一升瓶600本分のみという数量限定で醸した純米吟醸酒で、搾ってからタンクで4ヶ月間熟成させた後で、加水によりアルコール度を14%台まで下げて瓶詰めされたものです

 ちなみに一風変わった「ムカデ」のラベルは、戦国武将の武田信玄が「ムカデは前に進むのみで後退しない(=負けない)」ことから、自軍の旗印の一つとして使っていたムカデの絵をイメージして作られています。


 香りは、「ネーブルのような柑橘類の香りや、「缶入りのフルーツドロップ」を想わせる飴の香りがあり、「爽やかさを伴った、ほんのりと穏やかな吟醸香」が感じられます。

 口当りは軽やかで、自然で控えめな甘味と透明感のある酸,そしてスマートな旨味が口に広がり、後半には僅かな苦味もあります。

 余韻は短くて後口はスーッとフェードアウトして消えてゆき、フィニッシュには若干のキレもあります。

 加水している為にアルコールのボリューム感は控えめで、「軽快かつ清涼感のある飲み口で、スッキリとした印象の中にも、ソフトな旨味がちゃんと感じられる味わい」「夏酒」でした。


 今回は、このお酒の折角の涼しげな香味を損なわないような「夏の味覚」を用意してみました。■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
 まずは【水茄子の切り漬けです。

 「水茄子」は大阪の泉州地区の特産物で、普通の茄子よりも皮が薄く、手で握ると水が滴り落ちるほど水分が多いのが特徴です。

 まるで果物のようにジューシーな果肉で、ほんのりとした甘味があり、それが塩漬けの塩分と程好くバランスが取れています。

 「無風(むかで)」と合わせてみると、お酒の方がやや下手となって水茄子の甘味を引き立てて、そして口の中には「無風」の持つ清涼感が広がってゆきます。

 このお酒の名前にあるように、とても「涼やか」な印象の組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
 続いては【鱧の湯引き】です。
 「鱧」は京都の夏には欠かせない魚ですが、骨切りにして熱湯にくぐらせた「湯引き」が定番の料理方法で、淡白な味わいの中にも程好く脂が乗っています。

 今回は「梅肉ダレ」「辛子酢味噌」の2種類の味で、それぞれ「無風」と合わせてみましたが、「梅肉ダレ」の方は、梅の酸味とこのお酒のスッキリとした味わいが相乗効果となり、口の中の清涼感がより一層アップします。

 一方「辛子酢味噌」は、基本的な相性は決して悪くはないのですが、お酒からやや苦味を引き出してしまうのが少し気になりました。


 さて冒頭でも述べたように、この「無風 純米吟醸 涼や香」は、タンクで熟成させた後で香味のバランスを崩さない範囲内で加水を行い、アルコール度数を14%台まで下げることによって、「軽快で清涼感のある酒質」を実現しています。

 今年の夏もどうやら猛暑となりそうな気配ですが、こんな「涼やかなタイプの夏酒」をキンキンに冷やして呑むのも、一つの有効な暑さ対策かもしれませんね。

【賀茂金秀 桜吹雪 斗瓶採り 大吟醸原酒】 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 金光酒造(広島県,東広島市,黒瀬町)

特定名称ほか 大吟醸原酒 斗瓶採り

原料米 広島県産「千本錦」(精米歩合 40%) 

酸度 1.1 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3.5 アルコール度 18.0%

酒造年度 H22BY

二冠達成!【そのもののお酒】

 6月第3日曜日の「父の日」は、前日まで降っていた雨があがって「梅雨のハレ間」となったこともあり、新宿の繁華街は家族連れを中心とした買い物客で、いつも以上の賑わいを見せていました。

 そんな「父の日」の夜に選んだお酒は、
 【賀茂金秀 桜吹雪 斗瓶採り 大吟醸原酒】です.

 これは広島の金光酒造が、本年度の「広島県西条清酒品評会」「全国新酒鑑評会」において、ダブルで金賞を獲得した大吟醸の原酒なのですが、多くの蔵元が出品酒用の酒米に使っている「山田錦」ではなく、広島産の「千本錦」を使うことにこだわって出品されたお酒です。

 ちなみに今回購入した「桜吹雪 大吟醸原酒」は、出品酒と同じモロミから「斗瓶採り(袋吊りの雫酒)」によって搾られたものなので、まさに「金賞受賞酒そのもののお酒」と言って良いと思われます。


 香りは、「アールスメロンを想わせる熟した果実の香りや、「ラベンダーのハーブティー」のようなフローラルな香りがあり、「甘く華やかで、上品かつエレガントな香り」が感じられます。

 口に含むと、やや艶のある芳醇な甘味とキレイな酸,そして優しくソフト旨味が、華やかな吟醸香と共に口の中に広がってゆきます。

 含み香は中程度で味の余韻は比較的短く、僅かな苦味と共に舌の上にドライな印象が残ります。

 原酒のボリューム感もしっかりとあり、「華やかな吟醸フレーバーと、程好くボディのある優雅な味わい,そして後口の見事なキレを兼ね備えた美酒」で、香りも味わいも(そして値段も?)、まぎれも無く「バリバリの金賞受賞酒」でした。


 今回は、このお酒の品のある味わいを邪魔しないような「和惣菜」を2品揃えてみました。

  1品目は【冬瓜の海老そぼろあんかけです。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「冬瓜」は代表的な夏野菜の一つですが、これは冬瓜を柔らかく炊いて、「白醤油」を使った出し汁に海老の旨味を加えた「海老そぼろあん」をタップリとかけたもので、「翡翠」のように透き通った冬瓜の色が、目にも涼しげな冷菜です。

 口に入れると冬瓜があっという間に溶けてゆき、「海老あん」の旨味と冬瓜のフレーバーが、心地良く余韻に残ります。

 この余韻が消えない内にお酒と合わせてみると、「桜吹雪」のエレガントな味わいが「海老そぼろあん」と融合して、まるでこのお酒が「あんの一部」となったかのように、冬瓜を優しく包み込んでゆきます。

 お酒と料理の見事な一体感が愉しめる、とても相性の良い組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■   2品目は【若鮎の南蛮漬け】です。
 
これは、「若鮎」をカラリと揚げて香味野菜と一緒に南蛮酢に漬け込んだものですが、穀物酢の酸味はそれ程強く無く、割とサッパリとした味わいで、鮎のハラワタのほろ苦さが何とも言えないアクセントになっています。

 お酒と合わせてみると、「桜吹雪」の優雅さに対して「南蛮漬け」の方が、やや貫禄負けしてしまっている感もありましたが、このお酒の持つ品格のある味わいが、料理の味をより洗練させてゆくような印象を受ける組合せでした。


 さて、今年で99回目を迎えた「全国新酒鑑評会」ですが、昨年までは「山田錦」を使ったお酒と、それ以外のお酒とで審査区分が分けられていたのですが、今年度よりこの「原料米による区分」が廃止となっています。

 今年の結果では、金賞の受賞数は「山田錦」を使った出品酒がまだ最多となっていますが、来年度以降どんな風に変化してゆくのかとても楽しみですね。

【山間 仕込み5号 無濾過生原酒】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 新潟第一酒造(新潟県,上越市,浦川原区,横川)

特定名称ほか 特別純米 無濾過生原酒

原料米 「高嶺錦」(精米歩合 60%) 

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開

日本酒度 非公開 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

【深煎りデミタス系?】の甘苦酒

 沖縄では、6月9日に早々と今年の「梅雨明け」が発表されましたが、関東地方はまだ梅雨の真っ只中で、今週末もジメジメとしたうっとうしい梅雨空となりました

 さて今宵選んだ一本は、

 【山間 仕込み5号 無濾過生原酒】です。
 これは新潟の第一酒造武田良則杜氏が、地元の酒米を使って醸した今シーズンの仕込み5号の無濾過生原酒で、蔵元が本当に納得した出来栄えのお酒だけに、この「山間」(やんま)という名前が冠されるそうです。

 「山間」シリーズのお酒は生産量が少ないこともあって、酒販店のホームページでは常時品切れ状態が続いていて、昨シーズンまではなかなか呑むことが出来なかったのですが、今シーズンからは取り扱い酒販店の数が少し増えて、ようやく購入出来るようになってきました。


 香りは「沖縄産ピーチパインのような果実の香りや、「綿菓子」を想わせる砂糖菓子の香りがあり、「トロピカルフルーツ系の甘くフルーティーな香り」が感じられます。
 口当りは強めで、まずはやや濃密な甘味が押し寄せてきた後で、一瞬あざやかな酸が顔を覗かせ、続いてコクのある旨味,さらには香ばしい苦味や渋味が、甘味と複雑に絡まり合いながら口の中で絶妙に調和してゆきます。

 後口には微かな発泡によるピリピリ感があり、余韻には実に心地良い甘苦味が舌の上に長~く残ります。
 
コクやボリューム感も十分にあり、「まるでデミタスコーヒーを使ったリキュールのような、魅惑的な甘苦味が長く続く複雑かつ美味な味わい」お酒で、呑みながら何度も「う~ん」と唸ってしまう程の美味しさでした。

 この「ヤバうま」なお酒は、つまみが何も無くてもグビグビと呑めてしまう「危険なお酒」ですが、「山間 無濾過生原酒」の複雑な味わいに負けないような「珍味系の酒肴」を2品試してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まずは
【真いかの三升漬け】です。
 「三升漬け」とは、「醤油」「青唐辛子」「米麹」をそれぞれ一升ずつ混ぜ合わせ、合計「三升」で漬けることから名前が付いた醗酵調味ダレで、これはその中に「するめいか」を漬け込んで熟成させたものです。

 青唐辛子のピリッとくる辛さと米麹の甘味が、真いかの旨味をを引き立てていて、思わず炊き立ての白いご飯に乗せて食べたくなります。

 ご飯の代わりに「山間」を流し込むと、このお酒の甘苦いフレーバーと、「三升漬け」の米麹の甘味や青唐辛子の辛味,そして醤油の香味etc.が、口の中で互いに絡まりあってゆきます。

 お酒と珍味の両方の味の要素が、それぞれうまく共存してゆくような、なかなかユニークな組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては
【めふんの醤油漬け】です。

 「めふん」とは、オスの鮭「血腸(腎臓)」を塩辛にした北海道を代表する珍味で、これはその「めふん」を醤油漬けにしたものなのですが、色はどす黒く見た目もややグロテスクです。

 恐る恐る口に入れてみると、塩気はかなり強くてしょっぱいのですが、意外にクセの無い醤油ベースの味で、口の中で「めふん」がゆっくりと溶けてゆきます。

 「山間」と合わせてみると、このお酒の魅惑的な味わいが「めふん」のしょっぱさを一瞬にして消し去り、そして余韻には微かな旨味が引き出されてきます。

 こんな「珍味中の珍味」に対しても、「山間」の持つ凝縮感のある複雑な味わいは、全く揺らぐことはありませんでした。

 余談になりますが、新潟第一酒造には「山間」の他にもう一つ「越の白鳥」とういう銘柄があり、元々は同じタンクで仕込まれた「仕込み5号のモロミ」から、搾り始めに出てくる「あらばしり」と最後に搾り切った「攻め」の部分をブレンドしたものを「越の白鳥仕込み5号」として、そして真ん中の「中どり」の部分を「山間仕込み5号」として出荷しているそうです。

 この蔵元の、「山間ブランド」に対するこだわりが感じられますね…。

【白瀑山本 純米吟醸生原酒 氷点下熟成】

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 山本合名(秋田県,山本郡,八峰町八森)

特定名称ほか 純米吟醸 生原酒

原料米 「秋田酒こまち」(精米歩合 55%) 

酸度 1.7 アミノ酸度 0.9

日本酒度 +1 アルコール度 16.6%

酒造年度 H21BY

うっかり熟成?!の【熟女酒】

 気象庁から5月27日に、史上2番目に早い「関東地方の梅雨入り」が発表されましたが、それ以降都内では雨や曇りのハッキリしない天気が続いています。

 そんな週末の夜に選んだお酒がコレ、
 【白瀑 山本 純米吟醸生原酒 氷点下熟成】です。
 これは、白神山地の湧き水で酒造りを行なっている秋田「白瀑」の蔵元が、一昨年の12月に搾った「山本シリーズ」の純米吟醸生原酒なのですが、本来ならば瓶詰め直後に「しぼりたて新酒」として出荷される予定だったものが、マイナス2℃の冷蔵庫に保管されたまま500日間も忘れ去られていたもので、いわば蔵元が意図的にではなく、「うっかり氷点下で熟成させてしまった」お酒です。

 香りのトーンはやや強く「アメリカンチェリーを想わせる果実の香りや、「イチゴのショートケーキ」のような洋菓子の香りがあり、「爽やかさを伴なった、フルーティーで甘酸っぱい香り」が感じられます。

 口当りは強めで、嫌味の無いキレイな甘味とジューシーな酸,そしてしなやかな旨味が、熟成によって見事に調和していて、その一方で生酒の持つフレッシュ感も、若干ながらまだちゃんと残っています。

 後口はしっかりとしていて、余韻には僅かに苦味があり、それが味わい全体の中でアクセントとなっています。

 コクやボリューム感も十分にあり、「充実感のある飲み口で、芳醇旨口のフルボディな味わい」の艶酒でした。


 熟成により三味の調和が取れた味わいのお酒なので、幅広く様々な料理と相性が良いと思われましたが、今回は中華料理と合わせてみました。
 まずは
【茄子とインゲンの胡麻和えです。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  これは揚げ浸しにした茄子を、醤油と酢とゴマ油を使ったサッパリ味のタレで、インゲンと一緒に胡麻和えにした冷菜で、酸味の効いた味わいが食欲をそそりま
す。

 「白瀑 山本」と合わせてみると、このお酒の芳醇旨口な味わいが一度「茄子とインゲンの胡麻和え」の味をすっぽりと包み込んだ後で、この料理に対してボリューム感を付け加えてゆくような印象を受けます。

 余韻には、穀物酢の酸味が「山本」の持つ苦味を若干増幅させますが、それほど気になるレベルではなく、相性としては十分に○と言って良い組合せでした。


 続いては【海老と青梗菜の塩炒め】です。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  シンプルな味の「塩ダレ」が、海老の旨味と青梗菜やヤングコーンetc.の野菜類の甘味をうまく引き出していて、これぞ中華の定番といった味わいの惣菜で
す。

 お酒と合わせてみると、「白瀑 山本」とこの料理が驚くほど違和感が無くスッと寄り添って、相乗効果でどちらもより一層美味しくなってゆきます

以前にも何度か述べましたが、「塩ダレを使った中華の炒め物」「旨口タイプの食中酒」は、非常に相性の良い組合せの一つであると言って良いと思います。


 話は全く変わりますが、このお酒には蔵元から次のようなメッセージが添えられています。
  「出来た当初は【AKB48】のようにピチピチしたアイドル的存在だったものが、トロッとコクが出て円熟味を増した【鈴木京香】に変身しました。酒にしてみれば、500日も私をほったらかしにしてどう責任取ってくれるのよ!という心境だと思います,「AKB48」より「鈴木京香」の方がお好みの方は是非ご注文下さい。」(以上原文のまま)

 私も、お酒の香味表現のボキャブラリーに関しては、これまでは多少の自信を持っていたのですが、こんな素敵なコメントに対しては完全に脱帽ですね…。

【旭興 純米吟醸 雄町 無濾過生原酒】

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 渡邉酒造(栃木県,大田原市,須佐木)

特定名称ほか 純米吟醸 無濾過生原酒

原料米 「雄町」(精米歩合 50%) 

酸度 1.6 アミノ酸度 1.0

日本酒度 +4 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

県外不出の【甘くて辛い?酒】

 5月最後の週末の土日は、台風2号の影響で日本列島各地で大雨による被害が発生し、東京でも終日雨が降り続ける2日間となりました。

 こんな天気の日には外へ出かける気にもなれず、宵の内から「家呑み」を決め込みましたが、今宵選んだお酒はコレ、
 【旭興 純米吟醸 雄町 無濾過生原酒】です。

 これは、栃木県北部にある須佐木の山中で酒造りを行なっている渡邉酒造が、酒造好適米の「雄町」を半分まで磨いて醸した純米吟醸の生原酒で、この蔵の生産量は年間約700石と非常に少なく、また造られるお酒の9割以上が地元で消費されている為、「旭興」が栃木県の北部以外の地域に出回ることはあまり多くなく、県外ではやや稀少な存在のお酒となっています。


 香りは「夕張メロンのような熟した果実の香りに、「春菊」を想わせる微かな菜類の香りが組み合わさって、「ほんのり甘く華やかで、穏やかさも感じさせる香り」といった印象です。

 口当りはやや強く、まずは柔らかくて豊満な甘味が感じられ、続いてしっかりとした酸と丸みのある旨味が、全体的なボリューム感と共に口に広がってゆきます。

 そして後口にはキレの良い酸と微かな苦味が現れて、それが余韻にドライなイメージを与えています。

 口の中で甘口から辛口へと味わいが変化してゆくような印象で「最初は甘く始まって最後はドライに切れる、甘くて辛い面白い味わい?!」お酒でした。

  

 今回はこのお酒の持つ個性を考えて、割としっかりとした味付けの料理を2品用意してみました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  まず1品目は【鮎の揚げ煮です。

 「鮎」は5月下旬から6月にかけて、全国各地で順次釣りが解禁となってゆく川魚で、「塩焼き」にして「蓼酢」を添えるのが一般的な食べ方ですが、比較的淡白な味の塩焼きでは、「旭興」のボリューム感のある味に負けてしまうと思われたので、「揚げ煮」にしたものを合わせてみました。

 柔らかな鮎の身に醤油ベースの味が良く浸み込んでいて、予想通り「旭興」の濃醇な味わいによって消されることもなく、料理とお酒の両方がお互いに自然に寄り添ってゆきます。

 このお酒の「懐の深さ」を感じさせてくれる、素直に相性が良いと思わせるような組合せでした。


 続いて2品目は【蛍イカとそら豆のニンニク醤油炒め】です。
■【利き酒師世界一】のひとり言■  これは、どちらも今の季節の素材である
「蛍イカ」「そら豆」を、ニンニク風味の醤油タレで炒めた、かなり甘辛い味の「おかず的」な和惣菜で、これだけ食べ続けていると口の中がしょっぱく感じられてきます。

 お酒と合わせてみると、「旭興」の太さのある甘味が、この料理のコテコテの「コッテリ味」を程好いレベルにトーンダウンさせ、そして余韻にはこのお酒の後口の個性であるドライ感がちゃんと戻ってきます。

 こちらはお酒が料理をより美味しく変化させてくれる、そんな印象の組合わせでした。


 さて、日本各地には今回呑んだ「旭興」のように生産量が非常に少なく、しかも造ったお酒がほとんど地元で消費されてしまう為、全国市場においては「無名に近い存在」となっている地酒がたくさんあります。

 そんな「隠れた銘酒」を発掘して、こんな風にブログで紹介してゆくのも、私のような立場の利酒師の大切な仕事の一つであると思っております。

【新政 亜麻猫 白麹もと 特別純米酒】 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 新政酒造株式会社(秋田県,秋田市,大町)

特定名称ほか 白麹もと込み 特別純米無濾過生原酒

原料米 麹米「山田錦」(精米歩合 60%) 

       掛米「吟の精」(精米歩合 60%) 

酸度 2.2 アミノ酸度 ?

日本酒度 +2 アルコール度 15.0%

酒造年度 H22BY

白と黄色のハーモニー【亜麻猫】

 5月22日の日曜は、東京では最高気温が29℃ まで上昇して夏並みの暑さとなりましたが、週明けの月曜には一転して最高気温が18℃まで下がり、前日との温度差が11℃もある肌寒い一日となりました。

 さて、先日WEBサイト上のSAKE SHOPをチェックしていて、興味を引かれて購入したお酒がコレ、
 【新政 亜麻猫 白麹もと 特別純米酒】です。
 これは秋田の「新政」の蔵元が、通常は「黄麹菌」が使われる「米麹造り」の工程において、全体の半分の量を焼酎造りで使われる「白麹菌」を使って仕込むという、新たな方法にチャレンジして醸した特別純米の無濾過生原酒です。

 「白麹菌」の最大の特徴は、抗菌力の強い「クエン酸」を多く生み出して酸度を高め、雑菌が繁殖する危険を防ぐという点で、それによってこのお酒は「酒母(もと)造り」の工程において、一般的に使われている「醸造用乳酸」を添加せずに造られています。

 

 香り「熟した巨峰」を想わせる果実の香りや、「ラムネ」のような甘味炭酸飲料の香りがあり、「甘くフルーティーで爽やかさも感じさせる香り」といった印象です。

 口当たりは強めで、ジューシーな甘味とアクセントのある鮮やかな酸が味わいの中心となりますが、それを円やかな旨味が後からフォローしてゆきます。

 後口はしっかりとしていて余韻も長く、心地良い甘味と明快な酸,そして微かな苦味と共に舌の上に微発泡の刺激が感じられます。
 コクやボリューム感は十分にあり、「果実味のある芳醇な飲み口で、やや甘酸っぱくフルーティーな味わい」のお酒でした。 


 今回はデパ地下の惣菜売り場を物色しながら、何となくこの酒に合いそうな料理を選んでみました。
 まずは
【ズワイ蟹の土佐酢ジュレ がけ】です
■【利き酒師世界一】のひとり言■  これはズワイ蟹の甲羅を器に見立て、グレープフルーツの上に茹でズワイ蟹を乗せ、今年流行りの「土佐酢のジュレ」をかけた創作風の冷菜で、何故か生湯葉まで添えられています。

 程好い酸味の土佐酢と蟹の甘味のバランスが取れていて、そこにグレープフルーツの柑橘系のフレーバーとほろ苦さが加わることによって、爽やかな味わいを感じさせてくれる料理です

 「亜麻猫」と合わせてみると、このお酒のジューシーで強めの甘味が、「土佐酢ジュレ」によってややスッキリとした甘味へと変化し、全体的にサッパリとした印象の味に変わってゆきます。

 「亜麻猫」の個性である「フルーティーな甘味」が、消えてしまうのが良いか悪いかを別とすれば、相性的には特に問題が無いと言って良い組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いては
【鰊の切込み】です。

 これは、ニシンを細かく切って塩と「米麹」に漬け、3ヶ月以上かけてじっくりと熟成させた北海道の珍味で、麹特有のフレーバーが強く感じられます。

 口に入れた直後は、顔をしかめる程の強い塩辛さがありますが、噛み締めていると麹の甘味と共にニシンの旨味がにじみ出してきます。

 そこですかさず「亜麻猫」を合わせると、このお酒の芳醇な甘味と「鰊の切込み」の塩辛さが、口の中で「がっぷり四つ」に組み合うことによって、全く別の「旨さ」が生み出されてきます。

 これぞ「酒と肴」!と言いたくなるような、お酒がグイグイと進むチョット危険な組合せでした。 


 さて最初に述べたように、この「亜麻猫」には「醸造用乳酸」が添加されておらず、お米と水以外で使われているものは、「六号酵母」「黄麹菌」「白麹菌」だけとなります。

 したがって、グローバルスタンダードな視点から見ても、人工的な添加物を使っていないお酒ということになり、そういった意味ではこの「黄麹と白麹をミックスした亜麻色?の日本酒」は、世界市場でも十分に戦えるお酒だと言うことが出来ますね。

【山間ORI-ORI ROCK 活性にごり生原酒】

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 新潟第一酒造(新潟県,上越市,浦川原区,横川)

特定名称ほか 純米大吟醸 活性にごり生原酒

原料米 非公開(精米歩合 非公開) 

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開

日本酒度 非公開 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

爆発バージョン!【ORI-ORI ROCK】

 5月も中旬に入り、「風薫る五月」という言葉が相応しい初夏の風が吹く季節となってきましたが、今年は電力供給不足対策として、駅構内や電車の中etc.で空調の使用制限が実施されており、場所によっては「蒸し暑い五月」となってしまっています。

 さて、そんな蒸し暑さを吹き飛ばそうと選んだお酒がコレ、
 【山間 ORI-ORI ROCK 活性にごり生原酒】です。
 これは新潟県の新潟第一酒造の杜氏である武田良則氏が、平成21年春からリリースを開始した「山間(やんま)シリーズ」イレギュラー版となるお酒で、スペック的には「純米大吟醸」の「活性にごり生原酒」なのですが、詳細なデータについては全て非公開となっています。

 また「ORI-ORI ROCK」には「青」と「赤」のラベルの2つのタイプがありますが、この「赤ラベル」は発泡性が強力な「爆発バージョン」で、蔵元のオフィシャルブログにおいて、不用意に開けると中身が半分以上噴き出してしまう様子が動画が紹介されています。→http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=3448715

 

 念の為に、冷凍庫で30分程冷やしてから慎重にキャップをひねってみましたが、特に噴きこぼれることもなく無事に開栓することができました。

 瓶の底に3cm程度積もった澱をゆっくりと混ぜて呑んでみると、香りは「ヨーグルト」を想わせる乳酸菌の醗酵食品の香りや、「王林」のような果実の香りがあり、「甘酸っぱさを伴ったミルキーな香り」が感じられます。
 口に含むと、スッキリとしたキレイな甘味と活き活きとした酸,そしてソフトな旨味が広がり、後半にはやや苦味も感じられます。
 味の余韻は短めで、炭酸ガスのピチピチとした刺激と程好い苦味が、後口に爽快感をもたらしています。
 ボリューム感はやや控えめで、「舌触りは滑らかで飲み口は爽やか,そして程好いコクがありながら後口はドライにキレる印象」のお酒でした。

 このお酒は、5℃位までしっかりと冷やして、お酒単体でグイグイと呑むのが一番かと思われましたが、同じ「にごり酒」「マッコリ」に合わせる感覚で、今回は「韓国料理」にチャレンジしてみました。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  まず1品目は、

 【ヤンニョン ケジャンです。
 これは、粉
唐辛子,おろしニンニク,おろし生姜,すりゴマ,水飴etc.を混ぜ合わせた、ヤンニョン」と呼ばれる 「辛口の薬味ダレ」に、ワタリ蟹を生のままで漬け込んだ海鮮キムチです。

 手が汚れるのも構わずに、蟹の身の部分を吸うようにして食べてみると、ワタリ蟹の持つ甘味と「ヤンニョン」のコクのある辛味とが絡まり合って、絶妙な旨さを愉しむことができます。

 そこに「山間活性にごり」を流し込んでみると、まるで「生ビール」を飲んでいるかの様に、このお酒が持っている苦味が強く引き出されて、辛味でヒリヒリとしていた口の中がスッキリと爽快に変化してゆきます。

 「活性にごりタイプ」のお酒と「韓国キムチ」は、どうやら意外に面白い相性の組合せのようです。

■【利き酒師世界一】のひとり言■  続いて2品目は【プルコギ】です。
 
「プルコギ」は、薄切りの牛肉に醤油,砂糖,コチュジャン,ゴマ油,ニンニク,ハチミツetc.を混ぜた
タレで下味を付け、細切りの野菜と一緒に鉄板で焼いて食べる「韓国焼肉料理」ですが、今回はチョット贅沢に和牛を使ったものを用意してみました。

 フライパンで焼いて食べてみると、醤油ベースのやや甘めの味付けにニンニクと生姜の風味が効いていて、思わず「白いご飯」が欲しくなってしまいます。

 ご飯の代わりに「山間活性にごり」を合わせてみると、このお酒の後口ドライな味わいと「プルコギ」のやや甘辛の味わいが、互いに交わることも邪魔をすることもなく、どちらもそのまま口の中で持続してゆきます

 決して合わないことは無いのですが、これを相性の良い組合せと言うかどうかは、人によって意見の分かれる所だと思います。


 さて話は変わりますが、「ORI-ORI ROCK」という奇抜なネーミングは、このお酒に「澱(ORI)」がタップリと含まれていることと、この蔵元の武田杜氏がロックミュージシャンであることから付けられた名前のようです。

 ちなみに「YOU TUBE」で、武田杜氏の演奏シーンの動画を見ることができます。

http://www.youtube.com/watch?v=7PJdjI3pAT8&feature=player_embedded  

 世の中には、こんなユニークな杜氏もいるんですね…。

【南部美人 全麹純米仕込み All koji】 

■【利き酒師世界一】のひとり言■  このお酒のデータは…
蔵元 ㈱南部美人(岩手県,二戸市,福岡字上町)

特定名称ほか 全麹仕込み 純米原酒

原料米 「トヨニシキ」(精米歩合 65%) 

酸度 3.5! アミノ酸度 3.0

日本酒度 -20! アルコール度 15.5%

酒造年度 H21BY

体に良い酒?!【オール麹仕込】

 ゴールデンウィーク最終日となった5月8日の日曜は、西日本各地で気温が30℃を超える「真夏日」となり、都心でも最高気温が25.9℃まで上昇し、今年初めての「夏日」となりました。

 そんな初夏を想わせる夜に選んだお酒がコレ、
 【南部美人 全麹純米仕込み All koji】です。
 通常の日本酒の「モロミ」は、米麹2割:蒸し米8割程度の比率で仕込まれますが、これは岩手の「南部美人」の蔵元が、全量を米麹のみで仕込むという「全麹仕込み」で造ったユニークな純米酒で、従来の日本酒造りの概念を打ち破る新たなスタイルのお酒です。


 色調は「やや薄いべっ甲色」で、香り「天津甘栗」のような甘い焙煎香や、「ハチミツ」を想わせる熟成感を伴った蜜の香りがあり、「ふくよかで厚みのある甘い香りに、香ばしいフレーバーが組合わさった香り」が感じられます。

 口当たりは強めで、トロリとしてやや濃密な甘味を、厚みのある酸がしっかりと締めることによって、後口にくどさが残らずにキレが生まれていて、それをさらに優しい旨味がフォローしてゆきます。
 そして余韻には、麹由来の香ばしいフレーバーがハッキリと感じられ、それが味わい全体に奥行きをもたらしています。

 コクやボリューム感はそれ程強くはなく、「練れた甘味と明快な酸のバランス感,そして余韻の麹のフレーバーが特徴の、やや複雑で深い味わい」の個性酒でした。

 このお酒は「貴腐ワイン」のように、「食後酒」としてお酒単体でじっくりと味わうか、「フルーツのコンポート」etc.のデザートと一緒に愉しむのがベターだと思われたので、今回は合わせる料理について悩みましたが、麹の持つ「香ばしく」「スモーキー」なフレーバーを意識して、
こんな2品を選んでみました。

 まずは【炭火焼サンマのオリーブオイル漬けです
■【利き酒師世界一】のひとり言■  これは、炭火焼にしたサンマを、オリーブオイル,ローリエ,ニンニク,鷹の爪で漬け込んだもので、「オイルサーディンのサンマ版」といった印象の料理なのですが、結構塩気が強くてこれだけ食べていると「しょっぱさ」が感じられてきます

 そこに「All koji」が加わると、このお酒のトロリとした甘味によってサンマの「しょっぱさ」がマイルドになり、またお酒の麹のフレーバーと炭火焼きの香ばしい香りも同調します。

 オリーブオイルに対しても特に違和感はなく、事前に思っていたよりもずっと相性の良い組合せでした。


 続いてもう1品は、 【イベリコ豚のスモーク】です。
■【利き酒師世界一】のひとり言■
 「イベリコ豚」は、スペイン南西部で主にどんぐりを餌にして放牧によって育てられた黒豚ですが、これはそのバラ肉を塩漬けにしてからスモークしたものです。

 強めの燻製香で、一見多めに見える脂身の部分は、直ぐに溶けて旨味と一体になった甘味へと変化し、余韻には程好い強さの塩味が残ります。

 合わせてみると、「All koji」のやや濃密な甘味と豚の脂の優しい甘味とが絡まり合い、そして元々奥深い味わいのこのお酒に、イベリコ豚の塩味や燻製香が加わることによって、さらに全体的な味の複雑性が増してゆきます。

 こちらも予想以上に相性の良いの組合せでした。


 さ麹の飲物と言えば、「米麹」で造るノンアルコールの「甘酒」が思い浮びますが、「甘酒」は全てのビタミン類を備えた栄養食品とされていて、江戸時代には夏バテ防止のドリンクとして飲まれていたようです。

 そういった意味では、この「オール麹仕込みの純米酒」「体に良い?お酒」なのではないか,と思ってしまうのは、「酒呑み」にとって都合が良過ぎる言い分なんでしょうかね。