■日本酒と料理の相性を愉しむ…■ -5ページ目

■日本酒と料理の相性を愉しむ…■

●季節ごとの日本酒とお酒のアテとの相性を愉しむ【お酒の歳時記】です… ●

【山間 仕込み11号 中取り 無濾過火入れ 
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 新潟第一酒造(新潟県,上越市,浦川原区)

特定名称ほか 特別純米 無濾過原酒火入れ

原料米 「五百万石」「こしいぶき」(精米歩合 60%) 

酸度 非公開 アミノ酸度 非公開

日本酒度 非公開 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

今期ラストの【山間(やんま)】

 「敬老の日」を含めた3連休は、東京では3日連続で日中の最高気温が31℃を超える「真夏日」となり、さらに夜になっても気温が25℃以下に下がらない「熱帯夜」となりました。

 今年の長く厳しかった残暑を象徴するような、そんな蒸し暑い連休最終日の夜に選んだ一本は、

 【山間 仕込み11号 中取り 無濾過火入れ】です。

 これは新潟第一酒造の杜氏の武田良則氏が、地元の酒米を使って醸した「仕込11号」の無濾過原酒を、一度「瓶燗火入れ」してから半年以上冷温熟成させたもので、「モロミ」を搾る際に、酒質が最も良いとされる「中取り」の部分のみを瓶詰めした限定酒です。

 また、この「山間(やんま)」という名称は、この蔵で醸されるお酒の中で、武田杜氏が本当に納得した出来栄えのお酒だけに冠されています。


 香りのトーンは強めで、「ティラミスを想わせるビター&スウィートな洋菓子の香りや、「天津甘栗」のような甘い焙煎香があり、「ほんのりと甘く、そしてほんのりと香ばしい香り」が感じられます。

 口当りは柔らかく、角の取れた甘味と明快な酸,そして膨らみのある旨味に続いて、「山間」ならではの独特の苦味と渋味が、複雑に絡まり合いながら広がってゆきます。

 後口はしっかりとしていて、心地良い甘味,苦味,旨味の融合が、舌の上に余韻として長く残ります。

 コクやボリューム感も十分で、「濃密な飲み口と個性的な焙煎フレーバーの余韻がクセになる、複雑美味な味わい」のお酒でした。


 このお酒をグビグビと呑んでいると、正直言って料理は何も要らないといった感がありますが、今回は池袋のデパ地下の珍味コーナーで、興味を惹かれて購入した珍味を2品試してみました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず一品目【ふぐの子の粕漬けです
 これは、「ふぐの卵巣」を米糠と酒粕に漬け込んで熟成させた加賀地方の珍味で、軽く水で洗って酒粕を流し落としてから食べてみましたが、やや顔をしかめてしまう程の塩辛さです。

 慌てて「山間」を流し込むと、「ふぐの子の粕漬け」のしょっぱ過ぎる味を、お酒が一瞬でマイルドな味わいへと変化させてくれますが、その一方で「山間」の個性である「魅惑的な甘苦味」が消えてしまい、相性としては今一つ?といった印象でした。

 このくらい塩分が強い「酒の肴」には、もっと「濃醇で甘口タイプ」の日本酒を合わせた方が良いようです。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【焼き鯖へしこの醤油漬けです。
 「へしこ」福井県若狭地方の伝統的郷土料理で、通常は「生の鯖」に塩を振り糠漬けにして長期熟成させますが、これは直火焼きで余分な脂を落とした鯖を、独自の手法で醤油漬けにしたいわば「へしこのアレンジ版」で、食べ易いように骨を抜いてスライスしてあります。

 ほんのりと香ばしく見た目ほどには味が濃くなくて、噛み締めているとじんわりと旨味も出てきます。

 そのタイミングでお酒と合わせてみると、「山間」の独特な焙煎フレーバーと「焼き鯖へしこ」の香ばしさが同調しますが、味わい的にはこの珍味の方が、お酒に対して少し上手になってしまうような感があります。

 やっぱりこの「山間」というお酒には、料理やつまみの類は必要ないのかもしれません。



 ちなみに、この「仕込み11号 無濾過 火入れ」が今期の「山間」ブランドの最後の出荷となるそうですが、今年に入ってからここまで呑んで来た様々なお酒の中で、この極めて個性的な香味(巷では賛否両論あるようですが)の「山間」と出会ったことで、日本酒の持つ味わいの多様性という面に関して、個人的に大きく視野が広がったような気がしています。

 そんなわけで、来期の「山間」シリーズにも大いに期待したいと思います。

【奈良萬 純米ひやおろし 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…


蔵元 夢心酒造(福島県,喜多方市,字北町)

特定名称ほか 純米酒 ひやおろし

原料米 会津産「五百万石」(精米歩合 55%) 

酸度 1.4 アミノ酸度 1.6

日本酒度 +1 アルコール度 16.0%

酒造年度 H22BY

【ひやおろしのお手本】のお酒
 東日本大震災発生から半年となった9月11日の日曜日,被災地では震災の犠牲者を追悼する様々なセレモニーや慰霊祭などが、改めて行なわれました。
 さて、9月に入ってから各地の蔵元より「ひやおろし」が続々と出荷されていますが、今シーズンの最初の一本として選んだのが、

 【奈良萬 純米ひやおろし】です。

 これは福島の夢心酒造が、会津産の「五百万石」を使って春先に醸した純米酒を、一度火入れしてからひと夏の間じっくりと蔵で寝かせ、秋になってから二度目の火入れをせずに出荷した「純米のひやおろし」で、H22酒造年度の出荷分からラベルのデザインが新しくなっています。


 香りのトーンは控えめで、「栗の薄皮のような穀物類の香りや、「ウェハース」を想わせる甘い焼き菓子の香りがあり、「穏やかで丸く、柔和で落ち着きのある香り」が感じられます。

 口当りはソフトで、柔らかく控えめな甘味と程好くキレのある酸,そして丸みと膨らみを帯びた旨味が、ひと夏の熟成によって見事に調和しています。

 後口は穏やかで余韻は比較的長く、「ひたすら丸く柔らかな飲み口で、三味のバランスの取れた呑み飽きしない味わい」の、まさに「ひやおろしのお手本」のようなお酒でした。

 このお酒は、食中酒として和洋中の様々な料理と幅広く相性が良いと思われましたが、今回は中華料理と合わせてみました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  1品目【きのこのチンジャオロースです
 これは中華の定番である「チンジャオロース」に、エリンギ,舞茸,エノキ,椎茸etc.のきのこを加えてアレンジした料理で、細切りにしたピーマンと竹の子のシャキシャキとした食感と、豚肉ときのこの2種類の旨味のハーモニーが愉しめます。

 「奈良萬」と合わせてみると、このお酒が持つ料理との「オールマイティー」な相性の良さが存分に発揮されて、まるで「奈良萬」が「チンジャオロース」の仕上げの「旨味ソース」となっているような感覚で、両者の味が自然と一体となってゆくとても美味しい組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  そして2品目【黒豚の酢豚です

 これは、唐揚げにした「鹿児島産黒豚」と野菜の素揚げを、「甘酢あん」にしっかりと絡めた料理ですが、絶妙な甘酸っぱさが食欲をそそり、思わず「炊き立てのご飯」が欲しくなってしまいます。

 ご飯の代わりに「奈良萬」を流し込んでみると、このお酒の円やかな味わいが甘酢のフレーバーを優しく包み込み、それでいて決してお酒が料理に対して上手になり過ぎず、酢豚本来の美味しさが口の中でちゃんと持続してゆきます。

 こちらも、このお酒の食中酒としての懐の深さを改めて感じさせてくれるような、なかなか相性の良い組合せでした。


 話は変わりますが、1年ほど前に利酒師の講習会の講師をしていた時、生徒の一人から「ひやおろし」を外国人に判りやすく伝えられる英語の表現はあるか?という質問を受けて、返答に困ってしまった覚えがあります。

 このことは逆に言うと、「ひやおろし」(早春に醸して搾る→一度火入れしてひと夏寝かせる→秋になって二度目の火入れをせずに荷する)というタイプの醸造酒は、世界中でも日本酒以外に無いということの証なのかもしれませんね…。

【大倉 山廃特別純米 無濾過生原酒 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 大倉本家(奈良県,香芝市,鎌田)

特定名称ほか 山廃仕込み 特別純米 無濾過生原酒

原料米 岡山県産「備前朝日」(精米歩合 60%) 

酸度 2.7 アミノ酸度 1.4

日本酒度 +2 アルコール度 17.5%

酒造年度 H22BY

復活蔵の【フルボディ山廃】
 9月最初の週末,大型の台風12号が中国地方を縦断し、紀伊半島を中心として記録的な豪雨となり、その影響で土砂崩れなどの大きな被害を各地にもたらしました。

 東京でも、時折にわか雨の降る湿気の多い天気となりましたが、そんな週末の夜に選んだ一本がコレ、 
 【大倉 山廃特別純米 無濾過生原酒】です。

 蔵元である奈良の大倉本家は、以前は「金鼓(きんこ)」という銘柄名で知られていた蔵なのですが、諸事情から3年間にわたって酒造りを中断していました。

 その後、東京から蔵に戻った息子が酒造りを復活させ、2004年より新たに「大倉」というブランドを立ち上げ、創業以来伝承されてきた「山廃仕込み」で酒造りを行なっており、このお酒も岡山県産の酒米「備前朝日」山廃で醸し、氷温で半年間熟成させた特別純米酒です。

 香りは、「マシュマロを想わせるような菓子類の香りや、「バニラアイス」のような甘い乳製品の香りがあり、「ほんのりと甘く柔和で穏やかな香り」が感じられ、いわゆる「山廃特有の香り」は全くと言って良い程感じられません。

 口当りは強めで、トロリとした艶のある甘味と厚みのあるしっかりとした酸,そして濃厚で凝縮感のある旨味がどーんと押し寄せて来ますが、それでいて三味の調和はちゃんと取れています。

 後口はしっかりとしていて味の余韻も長く、心地良い甘味とキレのある酸,そして豊かな旨味が感じられます。

 コクやボリューム感も十二分にあり、 「力強くどっしりとした飲み口で、濃厚で呑み応えのあるフルボディな味わい」のお酒でした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  今回は、秋の代表的な味覚の一つである「秋刀魚(さんま)」の料理を合わせてみました,まず

 【北海道産 新サンマのお造りです。

 この時期に北海道で水揚げされる「新サンマ」は、個人的には「塩焼き」よりも「お刺身」の方が断然オススメで、生姜醤油に付けて食べてみると、脂がしっかりと乗っていて旨味も濃厚で、口の中でとろけてゆきます。

 お酒と合わせてみると、「大倉」のどっしりとした味わいがサンマの脂を口の中で程好く流し、そして両者の旨味の濃さのレベルも丁度良くバランスが取れています。

 サンマとお酒が交互にドンドンと進んでしまうような、なかなか相性の良い組合せでした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■   続いては【サンマの実山椒煮です。

 これは、骨まで食べられる位に柔らかく炊いたサンマに、甘辛系のコッテリ味がしっかりと浸み込んだ和惣菜で、山椒のピリリとした刺激が程好いアクセントになっています。

 「大倉」と合わせてみると、この料理のコテコテの味付けとこのお酒の濃厚な味わいが、がっぷり四つに組んで互いの個性を発揮し合い、そして余韻には山椒のスパイシーな香りが、もう一度フワリと戻ってきます。

 甘辛系の濃い味付けの料理と、山廃仕込みのフルボディタイプのお酒は、相性的には◎の組合せだと言えるようです。


 余談となりますが、この蔵元の息子が酒造りの再開を決意して、以前の杜氏に再び蔵に戻るようお願いしに行った際、先方の家族から「父はかなりの高齢(当時83歳)で、しかも父とお正月を過ごせたのは酒造りが中断された3年間だけなので、連れて行かないで欲しい。」と最初は断られたそうです。

 しかしその後何度も何度も足を運んで家族と杜氏本人を説得し、そしてようやくこの蔵の酒造りを再開することが出来たのだそうです。

 そんなストーリーを聞くと、このお酒に対する思い入れがぐーんと増してきてしまいますね…。

【賀茂泉 にごり吟醸 SUMMER SNOW 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■


 このお酒のデータは…
蔵元 加茂泉酒造(広島県,東広島市,西条上市町)

特定名称ほか 純米吟醸 にごり生原酒

原料米 「広島八反」「中生新千本」(精米歩合 55%) 

酸度 1.8 アミノ酸度 ?

日本酒度 +1 アルコール度 18.0%

酒造年度 H20BY

輸出仕様の【SUMMER SNOW】

 8月最後の土曜日となった27日の夜,東京の夏の風物詩「隅田川花火大会」が例年より1ヶ月遅れで行われ、過ぎ行く夏の夜空を花火が彩りました。

 さて、そんな夏の終わりの週末の夜に選んだのは、
 【賀茂泉 にごり吟醸 SUMMER SNOW】です。

  これは広島県の賀茂泉酒造が、もともとはアメリカ向けの輸出専用商品として販売していた「純米吟醸スペックのにごり酒」なのですが、その商品を日本国内向けに販売している酒屋をたまたまNET上で見つけたので、すかさず購入して呑んでみることとしました

 香りのトーンは中程度で、「アベリアのような白い花の蜜の香りや、「子供向けのプリン」を想わせるような甘い乳製品の香りがあり、「ほんのりと甘く、優しく柔らかな香り」が感じられます。

 口に含むと、嫌味の無い滑らかな甘味と程好くキレのある酸,そしてやや濃醇でコクのある旨味が、クリーミーな飲み口の中で優しく調和してゆきます。

 後半にはやや苦味も感じられ、それが余韻のキレの良さを伴って、後口全体に辛口の印象を与えています。

 コクやボリューム感も十分にあり、「しっとりとした飲み口で、お米本来の旨味と心安らぐ甘味,そして後口のキレが特徴のやや辛口タイプのにごり酒」でした。


 このお酒はアメリカ輸出仕様ということなので、今回は2種類の肉料理との相性を試してみました。

 まず【三元豚のロースト 洋梨のソースです

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「三元豚」とは、3品種の豚を掛け合わせたブランド豚なのですが、これはその「三元豚」のロース肉をオーブン焼きにして、ジンジャーの風味を効かせた洋梨のソースで仕上げた一品で、豚肉の脂身の部分のほんのりした甘味と、洋梨ソースの上品な甘味が良くマッチしています。

 「SUMMER SNOW」と合わせてみると、このお酒の優しい甘味が豚ロースの脂をキレイに包み込んでくれて、そして少し酸味を伴った洋梨のソースとの相性もGOODです。

 このタイプの「にごり酒」「豚肉料理」を合わせる時は、「フルーツを使ったソース」で仕上げることが、より相性を良くする為のポイントの一つとなるように思われました。


  続いては【黒毛和牛イチボのステーキです。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  「イチボ」とは、「ランプ」と呼ばれる牛の臀部の肉のうち、下側の柔らかい部分を切り出したもので、サーロインと比べると脂肪の部分が少ないのが特徴です

 シンプルに塩コショウだけでミディアムレアに焼き上げて、レホール(西洋わさび)を添えて食べてみると、噛む度に中から肉汁がジュワーと浸み出してきて、まさにお肉本来の美味しさが堪能できます。

 お酒と合わせてみると、「SUMMER SNOW」のクリーミーでコクのある味わいが、牛肉の脂分をまろやかに流す効果を発揮してくれて、試す前まではチョット冒険的に思えたこの組合せでしたが、特に違和感もなく愉しむことができました


 さて今回は、「純米吟醸スペックのにごり酒」肉料理との、意外な相性の良さを発見できたのですが、「SUMMER SNOW」をグビグビと呑んでいるうちに、このお酒がアメリカのレストランでステーキと合わせて飲まれているシーンが、思わず目に浮かんできてしまいました…

【長珍 純米60 無濾過生原酒
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 長珍酒造(愛知県,津島市,本町)

特定名称ほか 純米 無濾過生原酒

原料米 麹米 兵庫県産「山田錦」(精米歩合 60%)

       掛米 富山県産「五百万石」(精米歩合 60%)

酸度 1.9 アミノ酸度 ?

日本酒度 +6 アルコール度 17-18%

酒造年度 H22BY

中身で勝負!の【新聞紙包み】  

 お盆休み明けの東京は、18日の木曜に最高気温が36℃を超える「猛暑日」となったものの、その翌日から一転して気温が下がり始めて日曜には最低気温が19℃となり、早くも「秋の訪れ?」を感じさせるような涼しい1日となりました。

 さて、そんな涼風の吹く週末の夜に選んだ一本は、

【長珍 純米60 無濾過生原酒】です。 

 
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  これは愛知県の長珍酒造から、年に一度春先に出荷される通称「新聞紙シリーズ」と呼ばれる限定酒の一つで、モロミを搾ってからタンクで滓をゆっくりと沈殿させ、「上澄み」だけを一本ずつ丁寧に手詰めした純米の無濾過生原酒です。

 また、蔵元側の「少しでも中身にお金をかけたい」という想いから、新聞紙で包んでデータを記載した紙を貼っただけの、とてもシンプルな外装となっています

 香りは、「熟したネーブルのような柑橘類の果実の香りや、「ラムネ」を想わせる甘味炭酸飲料の香りがあり、「ほんのりと甘く爽やかで、フレッシュ感のある香り」が感じられます。

 口当りは強めで、ジューシーな甘味と活き活きとした酸,そして豊かで膨らみのある旨味が、押し寄せるように一気に口に広がってゆきます。

 味の余韻は比較的長く、後口には爽やかな印象の酸と共にハッキリとした苦味が感じられ、それがドライな感覚をもたらしています。

 ボリューム感も十分にあり、「芳醇かつダイナミックな飲み口で、甘味,酸,旨味,苦味の四味の個性がギュッと詰め込まれたような、呑み応えのある味わい」のお酒でした。

 今回はこのお酒の濃密な味わいを考えて、甘口の味噌を使った料理を2品選んでみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  
1品目は【銀だらの西京漬けです

 これは「銀だらの切り身」を、米麹の甘味が特徴の「西京味噌」漬け込んだもので、味噌が焦げ付かないように弱火でじっくりと焼き上げてみると、脂がタップリと乗った「銀だら」に、西京味噌の味がしっかりと浸みていてなかなかの美味です。

 「長珍」と合わせてみると、西京味噌のほんのりとした甘味と程好い塩分,そして「銀だら」の脂が、このお酒の凝縮感のある味わいに良くマッチします。

 お酒と料理がそれぞれの個性を尊重しつつ、お互いの良さを引き出し合うような、とても相性の良い組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いて2品目は【茄子のしぎ焼きです。

 これは、長茄子に切込みを入れて多めの油で焼き、切り口に甘味噌を塗ったものなのですが、「しぎ」という名称は「野鳥の鴨」のことで、昔は鴨肉を使った茄子料理だったので、「しぎ焼き」と呼ばれるようになったそうです。

 「しぎ焼き」だけで食べていると、甘味噌の味がやや濃過ぎるようにも感じられますが、そこにお酒が加わると、「長珍」の持つ芳醇な甘味と焼き茄子の甘味がうまく同調し、そして甘味噌の味の濃さも丁度良いレベルまで引き下げてくれます。

 こちらは、お酒が料理を上手から包み込んで、より美味しくしてくれるような、そんな印象の組合せでした。


 ちなみに、このお酒は一升瓶サイズで購入した為、開栓後6日間にわたって毎晩呑んでいたのですが、初日は微発泡感があって活き活きとした印象だったものが、2日目以降からはお米の旨味がグングンと乗ってきて、日毎に濃厚になってゆく味の変化をタップリと愉しむことができました。

 今回の「長珍」のような、ポテンシャルが高い純米の無濾過生原酒は、開栓後すぐに呑み切ってしまうのではなく、冷蔵庫で保管しながら数日間にわたって呑んだ方が、より多彩な美味しさを堪能できるタイプのお酒だと思います。

【万齢 純米吟醸 うすにごり生原酒 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 小松酒造(佐賀県,松浦郡,相知町)

特定名称ほか 純米吟醸生原酒 超微発泡うすにごり

原料米 麹米「山田錦」(精米歩合 50%)

       掛米「雄町」 (精米歩合 50%)

酸度 1.3 アミノ酸度 ?

日本酒度 +2 アルコール度 16.7%

酒造年度 H23BY

夏バテに効く【癒し系のお酒】
 8月に入ってから東京では連日厳しい猛暑が続いており、お盆期間中の週末も最高気温が34℃を超える暑い日となりました。

 そんな「熱帯夜」の東京で、夏バテ気味の体を癒そうと選んだお酒がコレ、

 【万齢 純米吟醸 うすにごり生原酒】です。

 これは、佐賀県小松酒造「夏の酒」として醸した純米吟醸酒なのですが、通常の3段仕込みによる日本酒度「プラス8」のモロミを、そのままでは搾らずにもう1回4段目の仕込みを行い、敢えて日本酒度を「プラス2まで下げてから搾るという、チョット変わった造り方をしています。

 

 香りは、「砂糖の入ったミルクティーを想わせる香りや、「黄色りんご」のような果実の香りがあり、「ほんのり甘くミルキーで、穏やかで優しい香り」が感じられます。

 口当りは強めで、滑らかな甘味と割としっかりとした酸,そしてやや濃厚な旨味が口に広がり、僅かながら苦味もあります。

 味の余韻は比較的長く、後口には心地良い甘味や旨味と共に程好い酸も感じられ、そして最後はドライな印象でフィニッシュします。 
 ボリューム感も十分にあり、
「コクのあるミルキーな飲み口で、癒されるような甘味と後口のドライなキレが共存しているユニークな味わい」のお酒でした。


 今回はこのお酒の「癒し系の甘味」とのバランスを考えて、やや塩気の強い「酒の肴」を2品用意してみました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず1品目【鮭の寒風干しです。
 これは、塩漬けにした鮭を寒風に干して熟成させたもので、軽く炙ってから味わってみると、強めの塩味の中に鮭本来の濃い味わいが感じられ、そのまま「おにぎりの
具」にして食べたくなってしまいます。

 お酒と合わせてみると、「万齢」の優しい甘味が「寒風干し」の塩味を丁度良い加減にマイルドにし、そしてこのお酒の持つミルキーさと後口のドライ感という個性も、そのまま消えずに残ってゆきます。

 こんなタイプの「ミルキー系のにごり酒」と、魚介を塩漬けにして熟成させた「酒の肴」とは、全般的に相性が良いと言える組合せだと思われます。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いて2品目
【フォンティナです。
 これはデパ地下のチーズ売り場で、「セミハードタイプで塩気が強いもの」というリクエストを出して、売り場のスタッフに選んでもらったもので、イタリアを代表する「山のチーズ」の一つです。

 ウォッシュタイプのようなややクセのある匂いで、食感はしなやかで弾力があり、「山のチーズ」特有の凝縮された旨味と塩味がありますが、「鮭の寒風干し」を食べた後のせいか、思っていたほど塩気は強く感じられません。

 「万齢」と合わせてみると、このお酒のコクのある旨味と「フォンティナ」の濃厚な旨味が結び付いて、相性としては決して悪くないのですが、「万齢」の癒し系の甘味にすっぽりと包まれて、このチーズのマイルドな個性がやや消えてし■【利き酒師世界一】のひとり呑み■ まうような印象も受けました。

 このタイプのお酒には、もう少し「個性の強いチーズ」を合わせた方がベターなのかもしれません。

 ちなみに、この「万齢」の蔵元では今回の「夏の酒」のように、「春の酒」「秋の酒」「冬の酒」というサブタイトルを付けて、それぞれの季節に相応しいスペックのお酒を季節限定で醸造しています。

 次の「秋の酒」が一体どんなスペックで登場してくるのか、今からとても楽しみですね。

【真澄 スパークリング 純米酒 BRUT】 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 宮坂醸造(長野県,諏訪市,元町)

特定名称ほか 純米酒 瓶内二次醗酵

原料米 長野県産「美山錦」(精米歩合 70%) 

酸度 6.2 アミノ酸度 1.8

日本酒度 -14! アルコール度 12.0%

酒造年度 H20BY

純米酒版の【シャンパーニュ】

 8月最初の日曜日の東京は、最高気温が34℃となった中で雨が断続的に降り続き、とても蒸し暑い1日となりました。

 そんな鬱陶しい暑さを吹き飛ばそうと選んだ一本がコレ
 【真澄 スパークリング純米酒 BRUT】です。

 これは長野の宮坂醸造が、「リンゴ酸多酸系酵母」で醸した純米酒を「瓶内二次醗酵」させてから1年半以上熟成し、さらに1ヶ月かけて瓶を少しずつ回転させて瓶口に集めた「澱(オリ)」を、マイナス20℃の「不凍液」に漬けて凍らせて取り除き、その作業によって目減りした分を同じお酒で補充するという、フランスの「シャンパーニュ」とほとんど同じ製造方法で造った「スパークリング日本酒」で、巷に多く見られる「活性にごり酒」と呼ばれるものとは、明らかに造りに対する「本気度」が違うお酒です。(その分値段も750mlで5250円と違いますが…)


 しっかりと冷やしてからワイングラスに注いでみると、泡立ちは非常にきめ細かくて色調もまさに「シャンパンゴールド」です。
 香りのトーンは中程度で、「熟したアプリコット」のような果実の香りや、「クロワッサン」を想わせるような醗酵に由来する香りが感じられます。

 口当りは強めで、ほんのりとした甘味と鋭角的な酸,そして程好くコクのある旨味が、見事にバランスを保ちながら溌剌とした発泡感と共に口に広がってゆきます。

 含み香は中程度で、後口は心地良い炭酸ガスの刺激を残しつつフェードアウトしてゆき、余韻には僅かに苦味も感じられます。

 コクやボリューム感もちゃんとあり、「きめ細かな発泡感を伴ったドライな飲み口と、優雅さと複雑性のある味わいが愉しめる、リッチな印象のお酒」で、正直言って日本酒を呑んでいるという感覚は全くありませんでした。


 見た目も香りも味わいも限りなくシャンパーニュに近いお酒なので、食前酒~オードブル,そして食中酒として和食を含めて幅広く様々な料理と合うと思われましたが、
 まずは【飛子(とびこ)の醤油漬けから試してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■
 「シャンパーニュ」と言えば、ソムリエの世界では「キャビア」(チョウザメ卵の塩漬け)を合わせるのが定番なのですが、さすがに高価過ぎて手が出ないので、今回は同じ魚卵である「とびこ」(飛魚の卵)の醤油漬けで我慢することとしました。

 そのままスプーンですくって食べてみると、口の中で「とびこ」がプチプチと弾け、カツオだしが効いたやや濃い目の醤油味が口に広がります。
 そこにすかさず「真澄スパークリング」を合わせてみると、「とびこ」のカツオだしの風味と、このお酒の程好くコクのある旨味がすんなりと結び付き、そして「とびこ」が弾ける食感と炭酸ガスの刺激も面白いほどに良くマッチします。

 おそらくフランスの「シャンパーニュ」と合わせてみても、「キャビア」と遜色ない?位に良い相性を見せてくれるのではないかと思われました。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【石鯛のお造りです。

 「石鯛」は夏が旬の魚で、めったに釣れないことから釣り人の間では「磯の王者」などとも呼ばれています。

 身が程好く締まっていて弾力があり、噛み締めていると鯛独特の旨味が滲み出して来ます。

 今回はこのお酒の個性を意識して、「わさび醤油」ではなく「もみじオロシ」「すだちポン酢」で合わせてみましたが、唐辛子の辛さやすだちの酸っぱさに対しても、「真澄スパークリング」の味わいの優雅なバランスは全く崩れることがなく、余韻には「石鯛」の旨味もしっかりと戻ってきます。

 この「スパークリング純米酒」の完成度の高さを、改めて感じさせてくれるような組合せでした。

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  余談になりますが、この「真澄スパークリング」には、右の写真のような「ZOLK」と言う名前のオーストラリア製のリユース式キャップが使われています。

 一般的なシャンパーニュのコルク栓は、針金の留め具を外して一度栓を抜いてしまうと、コルクの下部が広がって再び栓をすることが出来なくなってしまいますが、この新型のキャップは針金の代わりに螺旋状のバンドを瓶に巻き付けて固定してあり、それを外して抜栓した後も簡単に何度でも繰り返し栓をすることができるという優れ物です。

 もしからしたら近い将来、ワインの世界から「コルク栓」というものが無くなってしまう日が来るかもしれませんね。

【ずいかん 純米酒 山田錦 中汲み生】 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 山岡酒造(広島県,三次市,甲奴町)

特定名称ほか 純米酒 中汲み生

原料米 庄原産「山田錦」(精米歩合 70%) 

酸度 1.7 アミノ酸度 ?

日本酒度 +13! アルコール度 16-17%

酒造年度 H22BY

【日本酒版シャトー】の旨辛酒

  7月の終わりの週末は、前線の影響により新潟県や福島県で記録的な豪雨となり、河川の増水による堤防の決壊や氾濫が発生し各地に大きな被害をもたらしました。

 東京でも雨が降ったり止んだりの空模様となりましたが、そんな週末の夜に選んだ一本は、
 【ずいかん 純米酒 山田錦 中汲み生】です。

 これは、標高350mの山中にある広島県の甲奴町で、米作りと酒造りの両方を一貫して行っている山岡酒造が、庄原産「山田錦」を精米歩合70%の低精米に抑えて醸した純米の生酒で、モロミの搾り始めと搾り終わりの中間の「中汲み」の部分だけを瓶詰めしたものです

 香りは控えめで、「大根おろしのような菜類の香りや、「わらびの水煮」のような山菜の香りがあり、「穏やかで落ち着きがあり、やや旨味を想わせる香り」が感じられます。

 口当りはやや強めで、スッキリとした純粋な甘味とドライに主張する酸,そして濃厚でコクのある旨味が、味わい全体に力強さと厚みをもたらしています。

 後口はしっかりとしていて、酸がスパッと切った後で舌の上に旨味の余韻だけが残ります。

 スペック的には日本酒度+13の超辛口なのですが、ただ辛いだけでは無く「濃醇でコクのあるお米の旨味と後口のドライなキレの双方が愉しめる、【旨辛スッキリ】な味わい」のお酒でした。


 このお酒の持つ「夏酒」的な印象に合わせて、夏向けの和惣菜を2品用意してみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  まず
【ハタハタの南蛮漬けです。
 南蛮漬けと言えば、「小鯵」「わかさぎ」etc.の魚が使われるのが一般的ですが、今回は「ハタハタ」を使った南蛮漬けを選んでみました。

 ハタハタの淡白な身に、甘酸っぱい「南蛮酢」が良く浸み込んでいて、骨まで柔らかくなっていてそのまま食べられます。

 「瑞冠」と合わせてみると、このお酒の力強さが料理に対してやや勝ってしまう部分もありますが、その一方で南蛮酢から苦味を引き出すこともなく、口の中で両方の味わいがスッキリとまとまってゆきます。

 相性的には、と言っても良いと思われる組合せでした。

 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては【山芋豆腐の冷奴です。
 これは、山芋のトロロ
を練り込んだ「おぼろ豆腐」なのですが、山芋の旨味と豆腐のほのかな甘味が共に感じられ
て、ワサビ醤油ともなかなか良く合います。

 お酒と合わせてみると、「瑞冠」のコクのある旨味と「山芋豆腐」の優しい旨味がうまく同調し、口の中で2種類の旨味がそれぞれ膨らんでゆきます。

 「絹ごし豆腐」を使ったシンプルな冷奴では、このお酒の濃醇な旨味に圧倒されてしまうと思われたので、今回この変り種の「山芋豆腐」を選んだのは正解でした。

 

 話は全く変わりますが、フランスのボルドー地方では、自社の畑で採れたブドウでワインを醸造し瓶詰めしているワイナリーは、一般的には「シャトー」と呼ばれています。

 冒頭でも述べたように、この山岡酒造も蔵の裏手にある自社水田で作った酒米で、個性的なお酒を手造りで少量ずつ醸しており、そういった意味ではまさに「日本酒版シャトー」と呼ばれるのに相応しい蔵元だと思います。

【鏡山 純米吟醸 無濾過生原酒 山田錦】 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 小江戸鏡山酒造(埼玉県,川越市,仲町)

特定名称ほか 純米大吟醸原酒(酵母FFC6)

原料米 「山田錦」(精米歩合 50%) 

酸度 ? アミノ酸度 ?

日本酒度 非公開 アルコール度 17-18%

酒造年度 H22BY

【新酵母!FFC6】のテスト酒

  台風6号の通過後、南下した「オホーツク海高気圧」の影響により、東京でも朝晩の最低気温が18℃まで下がり、夏の真っ只中だというのに涼しい(寒い?!)日が数日続きました。

 そんな週末の夜に選んだのは、 
 【鏡山 純米吟醸 無濾過生原酒 山田錦】です。

 これは、埼玉県の小江戸鏡山酒造「山田錦」を半分まで磨き、新開発の酵母「埼玉FFC6(仮名)」を使って醸した「テスト版」の純米大吟醸酒で、本来であれば酵母の特性を調べた後で、地元用のお酒にブレンドしてしまう予定だったものを、その話を耳にした新潟の酒屋が特別に仕入れて限定販売したものです。 (その為、埼玉の蔵元のお酒が新潟の酒屋でしか買えないという、ちょっと不思議な形になっています。)


 香りのトーンは強くて、「熟したパイナップルのような果実の香りや、「ラベンダー」を想わせるフローラルな香りがあり、ひと昔前の「吟醸酒ブーム」の頃を思い出させるような、「華やかで甘く、やや派手なな印象の吟醸香」が感じられます。

 口に含むと、フルーティーで芳醇な甘味が華やかな香りと共に強く主張し、それをやや軽やかな酸と滑らかな旨味がフォローしてゆきます。

 含み香にもしっかりと吟醸香があり、余韻は比較的短くて後口にはキレの良さが感じられます。

 コクやボリューム感は程好くあり、「ゴージャスなフレーバーが印象的な、果実味のあるスウィーティーな味わい」のお酒でした。


 このお酒の派手な香味に対抗できるように、

 まず【カツオの飯盗(はんとう)を合わせてみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  有名な「カツオの酒盗(しゅとう)」は、カツオの「内臓」を塩漬けにして長期熟成させたものですが、この「飯盗(はんとう)」は、内臓の中でも「胃(ジキ)」の部分のみを選んで原料にして造られたものです。

 弾力のある歯応えで、強めの塩味の中にほのかな甘味があり、思わず熱々の「出し茶漬け」の上に乗せて食べたくなってしまいます。

 「鏡山」と合わせてみると、このお酒のフルーツジュースのような甘味と「飯盗」の塩味がぶつかりあって、互いにに程好いレベルまでトーンダウンしてゆきます。

 「鏡山」のやや厚化粧な香味をスッピンに戻してくれるような、そんな効果をもたらしてくれた「酒肴」でした。


■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  続いては「飯盗」と同じ効果を狙って

 【アーラ・ブルー】を試してみました。
 これはデンマーク産のブルーチーズで、
青カビの刺激は中程度なのですが、やや顔をしかめるほどに強い塩味があります。

 「ゴルゴンゾーラ」etc.に比べると旨味も控えめで、チーズだけで食べ続けていると、正直言って「塩辛過ぎる」という印象があります。

 そこに「鏡山」を流し込んでみると、このお酒の果実味のある甘味によって「アーラ・ブルー」の強い塩味が一気にニュートラルになり、余韻には旨味とコクだけが残りますが、その一方で「鏡山」の味わいは、残念ながらほとんど消えてしまいます。

 ここまで塩味の強いタイプのブルーチーズは、直接日本酒やワインに合わせるよりも、「ディップ」にしたり料理のソースetc.に使う方が無難なのかも知れません。


 さて、この新開発の酵母「FFC6」で醸した「テスト酒」なのですが、華やかな吟醸香が前面に強く出てきている為、「食中酒」として料理を楽しみながら長く呑み続けていると、やや香りが鼻に付いてきてしまうようにも感じられます。 
 「FFC6」の持つ特性をよりいっそう活かす為に、このお酒が次の酒造年度以降どんなスペックに変更されて再登場してくるのか、今後も引き続き期待しながら注目してゆきたいと思っています。

【上喜元 純米大吟醸 弁慶】 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  このお酒のデータは…
蔵元 酒田酒造(山形県,酒田市,日吉町)

特定名称ほか 純米大吟醸酒 原酒 氷温熟成

原料米 「弁慶」(精米歩合 40%) 

酸度 1.5 アミノ酸度 ?

日本酒度 +3 アルコール度 16.5%

酒造年度 H22BY

米の魔術師が醸す【弁慶】の酒

 7月18日の「海の日」は、前日の夜から一晩中呑み続けたまま、明け方のワールドカップ女子サッカー決勝戦のBS放送にハマッてしまい、目が覚めた時は既に昼過ぎとなっていました。

 そんな寝不足気味の祝日の夜に、「なでしこジャパン」優勝の余韻に浸りながら呑んだ一本は、
 【上喜元 純米大吟醸 弁慶】です。

 これは山形の酒田酒造が、幻の酒米と呼ばれる「弁慶」を40%まで磨いて醸した純米大吟醸の原酒で、蔵元で半年間氷温熟成させてから出荷されたものです

 この「弁慶」というお米ですが、はっきりとしたルーツは判っておらず、戦前は兵庫県一帯で栽培されていたのですが、その後他の酒米に取って代わられ長い間途絶えていて、近年になってからようやく復刻栽培されたという酒米です。

 香りは、「マスクメロンを想わせる果実の香りや、「サルビア」のような花の蜜の香りがあり、「ほんのり甘く華やかで、気品のある香り」といった印象です。

 口当りは滑らかで、上品な甘味とメリハリのある酸,そしてきめ細かな旨味が、ごく自然に優しく調和していて、原酒としての味の密度の濃さもちゃんと感じられます。

 後口はキレが良く余韻には僅かに苦味もあり、「飲み口は滑らかながら、後からしっかりとした味の力強さが感じられる、程好く呑み応えのある味わい」のお酒でした。

 このお酒には、季節を感じさせる惣菜を2品合わせてみました。
■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  1品目は
【長茄子の揚げ浸しです。
 「長茄子」は代表的な夏野菜で、素揚げにして出し汁に浸した「揚げ浸し」は夏の定番料理の一つです。

 今回購入してきたものは、長茄子に「蛇腹」のような細かな切り込みがびっしりと入っており、そこにやや甘口の出し汁がタップリと浸み込んでいて、口の中で柔らかくとろけてゆきます。 

 「弁慶」と合わせてみると、料理とお酒の味わいの濃さとボリューム感のレベルが丁度良く合い、そしてどちらの味の個性もそのまま残しながら口の中で絡まり合ってゆきます。

 程好釣り合いの取れた、仲の良い者同士といった印象の組合せでした。 

 

■【利き酒師世界一】のひとり呑み■  2品目は【鰻の白醤油焼き】です。

 「土用の丑」の日を前にした祝日ということもあり、近所の食品スーパーは「鰻の蒲焼」のオンパレードでしたが、「蒲焼き」ではこのタイプのお酒に対してはタレの味が強過ぎると思われたので、今回は「白醤油焼き」をセレクトしてみました。

 思っていたよりも淡白な味わいだったので、アクセントとして「柚子胡椒」を添えて「弁慶」と合わせてみると、このお酒の程好く呑み応えのある味わいが鰻の脂を口の中でうまく流し、お酒の方がやや上手になりながら「白醤油焼き」を包み込んでゆきます。

 また「柚子胡椒」の柚子の風味やピリリとした辛味に対しても、このお酒は全く違和感がありませんでした。

 ちなみに酒田酒造では、「弁慶」と同様に「幻の酒米」と呼ばれている「神力」,「穀良都」,「白玉」,「山田穂」etc.を含め、何と20種類以上もの酒米を使って酒造りを行っています。
 この蔵元が「酒米の魔術師」と呼ばれている理由が、今回この「上喜元 純米大吟醸 弁慶」を呑んでみてとても良く判ったような気がします。