心技体 / ダウト | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

心技体(初回限定吟盤)(DVD付)/ダウト

¥4,100
Amazon.co.jp

1. 心技体
2. OH! MATSURI MONSTER
3. ダァァティィ・ロマンチッカァァ
4. 53
5. 恋ができない
6. 綺麗事
7. 華麗なる外道
8. 傷心パラドックス
9. TAXI
10. おねだり
11. 国立競技党
12. SM

 ex-xTRiPxのDr.直人さんが加入し、新体制となったダウト。
オリジナルとしては5枚目となるフルアルバムが届けられました。

前作から約3年ぶりとなった本作。
Vo.幸樹さんは、その間に花見桜幸樹名義でのソロ活動を行う等、相応な充電期間があったわけですが、音楽性の幅は確かに広がったようですね。

「OH! MATSURI MONSTER」のように、和の要素を優美な方向性ではなく、お祭りの雑多なイメージで切り取った彼らならではの視点があったり、ジャジーでシックに仕上げた「華麗なる外道」や、疾走感のあるバンドサウンドに哀愁歌謡を絡めた「傷心パラドックス」など、従来の彼らの延長線上の楽曲は、しっかりと進化させてきた。
先行シングルとなった「恋ができない」も、その枠組みの中で、シングル曲らしい存在感を放っています。

一方で、これまでのダウトだったらやらなかっただろうな、という楽曲も飛び出し始めた。
新加入の直人さんが作曲を担当しているのも、その一因のひとつ。
特に、大人びた「TAXI」は、ダンス系のJ-POPに似合いそうなアレンジになっており、遂にこっち方面に踏み込んできたか、と。
思った以上に違和感がないのは、幸樹さんのソロにより、バンドサウンドではない音楽にも挑戦した経験が、ここに還元されているからかもしれないな。

それに引き摺られてか、序盤の彼ららしさの踏襲から一転、終盤ですべてひっくり返すような新鮮なアプローチの数々。
打ち込み中心で構成されたミステリアスな「おねだり」、全編英語で歌われるサイバーな「国立競技党」と、別のバンドじゃないよな、と疑ってしまうレベルでの意外性を見せてきました。

そして、最後に持ってきたのはMVが制作されたリードトラック、「SM」。
タイトルから激しい暴れ曲を想像していたのですが、歌詞から察するに"シングルマザー"ということのようです。
複雑な構成であるも、それをドラマティックに感動的に聴かせる切ないバラードとなっており、最後まで新機軸を見せ続けて締めくくるという天邪鬼っぷり。
だが、こういう曲ができるようになったというのは、間違いなく成長だよなぁ。

進化と呼ぶには、雑多な成分が入りすぎて、判断に迷うところ。
後半が変化球を立て続けに放り込んで、王道への回帰をしないまま終わるというのは、なかなかの問題作と呼んでもおかしくはないでしょう。
もっとも、この雑食性こそ彼らの魅力。
安定感という隠れ蓑で誤魔化して置きに行くのではなく、次のステップへ進むのだという強い意識をはっきり表明しているようにも受け取れるのですよ。

ともすればマンネリ化しやすい音楽性でもあるので、変化への舵を切るには、この心機一転のタイミングは絶好のチャンス。
この冒険心を、後に英断であったという評価に変えるべく、彼らには右肩上がりの結果を出してほしいものです。

<過去のダウトに関するレビュー>
歌舞伎デスコ
high collar
MUSIC NIPPON
CARNIVAL浮世
登竜門