楽曲たち / 楽團Highスクール | 安眠妨害水族館

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楽曲たち/楽團Highスクール


1.リセットスタート
2.depend
3.キズナミライ
4.涙桜
5.G★H★S

ex-江戸川パラドクスの清人さんが、夢戯名義で在籍していた楽團Highスクールのミニアルバム。
ソロプロジェクトであった楽團孤独から、コンセプトと形態をチェンジして、バンド仕様になったという位置づけなのでしょうか。

まず、このバンドの特殊性を表すのが、その編成。
チームが構成されていて、ライブのたびに、演奏メンバーが総入れ替えとなる仕組み。
認識しているだけで、チームY、J、S、W、Z、Rが存在しているようです。
学園モノを意識したコンセプト作りと、「楽曲たち」というタイトルのオマージュっぷりからもわかるとおり、AKB48を参考にしているとはいえ、ヴィジュアル系でそれをやるとは斬新でした。

また、コンセプトがはっきりしているため、音楽性としても、清人さんが在籍した他のバンドとは毛色も違っている。
CELLTではコテコテ路線でしたが、このバンドの前後に活動していた楽團孤独、江戸川パラドクスが、ともに昭和歌謡系だったため、楽團Highスクールも歌謡曲路線なのかと思いきや、爽やかなソフビ路線。
アイドル風のキャラ作りだったようで、近年のアイドルが、割とヴィジュアル系との親和性が高まってきたこともあり、結果として、良い感じに懐かしいセツナロックに仕上がっています。
もともと、メロディの乗せ方に定評のあるボーカリストだっただけに、こういう引き出しも持っているのですね。

アップテンポでキャッチーさのある「リセットスタート」は、まさに王道ソフビ。
ギターの音作りがなんとも不安なのがもったいないのですが、タイトル通り、ソロプロジェクト時代のじめじめしたイメージをリセットし、新たなスタートを切るようなイメージです。
続く、「depend」は、イントロから切なさ炸裂で、これはツボだなぁ。
流れるようなメロディに、徐々に感情を募らせていくような歌声。
大きく盛り上がりはしないけれど、いぶし銀の輝き。

中盤に配置された「キズナミライ」も、シングルに出来そうな単純に聴きやすいナンバー。
サビで、裏拍になるドラムのリズムが気持ち良い。
「涙桜」では、この作品中、随所で光っている切なさが、前面に押し出されています。
この手のコード進行、この手の歌メロを、あえてアッパーなリズムに重ねてくる手法は、わかっていても耳に残る。

ラストに持ってきた「G★H★S」は、完全にアイドル路線。
本作においても異質ではあるのだけれど、まぁ、コンセプトが学園モノなわけだし、わかりやすくAKB48をオマージュしたこういう曲も、らしいといえばらしいでしょうか。
自己紹介的な楽曲だし、ポップさは一番。
ネタ要素は強いけれど、やっぱりどこか青春チックな淡さ、初々しさがあって、これはこれで好きだったり。

残念なのは、これが会場限定作品だったこと。
せっかく名作を作ったのに、解散してしまった今となっては、気になっても手に入れる手段がなくなってしまった。
この音源に限らず、楽團孤独としての活動以降、清人さんのバンドは、流通音源をほとんどリリースせず、会場限定作品を小出しにする傾向がありましたよね。
本当にもったいない。

演奏力はあまり期待できないし、音質もチープ。
だけど、ハズレ曲がない打率の高さは魅力でした。
清人さんは、現在、次のバンドを準備中なのかと思いますが、今度こそ、流通作品を出さざるを得ないくらい、長続きさせてほしいものです。