昨日の夜、天気予報を見た時からそんな予感はしていた。
毎朝の待ち合わせ場所である駅のベンチに行くと、先に着いていた彼女は俯いて座っていた。
「美羽、おはよう。大丈夫?」
「おはよ……。大丈夫……。」
明らかに大丈夫ではなさそうな彼女が気だるそうに立ち上がるのを肩を押えて座らせる。
「今日はタクシー呼ぼう。学校までくらいのお金なら持ってるから。」
「ごめん……。」
正直このまま家に帰らせたかったけど、自分に厳しい彼女は休むことをすごく嫌がる。
タクシーの窓にもたれ掛かるように座る彼女は無意識か私の手を握ってきて、少しでも彼女の痛みが和らぐように握り返した。
他の生徒の目に必要以上に晒されないように裏門で下ろしてもらう。階段を上って教室に着いた頃には彼女はもうへろへろ。
座るなり机に突っ伏した彼女の頭を私も自分の席に座って撫でる。私の席の真後ろが美羽の席。一生席替えしたくないよね。
「美青の手、きもちいい……。」
「そう?」
特にこれといった特徴がない手だけど彼女が安らぐならいい。
「薬は飲んだ?」
「……飲んでない。」
「え、飲みなよ!」
苦いもん……。と頬をふくらませる彼女を不覚にも可愛らしいと思ってしまった。
ペットボトルの蓋を開けてくれたら飲むという彼女の言葉を信じて持っていた水のペットボトルを開けて渡すと、渋々と言った顔で彼女は薬を飲み込んだ。
「苦い……。」
「美羽ちゃん、よく頑張ったね〜。」
「子供扱いすんな。」
口調は強いけど、私の手を払い除けない当たり満更でもないらしい。どうか彼女の頭の痛みがどっかに行きますように。