編集者・中里圭太 第4話「中里圭太テレビ局で叱られる」 | 占星術小説家@酒井日香の占い死ね死ねブログ

明日から3月ですね。。。( ´艸`)

 

 

今日は子どもの学校でPTAの役員決め

がありましたが酒井さんは当てられないよう

神に祈り、じっと下を向いていました。。。(^_^;)

 

 

 

そーしたら全員同じ魂胆だったらしく誰一人

PTAを引き受けないので、なんとまさかの

再試合決定。。。☆(;^_^A

 

 

ここで決まらないとくじ引き決着になるそうな。。。(汗)

 

 

 

みなさんPTAは

引き受けましょうね。。。(;´▽`A``

(※注、人のこと言えない)

 

↑ 中里が手掛けた芸能人本「超絶愛」にねつ造疑惑が!! 

   赤坂テレビに呼び出された中里。お説教を喰らうのだ  

   が。。。

 

  (※注、 ちなみにイメージ画像はフジテレビさんですが

  作品には一切関係ありません。。。)

 

 

 

 

                       「第4話」

 

 

 さて、桃源舎からタクシーを飛ばして、赤坂にある「テレビ赤坂」に向かった一条徹と中里圭太であった。

 つかつかと正面玄関を通ろうとすると、一条は警備員に止められた。

「あ、ダメだよあんたたち! 入館許可書か、制作部のスタッフ同伴か、そういうのでないとっ!!」

 止められた一条は警備員を睨むと、自分の顔を自分で指差した。現首相ともツーカーで、放送倫理協会の役員も行い、現代のナベツネを自称している一条徹は、顔パスでテレビ局に入れないのが癪に障ったらしい。チッと舌打ちしてものすごい不快丸出しの、傲慢な表情をしたのが中里に見えた。

「あんた、俺が誰だかわかんねぇのかい。テレビ局の警備員失格だな!」

 一条は胸に輝く桃源舎の徽章、桃のマークのバッジを警備員に示したが、警備員は誰であろうと容赦ない様子で言い返した。

「一条さんだからってダメ! ちゃんと局内の誰かに迎えに来てもらってよ」

「名城常務に呼ばれて来たんだぞ! 呼び出したのは名城さんだっ!」

 一条がそういうと、警備員は急に態度を変えた。

「え? 名城常務に? ちょっとお待ちください」

 そういうと警備員は、受付カウンター内にある内線電話で役員秘書室を呼び出すと、名城常務に取り次ぐよう言った。

「あの警備員、一条さんを一喝するとは、ただ者じゃないですね」

 中里が、けしからん、という感じで言うと、一条は苦笑いをした。

「まぁ、赤坂テレビでは、俺がこういう扱いなのも仕方がないさ。赤坂テレビの学閥の中心は田稲早大学だから」

「一条さんは応慶大学出身ですもんね」

「そういうこと。メディアで応慶閥が強いのはテレビ夕日と、夕日新聞だ。どっちもプロ市民御用達、左翼メディアと揶揄やゆされているがな」

「そういうテレビ赤坂は国立大派閥で、お役人的ですよねぇ」

「そうだ。だからギャグが通じない。今回のことも、実質百目ハゲ太郎さんとやしろたかにんの事務所間での、軽いギャグみたいなものなのに、それをこうして尋問しようってんだから、赤坂テレビはメディアとしてはカッチカチの優等生で、面白くない。メディアなんてぇのはいかに刺激的で、面白いか。それに尽きるのだ。覚えておくんだぞ中里」

「……一条語録に書いてありましたねそういえば」

「……今回のことも、顔の利くテレビ夕日でやればよかったんだろうが、スタジオを押さえられたのがテレビ赤坂だけだったからなぁ……」

 中里と一条が、手持ち無沙汰に正面玄関で立ち話をしていると、やがて名城常務の女性秘書が現れて、一条と中里を案内した。

 通されたのは名城常務の執務室であった。事情聴取程度ならば局内のカフェで済むのだろうが、直々に名城常務の部屋へ通されるということは、かなりの大事なのだろう。

 中里はさきほど、一条にメンタル注入されたので、表面上は平静を装っているようだったが、皮膚はすっかり土気色だった。どうも気が弱いのであるこの中里圭太は-ー。向かい風こそ歓迎しろと、日々うそぶいている一条にとっては、そこがまだまた中里の甘さであった。

 一条は、中里に気合を入れようと、周囲の人間に気付かれぬように中里を小突いたが、中里はそれでも口角だけじっと結んで、土気色のままだった。

 役員室へ入ると、ソファを勧める秘書には従わず、中里は入口に突っ立ったままだ。一条は小声で(いいからこっちへ来い)と中里を促した。一条の手招きに気付いた中里は、秘書と一条の間でおもわずおろおろしたが、一条に従う癖がついているため、秘書の冷たい視線を浴びながらも一条の隣に座った。

 一条が小声で中里に囁いた。

「いいか、自分から謝るなよ。謝罪など、相手の言い分を聞いたあとだ。絶対に先に頭を下げるな」

 そういわれた中里は、はぁ、と軽くうなづいたが、やはり緊張感でがちがちである。やがて役員室の奥のプライベートルームから、名城常務が現れると、中里は一条にうなづいたのも忘れて飛び上がり、一条を差し置いて米搗きバッタよろしく名城にぺこぺこ頭を下げた。一条はそれを見て(バカっ!! やめろ!!)と小声で指示を出すと、中里を強く引っ張った。

(バカ、先に謝ったら自分の落ち度を認めたことになるぞっ!! それでもいいのかっ!!)

 一条の囁きで、やっと動きが止まった中里であった。一条は名城常務に「すみません、ちょっと気が動転しておりまして-ー」というと、いいからソファに座れと中里に指差した。名城はあきれてものが言えない。怒っている自分を一条にアピールしたかったのに、先制攻撃をされた気分である。

「私はまだ、あんたたちに座ってよいとは言っていないがね一条さん」

 それだけ言うのがやっとであった。一条はいたずらっ子のように笑うと後ろ頭を掻いた。

「すみません。立ったままだとホラ、この通りこの中里は大男でしょ? 身長が189センチもあるものですから、名城常務のお話を伺いに来たのに、常務を見下ろすなど失礼千万。それでもいいなら立っておりますが――」

「うっ……」

 名城はぐうの音も出なかった。いきなりの一条ペースである。本当に一条徹は憎たらしいが、ある種の天才であることは間違いない気がした。

「わ、わかった。座ってよろしい中里くん」

「は、はぁ……」


 おずおずと、一条の隣のソファに腰かけた中里であった。やがて先ほどの女性秘書が二人に茶を運んできた。一呼吸おいて告げられる、名城常務の言葉--。

「ええ?! やしろたかにんさんの娘さんが、桃源舎に告訴状を??」

 中里は、青ざめて思わず叫んだ。

「そういう情報が昨日、うちの系列の、大阪の制作会社から入ってきた。たかにんさんの元マネージャーもおたくを訴えると……」

「そ、そんな……」

 中里の顔は土気色を通り越して、すっかり真っ白になっていた。霊魂が抜けてしまったかのようだ。

「それで、担当編集の中里くん来てもらったのはほかでもない。あの、百目ハゲ太郎さんが書いた本――、“超絶愛”の内容に、本当に間違いはないのか? 桃源舎に落ち度はなかったのか? それが聞きたいんだ」

 名城常務はそういうと、怒りを含んだ声で二人をめつけた。中里がチラリと見た一条は、涼しい顔をしていた。余裕タップリなその横顔が、中里をますます緊張させた。

「そ、その本に関しましては――」

 中里が弁明しようとすると、一条が静止させた。

「桃源舎は私の会社です。編集発行人は私です。すべての責任はこの私、一条徹にあります。この中里は、百目先生の原稿を信頼して、そのまま本にしただけ――。それをよくよく精査しなかった私に、落ち度があります」

「じゃあ、ねつ造本だったことを認めるのかね?」

 名城常務が言うと、一条はいいえ、と答えた。

「ねつ造本だったとは、思いません」

「じゃあ真実なのか?」

「そうも思いません」

「じゃあ、なぜネットでこんなに騒がれて、本に描かれた当事者たちも怒っている? 今朝のツイッターでは後妻・モモさんが重婚していた証拠のブログまでツイートされて、赤坂テレビのコールセンターは苦情電話が鳴りやまないんだぞ」

「……確かに、情報が錯そうしていて、ネットではさまざまな憶測が飛び交っていますが、まずは百目さんに話を聞くのが先です。それに、訴えられたとしても、司法判断に任せる以外にできることは何もありません」

 一条は、名城常務にきっぱり言った。

「僕はきみに聞いてるんじゃない、一条さん。担当編集の人に聞いてるんだ」

 どうなんだね? と、名城常務に詰め寄られた中里は、あわあわと口ごもった。

 だって天下の大ベストセラー作家、百目ハゲ太郎ですよ? 原稿にツッコミでも入れて、機嫌を損ねたらどうするんですかッ!! 百目先生の原稿にケチをつけるなんて、一介のヒラ編集員にできるわけないじゃないですか! 僕を誰だと思っているんです!! 志同社大学文学サークルの中では「へっぽこ中里」で通っているほどのホントはチキンなんですよ!! それを知りながら百目さんの担当編集にして、野放しにした一条さんの監督不行き届きです――!!

 と、心の中で言いかけて中里は、それは卑怯だ、と自分で言い訳を飲み込んだ。

 確かに、百目ハゲ太郎だろうが誰だろうが、編集者と出版人には原稿を精査する義務がある。ましてや自分はあの本の担当だった。DTPをしたのも自分だし、文章校正したのも自分だし、カバーデザインプランや本のオビ文を考えたのも自分である。一条は単に、編集長として奥付に名前を入れる役目に過ぎない。自分が全面的に悪いのだ。

「す……、すみませんでした……。私が、百目先生に変な遠慮などせず、もっとしっかり原稿の内容について精査すべきでした。誠に申し訳ありません」

 中里は、下座のソファに腰かけたまま、女性のようにピタリと膝を閉じ、両手をその上に載せて深々と名城常務に頭を下げた。

「まぁ、謝ってもらったってねぇ……? それよりも心配なのは、うちまでやしろたかにんさんの娘さんや、元弟子の方から訴えられないかどうかだよ。あんたたち出版屋は、どんなことでも話題になれば本が売れるからいいだろうけど、テレビ屋はね、マスメディアで、責任がはるかに重いから。BPOに審議でもされたら、うちが持ってる制作会社の株価が値崩れしかねない」

 それを聞いた中里は、なんだ保身かよとがっかりした。隣の一条が、落ち着き払って言った。

「それならばお任せください。すべては私と、百目さんの責任です。さっそく百目さんに事情聴取をかけます。詳しいことが分かり次第、常務にご連絡いたします。赤坂テレビにご迷惑がかかることだけは、絶対にさせませんから、どうぞご安心ください」

「……それならばいいが……。裁判は困るよ、裁判は。不祥事の責任はすべて、お宅ら桃源舎がかぶってくれ。いいね」

「わかりました」

 一条は深々と名城に頭を下げたが、中里は納得のいかない顔をしていた。一条はなぜ、こうも落ち着き払っているのだろう――。もしもこれで、裁判所から出版差し止め処分でも喰らったら大打撃ではないか。出版社などよりもはるかに事業規模の大きな自動車メーカーや、家電メーカーでさえ、リコールが原因で大きく資本的体力を消耗するというのに――。

 

(第五話に続く)