短編シリーズ人間のKUZU 「生き方のKUZU」その② | 占星術小説家@酒井日香の占い死ね死ねブログ

(その①から続き)





男B 「本に限らず、大衆に訴えることって矛盾してるよね」




男A 「どういうことだノリくん」




男B 「たとえば“謙虚に生きましょう”っていう理想を素晴らしいと思ったとして、

    大勢の人にわかってもらいたいと思ったとするだろ?」




男A 「うん」




男B 「でも大勢の人に訴えようとすると、結局は自己顕示ってことに

    なっちゃってさぁ、“謙虚”とはまるで正反対の本人の人生に

    なっちゃうわけだよ」




男A 「確かにな」




男B 「あらゆるコマーシャリズムはそうなんだ。“この商品はいい商品なんです”

    ってことをみんな宣伝するんだけど、そもそも“いい商品”なんだったらなぜ

    宣伝などする必要があるんだってことじゃねぇか。宣伝・広告なんていう

    概念自体がすでに自己矛盾なんだよ。それを世間の連中はありがたがって、

    テレビに出てる人間を一段上の特別な人間って思ったり、メディアに出ることが

    すごいことだという風潮が成り立ってる」




男A 「だとすると、俺がこの本と著者の矛盾した心を、どうにかして世間に訴えたいと

    思ってアマゾンとかに酷評レビューを書きこんだらさぁ……」




男B 「それも結局はウェブという“人目”にさらして、大勢の人間の共感が欲しいという

    エゴ丸出しの、あさましい行為ということになるな」





男A 「……ってことはさぁノリくん」




男B 「うん」




男A 「本当に謙虚な人っていうのは腹が立っても、思うことがあっても、

    政治に一過言あっても誰にも言わないし、くそつまんねぇ本を読んじゃっても

    黙ってやり過ごすことができる人間ってことか」




男B 「そうだよ。それが究極の美しい人生だ」




男A 「ましてや作家になりたいなんていうヤツは、あさましさの塊ってこと??」




男B 「当たり前じゃないか」




男A 「んじゃあブログやってるヤツっていうのは」




男B 「もうお話にならない」




男A 「ノリくんの論理でいくと当然そうなるよね……。はぁ……」




男B 「まさか、やりたいのかもっちゃん、ブログを」




男A 「うん。そんで人気ブログになって話題になって、そのまま作家デビュー

    できないかなって甘いこと考えてる」




男B 「そうしたら今の失業状態なんて、一気に解消されるのに、と」




男A 「うん。世の中は今、そういうこと考えてる人間が何人居るんだろうか」




男B 「少なくとも1000万人はいるだろうね」




男A 「1000万人……、その心は」




男B 「アメーバの会員数」




男A 「1000万人かぁ~……。そーゆうのが全員、ホントはあくせく

    働きたくなくて、自己顕示欲の塊で、ともすれば自分が有名人に

    なってカネ儲けまでしたいと考えてるってことか」




男B 「そう見て間違いないだろうと思う」




男A 「そんな人間ばっかりになっちゃったら……」




男B 「日本の産業、滅びるだろうね」




男A 「んじゃあ、それを一刻も早く人類に

    警告しなくちゃならないじゃないか」




男B 「そのためにまず、何をするべきだもっちゃん」




男A 「アメーバブログに会員登録」




男B 「違う。ハローワークに行くこと」















男A  

「えーーー?????? 

つまんなーい!!!」






(終)