Seventh World 高天原(タガマガハラ)の章

【共闘編①】

(悪魔………だと?)

突然現れた悪魔(サタナキア)を前にジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世は思考を巡らせる。

Seventh World(7つの世界)に君臨する種族の中でも最高峰に位置する二つの存在。

神(ゴッド)


悪魔(デビル)


神の一族に属する『天帝アマテラス』から話は聞いていた。

「この世界(7つの世界)には悪魔と呼ばれる種族が存在します。」

「悪魔………ですか?」

「そうです。私達、神の一族の宿敵。しかし案ずる事は有りません。

神と悪魔の幾多に渡る戦争により『悪魔の一族』の勢力は弱まっています。

今回の戦闘に於いて、悪魔の王『ルシファー』が動く事は無いでしょう。」

なぜなら

「悪魔にとっても未知の『化け物』どもは厄介な敵。私達『神の一族』が『化け物』どもと戦うなら悪魔にとっても都合が良いのです。」

「しかしアマテラス様………。」

「それに、私達が『天界の神々』と共倒れになったとしても、悪魔にとっては好都合。悪魔が動くとしたら全ての決着が付いた時。」

「全ての決着…………ですか?」

「そうです。『天帝の加護』の戦士達か『聖なる加護』の戦士達か、何れにしても、その勝者と『化け物』どもとの戦争が始まります。」

そして最後に生き残った戦士達に悪魔は総攻撃を仕掛ける。

「な!?それでは私達は、『聖なる加護』の戦士達を倒し、『化け物』どもを倒したとしても、更に悪魔とも戦わなければならないと?」

「そうです。」

「そんな……。何とも終わりの無い戦いか。」

「いいえジェイス。それで良いのです。」

「………?」

「最後に悪魔が勝ったとしても、それは私達の勝利。『化け物』どもからSeventh World(7つの世界)を救ったのですから。そしてラ・ムーア帝国の仇を討つ事にもなります。」

「アマテラス様………、そんな……。」

「ふふ………。」

アマテラスは優しくジェイスに語り掛ける。

「それに私達は負けませんよ。その為に貴方がいるのでしょう?」

「それは………。」


そう

ジェイスは悪魔の王族サタナキアを睨み付ける。

俺は負けない。

『聖なる加護』の戦士にも

未知の敵『化け物』どもにも

そして

『悪魔』にも



真っ黒に光る『グラディウス』を携えジェイスは右足を前へ踏み出した。




ゴゴゴゴゴゴゴゴォ………。

「あなた……は……。サタナキア?」

リザ・チェスターが目の前の悪魔を見てそう呟く。

「リザ。何をしている。お前の力はそんなものでは無いであろう。」

「…………。」

「忘れるなリザ・チェスター。お前は天使では無い。悪魔の力はそんなものでは無い。」

「なにを…………。」

「解放してやろう。」


悪魔の真の力を






【共闘編②】

悪魔だか何だか知りませんが

「そうはさせません。」

シュッ!

神代  麗(かみしろ  れい)は陰陽師の式札(しきふだ)を空へ投げると陰陽術を発動する。

「『朱雀』!あの者を焼き払うのです!」

不死の燃え盛る紅色の孔雀。

日本名『不死鳥』とも呼ばれる霊獣『朱雀』が、サタナキアを襲う。

更に五番目の霊獣『白澤(ハクタク)』

先程は不意を突かれましたが『白澤(ハクタク)』の力はこんなものでは無い。

浄化の力は悪魔の弱点。

ブシュウ!

『白澤(ハクタク)』の全身から溢れ出る白い蒸気がサタナキアに向かって飛んで行く。



全てを焼き払う炎


悪を浄化する蒸気


(たかが人間が扱う技にしては、厄介だな……。)

サタナキアは極めて冷静に状況を判断する。

(しかし何度やっても同じ事。我が魔力の前には、全ての攻撃は無意味。)

その絶対的な魔力が、全ての攻撃を弾き飛ばす。

ボワッ!!

ドッガーン!!

「!!」

(『朱雀』と『白澤』の攻撃を弾き飛ばした?)

「どけっ!神代  麗(かみしろ  れい)!」

麗の後ろから叫ぶのはジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世。

「エグゾーダス(灼熱地獄)!!」

ジェイスは、すかさず魔法をぶっ放す。

『朱雀』の炎とは違う極炎の炎が、高熱を伴ってサタナキアに向かって飛んで行く。

「ふん……無駄な事を………。」

するとサタナキアは、またしても右手をひと振りすると

ブワッ!

強大な魔力がジェイスの魔法を吹き飛ばす。

「!!」


これが


悪魔の王族の力






ドクン

ドクン

ドクンッ!


「あちゃあ……。これは厄介な事になりましたね。」

駆け付けたバロームは目の前の光景を見て頭をポリポリとかく。

麗の攻撃により死にかけていたリザ・チェスターが

ゴゴゴゴゴゴゴゴォ


強大な魔力を伴って復活する。

サタナキアに勝るとも劣らない魔力。


「サタナキア様………。」

リザ・チェスターは言う。

「あとは私にお任せを………。」

「………リザ。大丈夫か?」

サタナキアの問いにリザは答える。

「四大天使であるリザ・チェスターは、今、死にました。」

ここに居るのは

天使では有りません。



私は


悪魔







【共闘編③】

「神代  麗にジェイス。悪魔は俺っち達の共通の敵。ここは一旦、休戦して共闘っすね。」

麗とジェイスの間に割り込んだバロームが二人に話し掛ける。

「バロームか……。実態の無いお前が戦えるのか?」

そう質問するのはジェイス。

『天帝アマテラス』によって造り出されたバロームは、言わばアマテラスの分身。
しかし、広大な『高天原(タガマガハラ)』の世界に散りばめられたバロームの力は、あまりにも弱すぎる。

もはや実態が無い程に分散されたバロームは『アダム』の単なる監視役でしかない。

「そうっすね………。」

バロームは言う。

「今のままでは何のその役にもたたない。だから集めるっす。」

「集める?」

「そうっす。世界中に分散された『アマテラス様』の分身を、俺っちの元へ……。今さら、他の地点の監視役など不要っすから。」

「そんな事が出来るのか?」

「まぁ、やった事は無いっすけど、たぶん大丈夫っす。問題は時間が掛かる事ですね。」

「時間?どのくらいだ?」

「そうっすね。なにせ広大な『高天原(タガマガハラ)』の世界っすから簡単には行かないっす。」

早くて10分。

「10分………。」

「その間、何とかあの二人の悪魔から俺っちを守って欲しいっす。」

「二人………。」

「ジェイス。リザはもう仲間では無いっす。リザ・チェスターは完全に」


悪魔の手に堕ちたっす。




ズサリ

そこへ

三人の元へ現れたのは4番目の戦士リュウギ・アルタロス。

「なんじゃい。あの『化け物』は………。」

リュウギ・アルタロスは言う。

「麗殿の霊獣の攻撃が全く効かないとは、何とも厄介じゃのぉ。」

確かに

ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世は思う。

麗の攻撃だけでは無い。ジェイスの渾身の魔法も、奴(サタナキア)の魔力の前に弾かれてしまった。

今まで出会った敵とは明らかに違う。

(攻撃の通じない敵に、例え10分だけだとしても、持ちこたえる事が出来るのか?)

そして、神代  麗(かみしろ  れい)は、ゆっくりと口を開く。

「サタナキアは、私の霊獣の攻撃を魔力によって弾き飛ばしました。」

「……………?」

「それは、攻撃を受けたらダメージを喰らうからでしょう。」

「!!」

「私達の攻撃は、悪魔にも通用します。遠距離攻撃では、また弾き飛ばされる可能性が高い。」

三方向からの接近戦

私とリュウギとジェイスが三方向から同時に短距離攻撃を仕掛けます。


おそらく、それが


最も有効な攻撃



麗の作戦を聞いてジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世は驚きの表情を見せる。

(この女………。ほんの少し戦闘を交えただけで、既に悪魔(サタナキア)の攻略方法を見つけるとは………。)


「なるほど、接近戦とは面白いのぉ。」

リュウギ・アルタロスは言う。

「接近戦は俺様が最も得意とする分野。妖術での戦闘は好かん。生身の肉体を駆使してこそ、戦闘の醍醐味が味わえるのじゃい。正面は俺様に任せるが良い。」

妖術使いの第一人者とは思えないセリフをはいて、リュウギ・アルタロスが楽しそうな笑みを浮かべる。


「緋炎剣(ひえんのつるぎ)!」

ブンッ

神代  麗(かみしろ  れい)は、緋色に輝く日本刀を再び右手に携える。

凛としたその立ち姿には、悪魔に対する恐れは些かも感じられない。


(敵ながら、天晴れな女だ………。)

ジェイスは麗から目を放すと、右手に持つ『グラディウス』の方を見る。

(やって見るか………。)

「『グラディウス』………。」

ジェイスは真っ黒に輝く暗黒剣に囁くように話し掛ける。

「『グラディウス』………。お前達の力を貸してくれ。」

ビキィーン!

すると『グラディウス』は、ジェイスの願いに反応する様に共鳴音を発した。



リュウギ・アルタロス

神代  麗

ジェイス・D・アレキサンドリアⅢ世



三人の『加護の戦士』達が

共通の敵(悪魔)に向かって歩き出す。








ジェイス(左)
リュウギ(右上)
麗(右下)