振り子電車「スーパーあずさ」から、rolling stockへ | 特許翻訳 A to Z

特許翻訳 A to Z

特許翻訳歴26年、業界改善を目指した情報発信歴23年。
自らの試行錯誤に加え、参加者数のべ1000名を超えるセミナーや講座、年間50名前後の個別相談などを通して得たスキルアップのヒントをお届けします。


テーマ:
長野出張シリーズ第2弾です。

新宿-松本間には、「スーパーあずさ」という特急列車が走っています。
長野の現地企業に勤める方から、このスーパーあずさが「振り子電車」だと教わりました。
 
 
振り子・・・電車?
初めて聞く言葉です。

帰宅後に「振り子電車」でGoogle検索すると、一番上に出てきたのがWikipediaの「車体傾斜式車両」で、その次が交通新聞社の「トレたび」というウェブサイトにある「安心・安全・スピードアップ! 振り子式特急」という記事でした。

Wikiは専門用語が多く難しいのに対し、トレたびは、わかりやすく説明されています。
(リンクポリシーがトップページ指定になっているため、記事にダイレクトリンクはしませんが、トレたびトップページ > 鉄道情報 > 車両とたどって記事一覧を表示させると、リンクが出てきます。シリーズ記事で、No.8です。)

この記事には、次のような1行も。
JR北海道では振り子システムと車体傾斜システムの双方の利点を組み合わせた、世界初となる「ハイブリッド車体傾斜システム」の開発にも成功。曲線通過性能と乗り心地を向上する新技術の実用化が待たれています。

世界初という言葉に触発され、JPlatPatの公報テキスト検索で対象を特許公報に限定して全文に対して「車体傾斜式」を検索してみると・・・・

北海道旅客鉄道株式会社と川崎重工業株式会社による特許4979360号に、それらしい内容が出てきます。
出願は、2006年12月8日です。

上で示したトレたびの記事が「いつ」書かれたのかは定かではありませんが、アーカイブ検索を使って、少なくとも2009年5月15日の時点で存在していたことが確認できています。
また、シリーズ1本目の「さよなら0系新幹線」が2008年10月17日までは遡って確認できたので、ほぼ、時期も合いますね。

そこでもう少し調べました。
esp@cenetで特許第4979360号の英文抄録を確認すると、発明の名称「鉄道車両」が「ROLLING STOCK」と英訳されています。

これを使って、Google Scholarを検索してみました。
キーワードは

  "rolling stock" Hokkaido Kawasaki

です。これで、上から2番目に2007年の論文が出てきました。

A Control Method for Hybrid Tilting Systems using Tilting Beams and Air Spring Inclination

ハイブリッドというキーワードが入っていて、著者の一部が上記特許の発明者と一致します。
少なくとも、上記の「ハイブリッド車体傾斜システム」と何らかの関係があると思われます。

さらに・・・
論文の参考文献欄に、「Running Curve Comfortably at High Speed - Tilting Control System by Use of Air Spring for Rolling Stock - KAWASAKI TECHNICAL REVIEW No. 160 pp. 34-37 (in Japanese)」との情報が。

川崎重工ホーム > 技術情報 > 川崎重工技報 > 第160号 鉄道車両特集号から、日本語のタイトル「快適に曲線を高速で通過する」が判明しました。
国会図書館まで足を運べば中を読めますので、後日あらためて確認してみようと思います。

それはそうと。
Rolling Stockという言い回しが、何となく気になりました。

たとえばWebsterでrolling stockの定義を確認すると
  the wheeled vehicles owned and used by a railroad or motor carrier
とあり、必ずしも鉄道車両を意味するとは限らないようです。
加えて、「owned and used」と書かれています。

米国の連邦規則集(Code of Federal Regulations(CFR))のTitle 49「Transportation(運輸)」の定義にも、
Rolling stock means buses, vans, cars, railcars, locomotives, trolley cars and buses, ferry boats, and vehicles used for guideways and incline planes.
とあります。(49 CFR 663.5 - Definitions

特許明細書の場合、日本語の出願に「鉄道車両」とあれば rolling stockと英訳しても鉄道で解釈されるだろうとは思いますが、少なくとも1:1に対応する訳語ではなさそうです。

ちなみに、米国特許庁のデータベースで1976年以降のデータの発明の名称に「rolling stock」を指定して検索すると106件ヒットするのですが、このうち英語圏からの出願は1割もありません。
それも大半は、企業ではなく個人です。

残りはどこかというと、圧倒的に多いのが日本からの出願で、半数弱を占めています。
次に多いのがドイツで約3割、残りはフランスやオーストリア、イタリアなどの非英語圏からの出願です。

同様のことを、esp@cenetで試しました。
title欄に「rolling stock」を入れてフレーズ検索すると、現時点で6,123件ヒットします。
priorityをJPとして日本(から)の出願だけに絞り込むと、半数以上の3,637件
ドイツは359件、米国225件、フランス109件です。

いかに日本での使用例が多いかということが、よくわかりますね。
日本だけが圧倒的に鉄道車両の出願が多いのか、英語圏で鉄道車両の出願をするときは、別の表現を使うのか・・・

次は、このあたりを調べてみようと思います。


■関連記事 (連載です)
振り子電車「スーパーあずさ」から、rolling stockへ ←現在地。
rolling stock=鉄道車両「1両」?
専門辞書と、rolling stock

「鉄道車両」の意味は?

■その他関連記事
松本城から考える、情報の信憑性
 

インデックスへ

(※あずさの画像は、フリー素材館の著作権フリー画像をお借りしました。)

水野麻子さんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります