🏃♂️ 「運動が効く人」と「効きにくい人」の体の内側で起きていたこと
運動を続けても、すぐにその効果が出る人もいれば、頑張っているのに効果が出にくい人もいます。
同じように体を動かしているのに、結果に差が生まれる──この「違い」がどこから生まれるのかは、これまで十分に解明されてはいませんでした。
その違いがどこにあるのかを探るために「体の内側の働き」に注目した研究があります。
体の内側に目を向けたとき、最初に見えてきたのが「腸内細菌」の存在でした。腸には無数の細菌が暮らしています。その「組み合わせ」や「割合」は人によって異なり、日々の体調や生活習慣とも関わっています。
研究のデータを見ていくと、運動にしっかり反応した人と、あまり変化がなかった人とでは、この腸内細菌の「バランス」が異なっていました。細菌の種類そのものではなく、「どの細菌がどれくらいの割合で存在しているか」という違いが、運動の反応性と重なっていたのです。
中医学でも、胃腸の働きに関係する「脾(ひ)」の状態は、消化吸収だけでなく、気や血のめぐりにも関わると考えられています。内側の調和が乱れると、全身の働きにも影響が出るという考え方です。腸内細菌の違いが体の反応を左右するという今回の研究の視点は、この「内側から全身へ」という中医学の見方と繋がります。
こうした腸の働きに目を向けると、運動の効果に差が生まれる「最初のきっかけ」が、体のどこに潜んでいるのかが、少しずつ見えてきます。
その「きっかけ」がどのように次の反応へつながるのか──研究がたどった流れを追いかけてみましょう。
🧫 腸内細菌を移すと、体の反応まで「移った」
腸内細菌の「違い」が運動への反応と関係していることが見えてきたあと、研究ではさらにその影響を確かめる実験が行われました。
それが、腸内細菌そのものを別のマウスに移植し、体の変化を直接調べる方法です。腸内細菌がどれほど体に影響するのかをまっすぐ見るための、シンプルでわかりやすい方法です。
運動によく反応した人の腸内細菌を移植されたマウスでは、血糖値のコントロールが整い、インスリンの働きも改善していました。
一方で、運動の効果があまり見られなかった人の腸内細菌を移植したマウスでは、こうした改善がほとんど確認されませんでした。
つまり、運動に反応しやすい体の特徴の一部が、腸内細菌を通じてそのままマウスに「移っていた」ということになります。
腸内細菌の状態が、思っている以上に全身の反応に影響していることを示す結果です。
🧬 変化はどこで起きていた?
腸内細菌の違いが体の反応に関わっていることが見えてきたあと、研究ではその影響を体の「どこで」受け取っているのかをさらに調べました。
運動しても体が変わる人と変わらない人──その差が、「どこで」起こっているのを確かめるためです。
まず、全身の状態に影響しやすい臓器として「肺」が調べられましたが、運動への反応を左右するような大きな違いは見られませんでした。
一方、「脂肪組織」でははっきりした変化が確認されました。
運動にしっかり反応した人では、脂肪組織の中で働く物質の量が変わり、組織の状態が運動に合わせて切り替わっていたのです。反対に、運動の効果が出にくかった人では、この変化がほとんど見られませんでした。
脂肪は、ただエネルギーを蓄えている場所ではなく、体の代謝やホルモンの調整に関わる「反応の拠点」でもあります。
ここで起きていた違いは、腸内細菌によって生まれた「差」が、脂肪という受け皿を通じて体の働きに反映されている可能性を示しています。
🧪 「ロイシン」という手がかり
脂肪組織で反応の違いが見えてきたところで、研究が次に注目したのが「ロイシン」というアミノ酸です。
「ロイシン」は、食事のタンパク質にも含まれており、筋肉づくりやエネルギーの調整に関わる物質として知られています。
今回の研究では、この「ロイシン」の体内での変化が、運動の反応性と関係していたことがわかりました。運動にしっかり反応した人では「ロイシン」の変化に特徴があり、運動の効果が出にくかった人とは異なる変化が見られたのです。
さらに、腸内細菌をいったん減らす処理(抗生物質による調整)を行うと、「ロイシン」の量が大きく低下することも確認されています。これは、「ロイシン」の変化の「背景」に「腸内細菌」が関わっていることを示しています。
「腸内環境」の違いが「ロイシン」の変化として体に現れ、それが脂肪組織の反応にもつながっている可能性があります。
「ロイシン」の動きは、「腸内環境」と「脂肪組織」がどのように影響し合っているのかを見ていくうえで、重要な手がかりとなっています。
🔗 運動の「効きやすさ」を左右する「sIL-6R」
腸内細菌の違いがロイシンの動きに影響し、それが脂肪組織の反応につながることが見えてきました。
研究ではさらに、その先にある変化として「sIL-6R」という物質に注目しています。これは、体の炎症反応や代謝の調整に関わるシグナルの一つです。
運動にしっかり反応した人では、この「sIL-6R」の量が運動によって低下していました。一方で、運動の効果が出にくかった人では、「sIL-6R」があまり低下せず、高い状態でした。
この違いが、血糖値の改善やインスリンの働きやすさといった「運動の効きやすさ」につながっていたと考えられます。
脂肪組織の中では、ロイシンの変化を受けて「sIL-6R」に関わる反応が動きやすくなることも示されています。
腸内細菌が生み出す微妙な違いが、ロイシンや脂肪組織の反応を通じて、最終的には sIL-6R にたどり着いていたということです。
この sIL-6R の変化は、運動に対して体がどう反応するかを大きく左右する「重要なポイント」として示されていました。
🔄 「腸」から始まる体の変化
運動の効果に差が生まれる背景には、一つの仕組みだけが関わっているわけではありません。
腸内細菌の違い、ロイシンの動き、脂肪組織の反応、そして sIL-6R の変化──それぞれは別々に見えるようで、実際にはつながりながら、体の反応を作っていました。
腸内細菌の違いは、体の中をめぐるロイシンの量に影響し、ロイシンの変化は脂肪組織での反応の仕方に関わっていました。
さらに、その先にある sIL-6R の動きにも違いが生まれ、これが運動による血糖の改善やインスリンの働きやすさに影響していたと考えられます。
つまり、運動にしっかり反応する人と、そうでない人の差は、筋肉や運動量の差だけで説明できるものではなく、体の内側で起きているいくつかの小さな変化が積み重なった結果としてあらわれていたということです。
運動の効果は「筋肉」だけの話ではなく、腸・代謝物・脂肪・炎症シグナルといった複数の経路が関わる、より立体的な仕組みが今回の研究で見えてきました。
🌿 中医学の視点で見る、運動と体のつながり
今回の研究では、体の内側で起きる小さな変化が積み重なり、それが全身の働きに広がっていく流れが見えてきました。
中医学では、こうした「内側の変化が全身に影響を及ぼす」という考え方が古くからあり、特に胃腸の働きに関係する「脾(ひ)」の状態が重視されてきました。
脾は食べ物から得たものを体のエネルギーに変え、気や血のめぐりにも関わるとされます。脾の調子が整っていると体の反応もスムーズになり、乱れていると全身に影響が出る、という考え方です。
今回の研究で示された、腸内環境の違いが代謝や炎症の反応に影響し、それが運動の効果の差につながるという流れは、中医学が大切にしてきた「脾」を中心とした内側の調和の考え方と繋がる部分があります。
現代の研究と中医学の視点が重なる部分には、体の状態をより深く理解するためのヒントが含まれているように思います。
📝 腸内環境を変えて、体を変える
運動の効果に違いが生まれる背景には、腸内細菌の働きや代謝の流れ、脂肪組織の反応といった、体の内側で積み重なる変化が関わっていました。
外側からは見えにくい部分が、実際には大きな役割を担っているという視点は、自分の体の状態を見つめる上でひとつの手がかりになります。
こうした仕組みを知ることで、運動そのものだけでなく、その土台となる「内側の環境」に意識を向けるきっかけが生まれます。
体はひとつの働きだけで調節されているわけではなく、複数の流れが支え合いながら日々の変化をつくっています。その動きを理解すると、体調や取り組みの感じ方も、これまでとは少し違って見えてくるかもしれません。
研究が示した内容は、体と向き合うための材料のひとつです。
自分の体がどんなときに動きやすいか、何を整えると反応が変わりやすいか──その答えを探すうえで、今回の研究の視点は役立つものとなります。
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