「小山殿の他に鎌倉に味方するものは?」
「常陸の小栗殿と八田殿これは確実だろう。他はまだ判らぬ。」
「では、もし小山殿が志田先生に敗れることがあれば?」
「利に聡い日和見のものどもが志田に与力して一気に鎌倉を突くころもありうる、ということだ。」
盛長はわが婿の顔をじっと見据えた。
「そこで、蒲殿の力が必要となる。」
「私の?」
「蒲殿には武蔵吉見荘に赴いていただく。
そして、志田先生や足利が何か事を起こした時、すぐ動くであろう小山殿を助けていただきたい。」
「しかし、舅殿。私は兵の殆どを三河に置いて鎌倉に来ています。
それに、平家が東海道に来るかも知れない今、三河から兵を動かすわけにはいきませぬ。」
「蒲殿、三河の兵はこのたびは鎌倉殿が遠江に遣わす和田殿にお預けいただきたい。
和田殿がかならずや安田殿と図って東海道を守る抜かれるはずじゃ。
その代わりと言ってはなんだが、志田先生への備えには瑠璃の兵を使って頂きたい。」
「瑠璃の?」
「そう、瑠璃の所領の吉見荘の兵を。」

なるほど、吉見荘は昨日その祖母の譲りを受けて瑠璃の所領となった。
夫源範頼に従うように瑠璃が指示を出せば直ちにそこに住まう兵は範頼に従うはずである。
「舅殿、わかりました。それで吉見荘の兵の数は。」
「ざっと15,6騎くらいですかの。」
盛長はさらっと答えた。
「は?」
範頼は絶句した。
常陸国を挙げて攻め寄せてくる敵の数は10騎20騎という数ではないはずである。
兵が殆ど残っていない小山とあわせてもとても対抗しきれない。

急に不安げな顔をした婿の顔をみて盛長は笑った。
「ははは、この15,6騎は蒲殿が身の回りを守るにお使いください。
比企のお祖母殿も下知を出されるので、比企郡全ての兵が蒲殿の味方につきまする。
それをあわせると5、60騎は下りますまい。
それと目立たぬように、河越殿と足立が兵を送り込んでおきますゆえ、その兵をご存分にお使いくだされ。」

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