音楽流通に革命を

相模の風レコード 代表 いしはらとしひろが綴る、『メジャー崩壊後』の音楽流通ビジネスやレコーディングのあれこれ


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さてさて。前々回の記事で音楽がつまらなくなったのは、消毒のされすぎ、ということを書きました。
『消毒』って何?音楽なのに?

これは一言で言って、編集作業の行き過ぎです。コンピュータ編集の行き過ぎ、弊害、といっていいでしょう。
音楽をやっている人、レコーディングを経験した人ならばご存知でしょうが、今のレコーディングはほぼ100%デジタル録音で、録音された演奏をコンピュータで編集・修正してからCD化されます。
それ自体が悪いわけではありません。アナログレコーディングしかない頃から、色々なやり方で編集作業は行われてきました。それをデジタルに置き換えて、なおかつ徹底的にやっている、というのが今のレコーディング編集作業です。

1950年代までは、少数の例外を除いて、レコーディングというのは『一発録り』でした。
「せえ~の」でみんなそろって演奏するわけです。
このやり方だと、演奏の勢いや一体感は記録できますが、演奏者の誰か一人が間違ったり、あるいは全体のリズム感がよくなかったりすると、すぐに没です。また、マイクと演奏者との位置のかんけいで、せっかくよい演奏だったのに、録音バランスが目茶苦茶、なんてこともあります。ヴォーカル+ピアノトリオの演奏なのに、ドラムが大きすぎてヴォーカルはよく聞こえず、ベースはすべての音に埋もれて聞こえない、なんて言う状態だったらせっかくの中身の濃い演奏でも、録音物=商品としては台無しです。

でももちろん、一発録りで今の耳で聴いても素晴らしい録音はたくさんあるわけで。

1960年代初頭から3トラックレコーディング、そして年を追うごとに使用できるトラック数は増え、1970年代初頭には16トラック 70年代後半以降は32トラックなんて具合です。
32トラックもあればドラムなんかも、スネア、タム、シンバルにハイハット、なんて具合にすべて別のトラックに収める、なんてことも出来るようになってきました。
また、みんなでせえ~の、ではなく、一人一人、1パートずつ、録音できるようになったので、演奏の精度はものすごく上がりました。しかし、正確であろうとすると、どうしても勢いというものは失われます。みんなでせえ~のでやる一体感、みたいなものも失われます。いわば、そこのせめぎあいですよね。
また、コンプレッサー始め様々なエフェクターも発達したので、音色や音響効果という面でも、ものすごく進化しました。精度の高い者が録れるようになったわけです。

たとえば1955年の録音 1975年の録音 1995年の録音 2012年の録音と並べて聴いてみると、その音質、音の触感だけでも、相当の違いを感じ取れるはずです。

そして現在のコンピュータ編集。
これ、すごいですよ。50年代の録音エンジニアをタイムマシンに乗せて現在に連れてきて、その作業を見せたらひっくり返ると思います。
コンピュータの中でほぼ全部の作業が出来てしまうし、特定の音を切った貼ったずらした、なんでもOKです。

誤解のないように言っておきますが、コンピュータが悪いわけではないし、編集作業がダメと言っているわけでもありません。僕だって、レコーディングの時はそういう作業をしますし。

でも、今はちゃんと歌えていないシンガーの歌でも、音程を正し、外れているリズムをきちんとしたところにはめ、なんてのも当たり前です。
他の楽器においても同様。ちゃんと演奏できていなくても『ずらして正しいところに持ってくる』ことができるわけです。

これ、実際にやってみると分かりますが、魔物なんです。そして一度直し始めると、すべての間違いやずれを直したくなるような衝動に駆られます。普通のリスナーには分からないようなどうでも良いような隅の隅まで何百箇所も。
これをとことんやると、正確無比だけれど、ゆらぎもうねりも気持ちも感じない音源に仕上がります。

かといって、「すごくいいヴォーカルが録れたんだけれど、二箇所ほど、リズムがずれた。これ以上の歌は録れそうにない。」そんな時もままあります。そういう時にちょろっと直すのはいいと思いますよ。それ以外の箇所はよく歌えているわけですから。

録音の修正、やってみると分かりますが、ちょっと直しただけで、元の演奏の持っている輝きが何%か失われます。もちろん修正したのですから、修正後の方が『きちんとした演奏』なのです。にもかかわらず、修正と共に、たとえへたくそな演奏であったとしても、それが元々持っていた輝き、の何%かは失われる。これは大事なところだと思います。
録音に関わる人には、この部分に関する感性を持っていて欲しいと思います。

ちょっと話しはずれますが、今ライブイベントなどで出演者を募集するとき、ライブ音源やライブ映像での審査がほとんどです。CD音源は除外されることが多い。なぜか?CDで聴いてちゃんと歌えているように聞こえたのに、演奏も素晴らしく聞こえたのに、ライブで実際に聴くとあまりに落差がありひどすぎる、というようなことが、インディーズミュージシャンでもフルデジタル録音・編集でのレコーディングが当たり前になった2000年以降、続発したのです。
ライブ演奏と編集された音源に、あまりの落差がある場合はやはり、アレ?となってしまいますよね。

録音物としてのCDを考えたとき、編集作業は大きな意味を持っています。
間違い直し、なんてことに使うのではなくて、もっと創造的な肯定的な使い方の編集であれば、その作品はより輝くはず。
もちろん世に名作と言われている作品達は、すべてとは言わないにしても、『ダメ直しの編集』より、その作品の創造性をより上げていく為の肯定的な編集、が施されています。

おそらくそのアルバムしか、そのミュージシャンしか持っていない『世界感』『空気感』のようなものが、よりいっそう求められると思います。自分独自の質感、というか。音響派、なんて言われている人は、そこに敏感、かつ突き詰めている人達だと思います。

『音の生きている感じ』これを大事にしたいし、いま、そういうものが世に流通している音楽から、少し失われている気がします。

ということはさ。
ミュージシャンも録音エンジニアも、自分の質感の音、世界観を表す音、にもっとこだわれば良いんだな。そして他と違っていようが、自信を持ってそれを差し出せば良いのだな。
そういうところからも『より面白く』なっていく気がします。

最後まで読んで頂き ありがとうございました。
相模の風レコード いしはらとしひろでした。

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http://www.sagaminokaze.com/ryuutuu.htm

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