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黒田幸彦のブログ

徒然なること

★★★★☆☆☆☆☆☆

表現媒体を変える芸術家の意図は様々だが、既に世界観が確立済みの60代で彫刻を始めたシャガールにとって、立体作品は絵画表現からの延長線上に留まった。とはいえ、相変わらず伸びやかで、アクロバティック。人間と動物の同居、愛の喜びとその浮遊感は石の重量に一部吸収され、翻って重みを増した。側面と背後の仕上げは弱い。

★★★★★★☆☆☆☆

表慶館の美に寄り添った展覧会。elegance。
作品の魅力を最大限に引き出す展示空間に唸る。とりわけ第1室の天目茶碗。幾度も検証を重ねたであろう、絶妙な暗がり。少し加減を間違えれば不安に転じる程に低い明度、人間心理と演出効果を突き詰めた巧みの拘りを見た。
思い返せば全てが厳選された高次元藝術の内、最も心に残ったのはミシェル・ウルトー氏の傘。こんなにも素敵な傘を知らない。

★★★★★★☆☆☆☆

公開:2016年
監督:アリエル・ヴロメン
出演:ケヴィン・コスナー、ゲイリー・オールドマン、トミー・リー・ジョーンズ、ガル・ガドット

死んだ人間の記憶を前頭葉に転写させるというSF的設定も、巧妙な脚本と、豪華俳優陣の凄みで現実味が増す。
ケヴィン・コスナーの、極めて暴力的で獣な前段から、人間味を帯びていく変化の演技に惹き込まれた。振り回されてばかりの駄目なCIA長官や謎の48時間タイムリミット、油断し過ぎの敵エージェントなど突っ込み所は少なくないものの、忙しない展開とミサイル発射ソフトの最恐さが気にする余裕を与えない。ダッチマンがプログラムの起動後に、錯乱する場面が印象的。悪を生み出すのが悪とは限らない点を良く描写。クライマックス気分爽快。

★★★★★★☆☆☆☆

夜9時まで開館の日に訪れた午後5時台で大行列。いつも通り、正面から並ばず本館の脇から入る。
近くで立ち止まって見るには余りにも混雑、遠巻きにじっと眺め、量感を脳裏に焼き付ける。
無著像に落涙。ひたすら恰好良い四天王像。
仏像という枠を越えた、凄い彫刻群。

★★★★★★☆☆☆☆

意味のあるシュルレアリスム。世界観のある幻想絵画。

画題を言い当てた副題。補足するならば、廃墟的空間だが、かつての楽園は例え滅んでも楽園足り得た特別な世界を失っていない。3次元の均衡は危うく、不確かな奥行き。時の混在から、ひとつの生命における生と死が並列に描かれる。徘徊する霊。見つめ合う少女は齢の異なる同一人物のようでもあり。鳥の羽根は舞っているのか静止しているのか。空から水が漏れ出す。

晩年圧倒的。65歳での自死に、内なる世界の及ぼした影響は如何ほどか。