東京都交響楽団
第999回定期演奏会Aシリーズ
(東京文化会館 19:00)
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 op.68《田園》
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番 ロ短調 op.54
指揮: 井上道義
井上さんが都響を振る最後の演奏会。
6番で合わせたプログラムによるラストセッション。
前半の「田園」は小編成の演奏。
8-6-4-3-2 (バイオリン対向)
これが素晴らしい響き。
なんと幸せで温かく優しくて楽しい音楽だろう。
トランペット、トロンボーン、ピッコロ、ティンパニーが4楽章途中で舞台に登場する演出も面白い。
井上さんの思いの詰まった演奏。
ぎっしりと思いが込められ、それをしっかりと受け止めて、緊張感の高い気合の入った演奏を聴かせてくれた都響にブラボー。
美しいベートーヴェンだった。
後半のショスタコーヴィチは16-14-12-10-8のフル編成。
交響曲第6番ロ短調と言えばチャイコフスキーの「悲愴」が有名だけれどゆっくりで重厚長大な第4楽章を持つ「悲愴」とゆっくりで重厚長大な第1楽章を持つショスタコーヴィッチの第6番は何か共通点があるのだろうか。
演奏は、時に華やか、時に苦しく、時に悲しく、時に軽快に、時に深く重く、・・・
特に重苦しい第一楽章は、深く締め付けられるような音楽。
ショスタコーヴィチさんはこの苦しい音楽の中にどんな思いを込めたのだろう。
作られたのは1939年。昭和14年。第二次世界大戦前の不穏な世の中、きっと独裁政権のソ連に対する大いなる皮肉が込められているに違いない。
ショスタコーヴィチが得意な井上さんの深い思いを感じる密度の濃い響き。
都響はうまいな〜
弦も管も打楽器も、ゴージャスでエレガント。
ダイナミックで実に美しいオーケストラの音色。
井上さんの指揮は、エネルギッシュで、メリハリが効いて、豪快かつ繊細。
時に踊るような、時に楽しげに、時におどけるような・・・
見ていてわかりやすく伝わりやすい。
あふれるような思いが自由自在に自然に体の動きになり、音楽になって伝わり、しかもとても楽しんでおられるように見える。
その音楽は、深く掘り下げられている上に、お洒落で美しい。
長い指揮者生活の集大成にふさわしい素晴らしい演奏。
重苦しいショスタコーヴィチの音楽でも、間違いなく美しい。
その素敵な音楽に惹き込まれてしまう。
あんなにお元気そうなのに、引退が近いなんて。
まだまだ沢山の作品を聴いてみたい指揮者。
個性あふれる井上さんの指揮ぶりにもブラボー。
東京文化会館のコンサートもなかなかいい。
心地良い響きが耳に残る。
ブラボー!
カーテンコールは写真撮影OKだったので。