アメとムチ
人間だけではなくネズミなどの動物でも、罰を与えられる行動を回避するようになり、報酬を与えられる行動を増やすようになる。
このアメとムチ(報酬と罰)をうまく使い分けることで、人を動機付けることができる。このアメとムチによる力は、短期的には有効で強力な力である。
このアメとムチによって、動機付けられている人は、報酬を得ることや罰を回避することが目的であり、仕事をするなどの行動はその手段となっている。「動機は不純でも、行動することが大切」と考えれば、「アメとムチ」も大事な動機づけの方法である。しかし、長期的に考えた場合どうだろうか?
昔の話であるが、徹底して「アメとムチ」を使っていた営業の会社を知っている。
そこでは、1日注文が取れないと、その夜、他の営業マンから張りせんで「尻たたき」をされるのである。
2日間続けて注文が取れないと、駅前や郵便局の前で童謡を歌わされたりもしていた。もちろん給与も歩合制で、注文が少ないと収入も少なくなる。
逆に、成績の良い人は収入が多いだけでなく、海外旅行に行けたり、豪華な賞品をもらったり、さらに役職もどんどん上がっていった。椅子や机もランク別になっていた。
そんな会社の営業マンの状況を見て、次のようなことに気がついた。
1.罰を何度も受けていると、罰を回避するための努力をせず、罰をやわらげることに努力する。
(注文を取る努力をせずに、尻タタキが痛くならないように工夫する。)
2. 努力せずに罰を回避することを考えるようになる。罰を回避するために不正をする。
(その場しのぎの、うその中もを計上する。)
3. 罰を受けることで、自分の努力していないことを正当化する。
(サボっていても「罰を受ければいいのでしょ」とサボることの言い訳にする。)
4. 報酬をいつも受けている人は、それで満足して「今期は報酬が少なくてもいいや」と、努力しなくなる。
5. 報酬をいつも受けている人は、「報酬を得るためだけに努力していること」に嫌気が差して去っていく。
6. アメとムチによる動機づけを長く受けていると、絶えず誰かが見張っていてアメやムチを与え続けなければ、行動しなくなる。
これらは、決してよいことではない。一時騒がれた「成果主義」も、まさに金銭による「アメとムチ」である。成果主義を掲げた企業の多くが、その看板を下ろしたのも必然だと思う。
やはり、「努力することで得られる楽しさや満足感による動機づけ」が必要である。
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