~pixivと同時にupします~

 

以前に比べ、湧き出る泉の如く文章が──ということはなくなった。
でも誕生日が近づくにつれ、ふつふつふつと……。
短くて、脈略もないですが、

今年もこうして祝福できる平穏な日常に感謝して。


オスカルさま、お誕生日おめでとうクリスマスベル赤薔薇

& Joyeux noëlクリスマスツリー

 

 

 

 

いつも、前には誰もいない。
先陣を切るのは自分だから。
それが当然のことだから。
吹き荒ぶ風。宙を舞う粉塵。
睫毛を掠める切っ先。耳朶を擦り抜けていく銃弾。

 

背中に背負うもの。
わたしを信じてくれる部下。わたし以外の弱き者たち。
いつも、それだけを考えて生きてきた。
脇目も振らず、振り返ることもせず。

 

立ち止まれ、と誰かが言った。
呼吸をしろ、と。

 

──オスカル!

 

いつも、前には誰もいない。
けれど、横には常にお前がた。
それが当たり前だった。
当たり前過ぎて、気づかなかった。近過ぎて見えなかった。
その均衡が脆弱なものであることを。

 

ぐらぐらと揺れる地面を走る。
愛する者のために。愛する者との未来のために。
己の命を置き土産にして。

弔いの鐘が鳴る。

 

──アンドレ!

 

清潔な長い指が頬に垂れた金の髪をうなじへ流す。
閉じた睫毛と雪肌が同時に震えた。
「悪い、起こしてしまったか?」
「いや……、起きていた」
気怠そうな掠れ声。
「ただ、目が開かないだけだ」
それから、小さな欠伸が漏れた。

 

手に入れたもの。
黄金の髪と、蒼海の瞳。
絹糸の睫毛と、柔らかな肌。
俺だけに聴こえる声。
俺だけを誘う喘ぎ。

 

手に入れたもの。

黒葡萄の髪と、漆黒の瞳。
屈強な躰と、わたしを捕らえて離さぬ熱。
わたしだけに囁く声。
どくどくと、わたしのなかで爆ぜる滾り。

 

それらすべてを生かすお前の、
鼓動。

 

 

 

 

彼は獣を飼っている。
それは彼の手に余る獣だ。
唯一人、操縦あやつることができるのは……。


未明あかときに、薄玻璃を声が伝う。
獣が目覚め、ゆっくりとこうべを起こす。

 

月が赤い。
赤い。
赤い。

 

赤い月が彼女を捉える。
彼女の髪。彼女のかお。彼女の稜線。
視軸が──絡まる。

 

獣の体躯が彼女に重なる。
戦場では敵を射抜く眼光と右腕が、
妖艶に、しなやかに、獣の自制を剥がしていく。

 

「駄目だ、オスカル……」
男は、最後の理性を振り絞る。
「これ以上は、壊してしまう……」

 

「壊せば良い……、わたしは構わない」
彼女は、睫毛で男を誘った。
「お前……、いつの間に、そんな手管を身につけた?」

 

「は……っ」
彼女は蠱惑の微笑を浮かべる。
「いつもお前が、わたしにしていることではないか」

 

「え? まさか……」
「お前は、お前の仕草が、お前の想像以上に周囲に与える影響をもっと自覚するべきだ」
なんだか、だんだん言葉に棘が刺さってきた。
「四の五の言わずに遠慮なくわたしを壊せ。但し、壊せるものならな」
男は二の句を失った。

 

そんな挑発に応じるほど、彼は剛毅ごうきではなく、そして愚かでもない。

結局どちらが仕掛けたのか、夢魔ですら舌を巻くほど夢と現の中間を行き来したのち、泥のように二人は眠った。

 

 

 

 

瞼を開けても闇。
突如──不安になる。
其処にお前はいるのかと。
やがて、星屑のような淡い瞬き。

 

刹那──腕の中の温もりが僅かに身動ぎ、指先が睫毛を掠め、
「おはよう……」
と重怠い声が耳に届く。

 

「ごめん、オスカル」
アンドレは激しい後悔に苛まれた。
「神聖な夜に俺は……。ああ……、神への冒涜だ」
「何を今更。お前、ゼウスに何人子供がいると思っている?」
頭を抱え枕に突っ伏す男に、オスカルは真上から言葉を浴びせた。
それを言ったら身も蓋も無いだろう、とアンドレは思ったが黙っていた。

 

昨年も同じような会話をしていたような気がする。進歩がないと嘆くべきか、それとも平和だと喜ぶべきなのか。
「寒くないか? オスカル」
二人して裸で眠ってしまっていた。寒い筈だ。暖炉の火が消えかけている。アンドレは立ち上がり、裏返しになったシャツの袖に無理矢理腕を突っ込みながら薪をべた。
炎を確認して振り返ると、オスカルが猫のように躰を丸めていた。シーツの上で波打つ髪は、朝陽に照らされ、まるで黄金の炎のようだ。
「そろそろ何か着た方がいい」
オスカルは答えない。
「オスカル?」
また眠ってしまったのだろうか。アンドレはベッドに近づく。
「お腹、空かない──わっ!」
いきなり伸びてきた腕に、アンドレはベッドの中に引き摺り込まれた。
この国に於いて、瞬発力で彼女に敵う者は、彼の知る限り一人もいない。

 

それから、
シーツがシャツを吐き出した。

 

 

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村

 

 

 

おまけブログ

 

先日、ヒビキpianoさんという方の初・コンサートに行ってきました🎹

爆速という超高速テクニックを売りとし、クラシックからJ-POPまで幅広いジャンルの曲をYouTubeに上げています。

 

決して広くはない会場に響き渡る生・爆速は想像以上に凄かったキラキラ 前の人の隙間からずっと鍵盤凝視してました凝視

 

 

写真は、神戸のコンサートホールのピアノ。

「ブリュートナー」世界四大ピアノの一つだそうです(創始者の名前がユリウス・ブリュートナーというところが個人的にツボ爆  笑)。

 

しかし座席が二列目なのは良かったが、二列目まで床がフラットなのは誤算だった泣(三列目から階段席になる)

私は、できたら鍵盤が見える席が良いのだけれど、映画館みたいに席が選べないので運に任せるしかない。ホールによって配置も違うし、本当に難しいタラー

 

星公式ホームページ開設されたそうです。