(改正案)
第十二章 改正

第百十条 この憲法の改正は、国会の総議員の三分の二以上の賛成で、これを発議し、枢密院を通過したのち、国民に提案して、その承認を経なければならない。この承認には、法律によって定められた国民投票において、その過半数の賛成を必要とする。
② 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、天皇及び国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
③ 摂政は、憲法改正を公布することができない。天皇は、憲法改正の公布を委任することができない。

第百十一条 前条に定める手続きを踏まえたとしても、以下に定める場合は、この憲法の改正とはみなさない。

一 第八十条の規定に基いて、内閣総理大臣が防衛軍を出動を命令し、防衛軍が武力を行使している状況若しくは武力を行使するための準備が行われている下で行われる憲法の改造。

二 第百九条の規定に基づいて、国が地方自治体の自治権を凍結し、直接統治している状況の下で行われる憲法の改造。

三 日本国の主権が、外部からの武力によって著しく侵害されている状況の下で行われた憲法の改造。

第百十二条 前条に基づく憲法の改造は、改憲がなされた時期に遡って、これを無効とする。
 


【要旨】
  • 憲法制定権力は、天皇と国民にあるものとする
  • 憲法を『公布』する権利は天皇のみにあり、摂政や他者への委任は禁止する
  • 憲法改正の限界を明文化



【解説】
(現行)
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
 


現行の7条に定める天皇の国事行為のなかには『憲法改正』の公布も含まれています。

第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
② 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

第五条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。

 


また、摂政を置く場合のほか、国事行為の臨時代行についても、
その国事行為は天皇の名に於いて行われるものであり、
法令の公布が、天皇陛下の『上諭』と『御名御璽』、内閣総理大臣と閣僚の署名のあとに公布されるわけですが、
現行憲法は、天皇陛下が国民の名に於いて公布するとされています。

(現行)
第九章 改正

第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
② 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

立憲主義の観点から、
憲法典が、国家権力を抑制する目的で国民が政府に求める条項を定めた最高法規である前提に立つならば、
国政に関する権能を有さないとされる天皇陛下が憲法制定権力から排除されることに対して、私は違和感を覚えるのです。

天皇陛下の地位が、統治機構の一機関であり、国事行為が『天皇の政務』と位置付けられているならば、現行の条文が妥当なのかもしれませんが、
所謂『象徴天皇制』と呼ばれる状況が国民に広く受け入れられた現代においては、尚更、天皇陛下を『権力』の側に追いやって国民と対立するかのような構図を採用すべきではないと思うのです。

なので、敢えて憲法改正の公布は『天皇及び国民の名』に於いて行われると記載しました。

欧米の立憲主義が、王権や政府と国民が対立して権利を獲得した歴史的背景があったように、
皇室が政治権力を行使してこなかった日本には、日本流の立憲主義があっても良いと思うのです。



【改正限界は明文化すべき】
 


憲法改正には限界があるとする説は、学説のなかで議論されてきただけであります。

所謂『天皇主権』から『国民主権』の現行憲法に変質したことに対する美濃部達吉ら憲法学者による批判に対応する『八月革命説』についても、実際には革命など起きておりませんし、単なるフィクションに過ぎません。

日本国憲法は、大日本帝国憲法の改正手続きに則って『改正』されたものであります。

国際法や日本国が締結した条約に基づくものでない限り、憲法改正には限界はありませんし、
現行の憲法の条文には、ドイツの基本法のように条約に基づいて成立した箇所は確認できません。

憲法改正の限界があるとすれば、それは条文のなかで、予め、明記しておくべきものであります。

第百十条
③ 摂政は、憲法改正を公布することができない。天皇は、憲法改正の公布を委任することができない。

摂政や国事行為の臨時代行が必要な事態において、天皇陛下を差し置いて憲法典を改造するようなことはあってはなりません。

第百十一条 前条に定める手続きを踏まえたとしても、以下に定める場合は、この憲法の改正とはみなさない。

一 第八十条の規定に基いて、内閣総理大臣が防衛軍を出動を命令し、防衛軍が武力を行使している状況若しくは武力を行使するための準備が行われている下で行われる憲法の改造。

二 第百九条の規定に基づいて、国が地方自治体の自治権を凍結し、直接統治している状況の下で行われる憲法の改造。

三 日本国の主権が、外部からの武力によって著しく侵害されている状況の下で行われた憲法の改造。

第百十二条 前条に基づく憲法の改造は、改憲がなされた時期に遡って、これを無効とする。

軍事クーデターによる憲法の改造や憲法の破棄、敵国による軍事占領下における憲法の改造は無効とすべきであります。


陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約
(ハーグ陸戦条約)
(英: Convention respecting the Laws and Customs of War on Land, 仏: Convention concernant les lois et coutumes de la guerre sur terre)

第四三條 國ノ權力カ事實上占領者ノ手ニ移リタル上ハ、占領者ハ、絶對的ノ支障ナキ限、占領地ノ現行法律ヲ尊重シテ、成ルヘク公共ノ秩序及生活ヲ囘復確保スル爲施シ得ヘキ一切ノ手段ヲ盡スヘシ。

第43条 国の権力が事実上占領者の手に移った上は、占領者は絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施せる一切の手段を尽くさなければならない。


所謂「占領憲法破棄」は、決して暴論などではなく、
条約締結国に対して、占領地の法律を尊重することを求めている43条の規定に照らし合わせれば、現行憲法そのものが違法だと解釈する余地もあるのです。

しかし、私は大日本帝国憲法の復活までは望んでおりません。

現行憲法に対しても『押し付け憲法論』であると全否定するよりも、
現行憲法の下で享受されてきた基本的人権や自由と権利を、敗戦によってもたらされたものと受動的・自虐的に受け止めるのではなく、
我々自身の手で勝ち取る『憲法改正』『自主憲法制定』の立場をとるものであります。