腎・尿路疾患・水・電解質代謝異常の泌尿器科的(尿路)疾患のお話。
今回は泌尿器腫瘍の、精巣腫瘍の説明です。
★[精巣腫瘍]testis cancer★
●疫学
0~4歳と20~40歳に好発、初期には精巣の腫脹以外に症状を認めないために、転移するまで放置されていることが少なくありません。
死亡数は1997年で約100人と少数ですが、罹患者のほとんどが青年であるため、社会的打撃は大きいです。
●症状
自発痛のない陰嚢内容の腫脹が特徴で、腫瘤は増大傾向があり、陰嚢の皮膚は正常です。
腫瘤は硬く、ときに表面が不整で、透光性を欠くことが特徴です。
転移巣による症状としては、後腹膜リンパ節転移による腹痛・背部痛や肺転移による咳嗽、呼吸困難・喀血があります。
●病理
病理組織学的には95%が胚細胞由来の胚細胞腫germ cell tumor(GCT)であり、臨床的に精上皮腫seminoma非精上皮腫non-seminomatous germ cell tumor(NSGCT)に大別し治療方針を決定します。
乳幼児では卵黄嚢腫瘍yolk sac tumorが70%、成熟奇形腫mature teratomaが30%です。
●診断・鑑別診断
原発の腫瘍の触診が基本で、精巣腫瘍を疑った場合には生検はせずに高位除睾術を行います。
転移巣の有無については、CT、MRIなどの画像診断により行われますが、画像で描出されない転移巣の存在は腫瘍マーカー(血清AFP、HCG-β)の高値としてとらえます。
同じく陰嚢腫脹を示し鑑別を有する疾患として陰嚢水腫がありますが、腫瘤に透光性があり、エコーで内容均一な嚢胞状のパターンであるので鑑別は容易です。
●治療
精巣に限局している場合には前述の高位精巣摘除術のみでよい場合がありますが、後腹膜リンパ節転移がある場合にはCDDPを中心とする多剤併用化学療法を行います。
他の固形腫瘍に比して全身化学療法が奏功し、有転移症例でも救命率が高いです(全有転移症例の約80%)。
ただし、化学療法に抵抗性の難治例も存在し、末梢血幹細胞移植併用高容量化学療法も行われます。
治療の効果は画像診断での腫瘤縮小効果と、血清腫瘍マーカーの推移により判定します。
放射線療法は主にseminomaの予防的治療に用いられます。
●禁忌事項
精巣の充実性腫瘍の針生検です。
陰嚢内容が腫大した患者に対し、最初にするべきことは、陰嚢内容の超音波検査であり、これにより陰嚢水腫が鑑別できます。
精巣に充実性腫瘤を認めた場合には精巣腫瘍が最も考えられますが、この際に針生検や試験穿刺を行うことは、血行性、リンパ性転移を助長するため禁忌です。
●KEY WORD:精巣腫瘍の後腹膜リンパ節転移
精巣からのリンパ流はほぼ臀門部のレベルの後腹膜リンパ節に注ぎ、リンパ行性に転移することが多いです。
このため、初発の転移部位はほとんどが後腹膜リンパ節です(鼠径リンパ節ではない)
今回は泌尿器腫瘍の、精巣腫瘍の説明です。
★[精巣腫瘍]testis cancer★
●疫学
0~4歳と20~40歳に好発、初期には精巣の腫脹以外に症状を認めないために、転移するまで放置されていることが少なくありません。
死亡数は1997年で約100人と少数ですが、罹患者のほとんどが青年であるため、社会的打撃は大きいです。
●症状
自発痛のない陰嚢内容の腫脹が特徴で、腫瘤は増大傾向があり、陰嚢の皮膚は正常です。
腫瘤は硬く、ときに表面が不整で、透光性を欠くことが特徴です。
転移巣による症状としては、後腹膜リンパ節転移による腹痛・背部痛や肺転移による咳嗽、呼吸困難・喀血があります。
●病理
病理組織学的には95%が胚細胞由来の胚細胞腫germ cell tumor(GCT)であり、臨床的に精上皮腫seminoma非精上皮腫non-seminomatous germ cell tumor(NSGCT)に大別し治療方針を決定します。
乳幼児では卵黄嚢腫瘍yolk sac tumorが70%、成熟奇形腫mature teratomaが30%です。
●診断・鑑別診断
原発の腫瘍の触診が基本で、精巣腫瘍を疑った場合には生検はせずに高位除睾術を行います。
転移巣の有無については、CT、MRIなどの画像診断により行われますが、画像で描出されない転移巣の存在は腫瘍マーカー(血清AFP、HCG-β)の高値としてとらえます。
同じく陰嚢腫脹を示し鑑別を有する疾患として陰嚢水腫がありますが、腫瘤に透光性があり、エコーで内容均一な嚢胞状のパターンであるので鑑別は容易です。
●治療
精巣に限局している場合には前述の高位精巣摘除術のみでよい場合がありますが、後腹膜リンパ節転移がある場合にはCDDPを中心とする多剤併用化学療法を行います。
他の固形腫瘍に比して全身化学療法が奏功し、有転移症例でも救命率が高いです(全有転移症例の約80%)。
ただし、化学療法に抵抗性の難治例も存在し、末梢血幹細胞移植併用高容量化学療法も行われます。
治療の効果は画像診断での腫瘤縮小効果と、血清腫瘍マーカーの推移により判定します。
放射線療法は主にseminomaの予防的治療に用いられます。
●禁忌事項
精巣の充実性腫瘍の針生検です。
陰嚢内容が腫大した患者に対し、最初にするべきことは、陰嚢内容の超音波検査であり、これにより陰嚢水腫が鑑別できます。
精巣に充実性腫瘤を認めた場合には精巣腫瘍が最も考えられますが、この際に針生検や試験穿刺を行うことは、血行性、リンパ性転移を助長するため禁忌です。
●KEY WORD:精巣腫瘍の後腹膜リンパ節転移
精巣からのリンパ流はほぼ臀門部のレベルの後腹膜リンパ節に注ぎ、リンパ行性に転移することが多いです。
このため、初発の転移部位はほとんどが後腹膜リンパ節です(鼠径リンパ節ではない)