感染症の真菌感染症のお話。
今回は、カンジダの説明です。
★[カンジダ]Candida★
【概念】
カンジダ症candidiasisは、カンジダ属Candidaの真菌により起こる急性ないし慢性の感染症であり、真菌症のなかで最も頻度が高いです。
最も代表的な菌種はCandida albicansで、そのほかにnon-albicans Candidaと総称される、
C.tropicalis
C.parapsilosis
C.glabrata
C.guilliermondii
C.krusei
なども起因菌となります。
非好中球減少症患者にみられる深在性カンジダ症は、C.albicansに起因する例が圧倒的に多いですが好中球減少症患者の深在性カンジダ症の起因菌のなかで占めるC.albicansの比率は近年低下傾向にあり、non-albicans Candida、特にC.tropicalis、C.parapsilosis、C.glabrataなどによる症例が増加しています。
●成因・病態
カンジダ属は、口腔、消化管、上気道、膣などの粘膜や皮膚の表面にしばしば常在菌として定着しています。
カンジダ症は、感染部位や重症度の点で様々であり、病型も多彩です。
一般には深在性感染と表在性感染に分けられます。
《深在性感染》
全身に播種するか、または単一ないし複数の臓器に病変を来たし、侵襲性かつ重篤な病態を引き起こします。
《好発臓器》
腸管、肺、管、脾、心臓(心内膜)、脳などであり、様々な病型のカンジダ症を発症します。
《侵襲性・播種性カンジダ症》
健常者にはまれで、多くの場合は易感染患者に続発性感染として発症します。
最大の危険因子は好中球減少症ですが、発症要因は宿主要因と医原的要因があります。
宿主要因───ー然因子(新生児、未熟児、高齢者、妊婦)、病的因子(血液疾患、悪性腫瘍、自己免疫疾
患、糖尿病、肝硬変、腎不全、AIDS、先天性免疫不全症候群、慢性肉芽腫症、熱症、外傷な
ど)があります。
医原的要因───ゞ欷鯊紂聞域抗菌薬)、¬髪崘縦祺次聞骸鞜臾堯副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬)、
5ヽEバリアの破綻(IVHカテーテル、末梢静脈ドレーン、膀胱留置カテーテル、各種ドレ
ーン、気管内挿管、気管切開、腹部手術、開心術など)があります。
このため最も代表的な日和見感染型の深在性真菌症とされています。
●主な病型
《口腔カンジダ症》
広域抗菌薬の長期投与の菌交代症として、高齢者や副腎ステロイド薬あるいは免疫抑制薬の投与中の患者に好発します。
口腔粘膜や舌表面に白色の偽膜を形成します。
AIDS患者では口腔カンジダ症や食道カンジダ症が好発します。
《食道カンジダ症》
しばしばAIDSや抗癌化学療法による免疫不全に関連して発症します。
口腔カンジダ症に続発することが多く、再発を繰り返し、嚥下痛、嚥下困難、胸骨下部痛で発症します。
内視鏡検査で不規則な斑状の隆起性の白苔が観察され、食道造影では、粘膜不整、縮緬皺様陰影あるいは敷石様変化などがみられます。
消化管カンジダ症は食道、胃、小腸、大腸の順に多いです。
《胃・腸カンジダ症》
白血病そのほかの血液悪性腫瘍患者にみられることが多く、剖検例では比較的多くみられますが、生前診断例はまれです。
胃や腸管に多数の潰瘍を生じ、穿孔が起こると腹膜炎または全身性播種による間脾カンジダ症に進展します。
胃カンジダ症の症状は心窩部痛、体重減少などで非特異的です。
腸カンジダは単独で発症することはまれであり、主症状は下痢で、そのほかに鼓腸、腹痛、出血などがあります。
《肝脾カンジダ症》
重篤な好中球減少症を伴う基礎疾患をもつ患者、特に急性白血病患者にみられます。
カンジダ属が門脈を介して肝臓および脾臓に感染した後、宿主の免疫能が回復すると、慢性に経過して多発性膿瘍を形成します。
発熱が持続し、右季肋部痛、肝脾腫、黄疸、アルカリホスファターゼ値が上昇します。
血液や生検組織の培養、腹部CT、腹部エコー、肝脾シンチグラム、MRIなどの画像診断が有用です。
《肺カンジダ症》
通常、免疫不全のない症例には認められず、肺病変は血行性散布や上気道からの誤嚥によります。
発熱、咳嗽、喀痰で発症し、経気道感染では細菌の混合感染のため膿性痰となり、血行性感染では血痰、喀血を伴い、急激に呼吸困難が進行します。
胸部X線所見は、経気道感染では細菌性肺炎が主であり、特徴的な所見はありません。
血行性感染では、初期には無所見ですが、急速に淡いびまん性間質性陰影から肺胞性浸潤影に進展します。
《肺カンジダ症の診断》
剖検で診断されることが多く、気管支肺胞洗浄液や喀痰からカンジダ属が検出されても診断を確定することはできず、血液培養も陰性のことが多いです。
確定診断は生検材料の病理組織学的検査や培養検査によります。
《尿路カンジダ症》
糖尿病、肝硬変、自己免疫疾患患者や尿路通過障害のある患者に好発しますが、抗菌薬、副腎皮質ステロイド薬の長期投与と膀胱カテーテル留置などが誘因となります。
症状は頻尿、残尿管、排尿痛、下腹部不快感、排尿困難です。
《腎カンジダ症(カンジダ腎盂腎炎)》
膀胱からの上行性感染はまれであり、多くは多臓器からの血行性感染により起こります。
症状は発熱、悪寒、背部痛、膿尿などです。
《カンジダ髄膜炎》
比較的まれな病型で、主として好中球減少症を伴う血液悪性腫瘍などの基礎疾患をもつ患者、種々の医原的危険因子をもつ患者や、脳内カテーテル留置(脳室-腹膜シャント、脳室-心房シャントなど)患者に好発します。
主な症状は発熱、髄膜刺激症状です。
髄液の直接鏡検または培養でカンジダ属の検出が診断確定に不可欠ですが、陰性の場合が少なくありません。
《カンジダ心内膜炎》
心臓カンジダ症の代表的病型で、静脈内カテーテル留置、抗菌薬投与、心臓手術、人口弁置換などを行った心臓弁膜症患者の存在が、最も大きな危険因子となります。
症状は発熱、心雑音、塞栓症状、うっ血性心不全、貧血、脾腫などがみられます。
《カンジダ血症》
カンジダ血症は播種性カンジダ症の最も代表的な病態です。
カンジダ血症はIVHカテーテルなどを介する外因性感染と、抗癌化学療法に伴う腸管のバリア機構の破綻による内因性感染があります。
《カンジダ眼内炎》
真菌性眼内炎は、穿孔性眼外傷や内眼手術後に発生する外因性と、IVHや静脈留置カテーテルなどが原因となる内因性があり、内因性のほうが圧倒的に多いです。
起因菌としてはカンジダ属が90%と多く、なかでもC.albicansが多いです。
カンジダ血症の合併症として重要であり、発熱の2~4週間後に飛蚊症、霧視、視力低下などが出現し、進行すると視力障害が出現します。
眼底に特徴的な所見がみられます。
●診断
血液、髄液そのほかの体液、尿、喀痰、肺胞洗浄液、生検組織、カテーテル先端などの直接鏡検(病理組織学的検査を含む)および培養検査を行いますが、起炎菌の検出・分離率は必ずしも高くありません。
このため補助診断法として、血清診断法としてマンナン抗原、(1、3)-β-D-グルカン、易熱性糖蛋白、D-アラビニトールの測定が行われています。
PCR法による遺伝子診断も行われています。
●治療
現在、日本で使用可能な抗真菌薬は、アムホテリシンB(AMPH)、フルシトシン(5-FC)、アゾール系のミコナゾール(MCZ)、フルコナゾール(FLCZ)、イトラコナゾール(ITCZ)のほか、ミカファンギンナトリウム(MCFG)の6薬剤のみです。
FLCZが最も広く使用されていますが、C.krusei、C.glabrataは著しくFLCZ感受性が低いです。
近年、AIDS患者からは本剤耐性C.albicans株が分離される例が増えています。
今回は、カンジダの説明です。
★[カンジダ]Candida★
【概念】
カンジダ症candidiasisは、カンジダ属Candidaの真菌により起こる急性ないし慢性の感染症であり、真菌症のなかで最も頻度が高いです。
最も代表的な菌種はCandida albicansで、そのほかにnon-albicans Candidaと総称される、
C.tropicalis
C.parapsilosis
C.glabrata
C.guilliermondii
C.krusei
なども起因菌となります。
非好中球減少症患者にみられる深在性カンジダ症は、C.albicansに起因する例が圧倒的に多いですが好中球減少症患者の深在性カンジダ症の起因菌のなかで占めるC.albicansの比率は近年低下傾向にあり、non-albicans Candida、特にC.tropicalis、C.parapsilosis、C.glabrataなどによる症例が増加しています。
●成因・病態
カンジダ属は、口腔、消化管、上気道、膣などの粘膜や皮膚の表面にしばしば常在菌として定着しています。
カンジダ症は、感染部位や重症度の点で様々であり、病型も多彩です。
一般には深在性感染と表在性感染に分けられます。
《深在性感染》
全身に播種するか、または単一ないし複数の臓器に病変を来たし、侵襲性かつ重篤な病態を引き起こします。
《好発臓器》
腸管、肺、管、脾、心臓(心内膜)、脳などであり、様々な病型のカンジダ症を発症します。
《侵襲性・播種性カンジダ症》
健常者にはまれで、多くの場合は易感染患者に続発性感染として発症します。
最大の危険因子は好中球減少症ですが、発症要因は宿主要因と医原的要因があります。
宿主要因───ー然因子(新生児、未熟児、高齢者、妊婦)、病的因子(血液疾患、悪性腫瘍、自己免疫疾
患、糖尿病、肝硬変、腎不全、AIDS、先天性免疫不全症候群、慢性肉芽腫症、熱症、外傷な
ど)があります。
医原的要因───ゞ欷鯊紂聞域抗菌薬)、¬髪崘縦祺次聞骸鞜臾堯副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬)、
5ヽEバリアの破綻(IVHカテーテル、末梢静脈ドレーン、膀胱留置カテーテル、各種ドレ
ーン、気管内挿管、気管切開、腹部手術、開心術など)があります。
このため最も代表的な日和見感染型の深在性真菌症とされています。
●主な病型
《口腔カンジダ症》
広域抗菌薬の長期投与の菌交代症として、高齢者や副腎ステロイド薬あるいは免疫抑制薬の投与中の患者に好発します。
口腔粘膜や舌表面に白色の偽膜を形成します。
AIDS患者では口腔カンジダ症や食道カンジダ症が好発します。
《食道カンジダ症》
しばしばAIDSや抗癌化学療法による免疫不全に関連して発症します。
口腔カンジダ症に続発することが多く、再発を繰り返し、嚥下痛、嚥下困難、胸骨下部痛で発症します。
内視鏡検査で不規則な斑状の隆起性の白苔が観察され、食道造影では、粘膜不整、縮緬皺様陰影あるいは敷石様変化などがみられます。
消化管カンジダ症は食道、胃、小腸、大腸の順に多いです。
《胃・腸カンジダ症》
白血病そのほかの血液悪性腫瘍患者にみられることが多く、剖検例では比較的多くみられますが、生前診断例はまれです。
胃や腸管に多数の潰瘍を生じ、穿孔が起こると腹膜炎または全身性播種による間脾カンジダ症に進展します。
胃カンジダ症の症状は心窩部痛、体重減少などで非特異的です。
腸カンジダは単独で発症することはまれであり、主症状は下痢で、そのほかに鼓腸、腹痛、出血などがあります。
《肝脾カンジダ症》
重篤な好中球減少症を伴う基礎疾患をもつ患者、特に急性白血病患者にみられます。
カンジダ属が門脈を介して肝臓および脾臓に感染した後、宿主の免疫能が回復すると、慢性に経過して多発性膿瘍を形成します。
発熱が持続し、右季肋部痛、肝脾腫、黄疸、アルカリホスファターゼ値が上昇します。
血液や生検組織の培養、腹部CT、腹部エコー、肝脾シンチグラム、MRIなどの画像診断が有用です。
《肺カンジダ症》
通常、免疫不全のない症例には認められず、肺病変は血行性散布や上気道からの誤嚥によります。
発熱、咳嗽、喀痰で発症し、経気道感染では細菌の混合感染のため膿性痰となり、血行性感染では血痰、喀血を伴い、急激に呼吸困難が進行します。
胸部X線所見は、経気道感染では細菌性肺炎が主であり、特徴的な所見はありません。
血行性感染では、初期には無所見ですが、急速に淡いびまん性間質性陰影から肺胞性浸潤影に進展します。
《肺カンジダ症の診断》
剖検で診断されることが多く、気管支肺胞洗浄液や喀痰からカンジダ属が検出されても診断を確定することはできず、血液培養も陰性のことが多いです。
確定診断は生検材料の病理組織学的検査や培養検査によります。
《尿路カンジダ症》
糖尿病、肝硬変、自己免疫疾患患者や尿路通過障害のある患者に好発しますが、抗菌薬、副腎皮質ステロイド薬の長期投与と膀胱カテーテル留置などが誘因となります。
症状は頻尿、残尿管、排尿痛、下腹部不快感、排尿困難です。
《腎カンジダ症(カンジダ腎盂腎炎)》
膀胱からの上行性感染はまれであり、多くは多臓器からの血行性感染により起こります。
症状は発熱、悪寒、背部痛、膿尿などです。
《カンジダ髄膜炎》
比較的まれな病型で、主として好中球減少症を伴う血液悪性腫瘍などの基礎疾患をもつ患者、種々の医原的危険因子をもつ患者や、脳内カテーテル留置(脳室-腹膜シャント、脳室-心房シャントなど)患者に好発します。
主な症状は発熱、髄膜刺激症状です。
髄液の直接鏡検または培養でカンジダ属の検出が診断確定に不可欠ですが、陰性の場合が少なくありません。
《カンジダ心内膜炎》
心臓カンジダ症の代表的病型で、静脈内カテーテル留置、抗菌薬投与、心臓手術、人口弁置換などを行った心臓弁膜症患者の存在が、最も大きな危険因子となります。
症状は発熱、心雑音、塞栓症状、うっ血性心不全、貧血、脾腫などがみられます。
《カンジダ血症》
カンジダ血症は播種性カンジダ症の最も代表的な病態です。
カンジダ血症はIVHカテーテルなどを介する外因性感染と、抗癌化学療法に伴う腸管のバリア機構の破綻による内因性感染があります。
《カンジダ眼内炎》
真菌性眼内炎は、穿孔性眼外傷や内眼手術後に発生する外因性と、IVHや静脈留置カテーテルなどが原因となる内因性があり、内因性のほうが圧倒的に多いです。
起因菌としてはカンジダ属が90%と多く、なかでもC.albicansが多いです。
カンジダ血症の合併症として重要であり、発熱の2~4週間後に飛蚊症、霧視、視力低下などが出現し、進行すると視力障害が出現します。
眼底に特徴的な所見がみられます。
●診断
血液、髄液そのほかの体液、尿、喀痰、肺胞洗浄液、生検組織、カテーテル先端などの直接鏡検(病理組織学的検査を含む)および培養検査を行いますが、起炎菌の検出・分離率は必ずしも高くありません。
このため補助診断法として、血清診断法としてマンナン抗原、(1、3)-β-D-グルカン、易熱性糖蛋白、D-アラビニトールの測定が行われています。
PCR法による遺伝子診断も行われています。
●治療
現在、日本で使用可能な抗真菌薬は、アムホテリシンB(AMPH)、フルシトシン(5-FC)、アゾール系のミコナゾール(MCZ)、フルコナゾール(FLCZ)、イトラコナゾール(ITCZ)のほか、ミカファンギンナトリウム(MCFG)の6薬剤のみです。
FLCZが最も広く使用されていますが、C.krusei、C.glabrataは著しくFLCZ感受性が低いです。
近年、AIDS患者からは本剤耐性C.albicans株が分離される例が増えています。