妊産婦・女性生殖器疾患の婦人科疾患のお話。
今回は、子宮筋腫の説明です。
★[子宮筋腫]uterine myoma、uterine fibroid★
【概念】
子宮筋から発生する良性腫瘍で、組織学的に平滑筋腫の所見を呈します。
大小種々の腫瘤を形成し、子宮体部に全体の95%と多く発生しますが、これを体部筋腫といい、まれながら頸部に発生したものは頸部筋腫と呼ばれます。
前者のうち、子宮筋の中に発生したものは筋層内筋腫、筋層表面子宮漿膜に囲まれて発生したものは漿膜下筋腫、また筋層の内側子宮内膜に囲まれているものは粘膜下筋腫と呼ばれます。
●疫学
性周期を有する婦人の20~30%にみられ、婦人科外来患者の約5%を占めるとされる頻度の高い腫瘍です。
●成因
子宮筋腫の発生原因についての詳細はいまだ不明ですが、卵巣ホルモン、特にエストロゲンの作用で発育すると考えられています。
エストロゲンとプロゲステロンの両受容体を有し、卵巣ステロイドホルモンに反応性をもつ腫瘍と言え、また、染色体12番と14番に異常が多い腫瘍ともいわれています。
●臨床像
筋腫結節の大きさ、発生部位により症状は様々で、しばしば無症状であることも多いです。
《過多月経あるいは過長月経》
筋腫核により子宮内膜面が増大したり、筋層内の静脈の鬱血などにより、月経量が増したり月経期間が延長して起こります。
月経血に凝血が含まれたり、月経期間が8日以上のときにそれと診断されますが、鉄欠乏性貧血が出現したときに治療の対象となります。
貧血が高度となると脈拍が亢進し、筋腫心臓を呈します。
《下腹部腫瘤感》
筋腫結節の増大により、下腹部に腫瘤を触知して筋腫の存在に気づくことが多いです。
筋腫が骨盤腔を圧迫すると頻尿を訴え、まれながら水腎症を合併することがあります。
《下腹部痛・腰痛》
多臓器の圧迫や骨盤内の鬱血により起こり、月経時には子宮収縮による痛み、不正出血を伴った痛みを訴えることがあります。
粘膜下筋腫が子宮頸部を超えて膣内に脱出する場合で、これを筋腫分娩といいます。
このような場合には、早期の手術が必要となり、容易に子宮内膜炎から骨盤腹膜炎を発症する恐れがあるからです。
《不妊》
多発性の粘膜下子宮筋腫の場合には、機械的な着床障害を起こし、不妊となることがあります。
●検査所見
超音波断層法が有用で、子宮筋層内に境界のはっきりした低エコー結節を認めます。
MRI・CTでも、診断は容易です。
●病理組織像
子宮筋層より、孤立性あるいは多発性に円形で白く固い境界明瞭な結節が発生し、大きさは種々で、顕微鏡的レベルから成人頭大を超えるものまで様々です。
良性の平滑筋腫で、紡錐状の平滑筋線維が索状に増生して渦上を呈し、筋細胞束間に結合線維が混入して認められます。
子宮筋を圧排するように増殖するので、筋腫と子宮筋の境界が明瞭です。
子宮筋腫の続発変化として、赤色変性と悪性化などがあり、前者は急激な血流障害の結果筋腫に変性が起こって、赤色で柔らかい結節となり、主として、妊娠時の急性腹症として発症します。
筋腫が悪性化すると肉腫になり急速に増大する筋腫や高齢者にみられる筋腫は要注意です。
一般に悪性である頻度は、子宮筋腫のうち0.5%といわれ、また、子宮筋腫には、同じエストロゲンが誘引となって発生する子宮内膜症が潜んでいることがあります。
そのため、子宮筋腫と判断された場合には子宮体癌検診が必要です。
●診断
《内診》
双合診により、腫大した子宮を触知します。
その表面は多発性の筋腫核により、しばしば不整で、有茎筋腫の場合には、子宮より遊離しており、卵巣腫瘍との鑑別が困難なことがあります。
《超音波診断》
外来で簡便に行なえる画像診断法で、子宮筋層内に境界のはっきりした、やや低エコー像を示す結節を認めます。
《CT、MRI》
CT、MRIでも診断は可能ですが、高価な両検査法を実施しなければ困難な場合は多くありません。
●鑑別診断
《卵巣腫瘍》
卵巣筋腫の場合を除いて、内診や画像診断法で鑑別可能です。
《子宮内膜症》
特に腺筋症では、双合診上鑑別困難なことがあります。
子宮は腫大していますが、表面平滑で、硬さが弾性硬である場合には腺筋症である可能性が高いです。
外性子宮内膜症では、癒着により子宮の移動性は制限されています。
なお、子宮筋腫の20~30%は子宮内膜症を伴っています。
●治療・予後
症状、筋腫の大きさ、患者の年齢、妊娠希望の有無などにより、治療法を選択します。
筋腫があっても無症状の場合は、経過観察することもあります。
治療の適応の目安は、筋腫が手拳大以上に大きい場合で、これより小さくても、造血剤に反応しないしない貧血を伴う場合や、急速に増大する傾向がある場合は適応となります。
[手術療法]
《単純子宮全摘術》
確実な治療法であるので、挙児を希望しない場合に最も広く行なわれています。
《筋腫核出術》
患者が将来の妊娠を希望する場合は、子宮を温存して筋腫結節のみを摘除します。
筋腫を発生しやすい子宮を温存するので、筋腫を再発する可能性は高いです。
《分娩筋腫捻除術》
粘膜下筋腫が筋腫分娩しており、茎部が細い場合には、左右に回転して捻除します。
茎が太い場合は子宮鏡下に切断します。
《ホルモン療法》
子宮筋腫が卵巣ホルモン依存性腫瘍であることから、視床下部ホルモンであるゴナドトロピン放出ホルモン誘導体(GnRHアナログ)で卵巣機能を抑制して月経を停止させ、症状の緩和を図ります。
低エストロゲン状態によって子宮筋腫を縮小させる療法です。
点鼻薬、経口薬、4週ごとの注射薬があり、4~6ヶ月の治療期間が限度です。
通常、治療の終了によって、月経が発来しますが、子宮筋腫も再増殖することが多いです。
副作用として更年期様症状、浮腫に注意します。
今回は、子宮筋腫の説明です。
★[子宮筋腫]uterine myoma、uterine fibroid★
【概念】
子宮筋から発生する良性腫瘍で、組織学的に平滑筋腫の所見を呈します。
大小種々の腫瘤を形成し、子宮体部に全体の95%と多く発生しますが、これを体部筋腫といい、まれながら頸部に発生したものは頸部筋腫と呼ばれます。
前者のうち、子宮筋の中に発生したものは筋層内筋腫、筋層表面子宮漿膜に囲まれて発生したものは漿膜下筋腫、また筋層の内側子宮内膜に囲まれているものは粘膜下筋腫と呼ばれます。
●疫学
性周期を有する婦人の20~30%にみられ、婦人科外来患者の約5%を占めるとされる頻度の高い腫瘍です。
●成因
子宮筋腫の発生原因についての詳細はいまだ不明ですが、卵巣ホルモン、特にエストロゲンの作用で発育すると考えられています。
エストロゲンとプロゲステロンの両受容体を有し、卵巣ステロイドホルモンに反応性をもつ腫瘍と言え、また、染色体12番と14番に異常が多い腫瘍ともいわれています。
●臨床像
筋腫結節の大きさ、発生部位により症状は様々で、しばしば無症状であることも多いです。
《過多月経あるいは過長月経》
筋腫核により子宮内膜面が増大したり、筋層内の静脈の鬱血などにより、月経量が増したり月経期間が延長して起こります。
月経血に凝血が含まれたり、月経期間が8日以上のときにそれと診断されますが、鉄欠乏性貧血が出現したときに治療の対象となります。
貧血が高度となると脈拍が亢進し、筋腫心臓を呈します。
《下腹部腫瘤感》
筋腫結節の増大により、下腹部に腫瘤を触知して筋腫の存在に気づくことが多いです。
筋腫が骨盤腔を圧迫すると頻尿を訴え、まれながら水腎症を合併することがあります。
《下腹部痛・腰痛》
多臓器の圧迫や骨盤内の鬱血により起こり、月経時には子宮収縮による痛み、不正出血を伴った痛みを訴えることがあります。
粘膜下筋腫が子宮頸部を超えて膣内に脱出する場合で、これを筋腫分娩といいます。
このような場合には、早期の手術が必要となり、容易に子宮内膜炎から骨盤腹膜炎を発症する恐れがあるからです。
《不妊》
多発性の粘膜下子宮筋腫の場合には、機械的な着床障害を起こし、不妊となることがあります。
●検査所見
超音波断層法が有用で、子宮筋層内に境界のはっきりした低エコー結節を認めます。
MRI・CTでも、診断は容易です。
●病理組織像
子宮筋層より、孤立性あるいは多発性に円形で白く固い境界明瞭な結節が発生し、大きさは種々で、顕微鏡的レベルから成人頭大を超えるものまで様々です。
良性の平滑筋腫で、紡錐状の平滑筋線維が索状に増生して渦上を呈し、筋細胞束間に結合線維が混入して認められます。
子宮筋を圧排するように増殖するので、筋腫と子宮筋の境界が明瞭です。
子宮筋腫の続発変化として、赤色変性と悪性化などがあり、前者は急激な血流障害の結果筋腫に変性が起こって、赤色で柔らかい結節となり、主として、妊娠時の急性腹症として発症します。
筋腫が悪性化すると肉腫になり急速に増大する筋腫や高齢者にみられる筋腫は要注意です。
一般に悪性である頻度は、子宮筋腫のうち0.5%といわれ、また、子宮筋腫には、同じエストロゲンが誘引となって発生する子宮内膜症が潜んでいることがあります。
そのため、子宮筋腫と判断された場合には子宮体癌検診が必要です。
●診断
《内診》
双合診により、腫大した子宮を触知します。
その表面は多発性の筋腫核により、しばしば不整で、有茎筋腫の場合には、子宮より遊離しており、卵巣腫瘍との鑑別が困難なことがあります。
《超音波診断》
外来で簡便に行なえる画像診断法で、子宮筋層内に境界のはっきりした、やや低エコー像を示す結節を認めます。
《CT、MRI》
CT、MRIでも診断は可能ですが、高価な両検査法を実施しなければ困難な場合は多くありません。
●鑑別診断
《卵巣腫瘍》
卵巣筋腫の場合を除いて、内診や画像診断法で鑑別可能です。
《子宮内膜症》
特に腺筋症では、双合診上鑑別困難なことがあります。
子宮は腫大していますが、表面平滑で、硬さが弾性硬である場合には腺筋症である可能性が高いです。
外性子宮内膜症では、癒着により子宮の移動性は制限されています。
なお、子宮筋腫の20~30%は子宮内膜症を伴っています。
●治療・予後
症状、筋腫の大きさ、患者の年齢、妊娠希望の有無などにより、治療法を選択します。
筋腫があっても無症状の場合は、経過観察することもあります。
治療の適応の目安は、筋腫が手拳大以上に大きい場合で、これより小さくても、造血剤に反応しないしない貧血を伴う場合や、急速に増大する傾向がある場合は適応となります。
[手術療法]
《単純子宮全摘術》
確実な治療法であるので、挙児を希望しない場合に最も広く行なわれています。
《筋腫核出術》
患者が将来の妊娠を希望する場合は、子宮を温存して筋腫結節のみを摘除します。
筋腫を発生しやすい子宮を温存するので、筋腫を再発する可能性は高いです。
《分娩筋腫捻除術》
粘膜下筋腫が筋腫分娩しており、茎部が細い場合には、左右に回転して捻除します。
茎が太い場合は子宮鏡下に切断します。
《ホルモン療法》
子宮筋腫が卵巣ホルモン依存性腫瘍であることから、視床下部ホルモンであるゴナドトロピン放出ホルモン誘導体(GnRHアナログ)で卵巣機能を抑制して月経を停止させ、症状の緩和を図ります。
低エストロゲン状態によって子宮筋腫を縮小させる療法です。
点鼻薬、経口薬、4週ごとの注射薬があり、4~6ヶ月の治療期間が限度です。
通常、治療の終了によって、月経が発来しますが、子宮筋腫も再増殖することが多いです。
副作用として更年期様症状、浮腫に注意します。