そば 一文字たったひと噛みで陥落した。釜の前でほいと渡された薄茶色のそれを口に放り込んで一呼吸……草か土か、あるいは豆か。ひと言で形容することがためらわれる複雑精妙な味の広がりに思わず顔が崩れる。と同時に、原料の味を多少は知っているつもりだっただけに、正直横っ面を思いきり叩かれたような気持ちにもなった。それくらい、その麺には小麦の真の味わいがあるそうです。