第3180回「ラヴクラフト全集、その26、魔宴、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第3180回「ラヴクラフト全集、その26、魔宴、ネタバレ」

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 第3180回は、「ラヴクラフト全集、その26、魔宴、ネタバレ」です。十数ページの短編です。舞台は、キングスポート(架空の都市)です。"わたし"は、100年に一度行われる一族の祭りに参加します・・・・。ユールの日(クリスマス)です、雪が積もっています。


 親類の家に入ると、答える者はいませんでした。部屋には、モリスターの「科学の驚異」、ジョーゼフ・グランヴィルの「サドカイ人の勝利」、レメギウスの「悪魔崇拝」など、異端の書が置かれていました。極め付きは、ラテン語訳の「ネクロノミコン」です。


 老人が椅子に座っているのですが、客である"わたし"を無視し続けます。「ネクロノミコン」を読み進んだ時、主が立ち上がります。「ネクロノミコン」を取り上げ、フード付きの黒衣を自らもまとい、"わたし"にも着ろと勧めます。老人に導かれ、街に出かけます。


 わが一族は、17世紀末(1692年)の魔女裁判で、4人処刑されています・・・・。教会に隣接する墓地に出かけます。人々が集まっています。墓地には鬼火が飛び交っています。いつしか、人の姿は消えています。老人に導かれ、教会の地下室に入っていきます。群集は、地下に入っていたのです。最後尾に並びます・・・・。


 果てしなく、下っていきます。そして、暗黒界にたどり着きます。死と腐臭に満ちた燐光にほのかに浮かんだ世界です・・・・。群集は、翼と水かきのある生物にまたがり、飛び立っていきます。臆する"わたし"を老人は叱咤します。


 老人の命令に抵抗した"わたし"は、気がつくと、地下の河に身を投じていました。気がついたときは、病院のベッドの中でした。凍死寸前の状態で、港内で発見されたそうです。アーカムの病院に移されます。ミスカトニック大学所蔵の「ネクロノミコン」を借り受け、一読します・・・・。


(補足) イラストは、セイラムの魔女裁判(1692年)を描いたものです。ウィキペディアから引用しました。ラスト、「ネクロノミコン」の抜粋が記載されています。


 『 最下(いやした)の洞窟、その驚異こそ奇怪にして恐るべきものなれば、窺(うかが)い見ることを得ず。死せる思念新たに活命し、面妖にも肉をまといし地こそ呪われたり、頭備えぬ魂こそ邪悪なり・・・・。』(大西啓裕氏訳)


(蛇足) 「ネクロノミコン ラテン語訳」の完全版は、大英博物館、ミスカトニック大学などに保管された5冊しか現存していません(ネクロノミコンの歴史※)。老人所有のネクロノミコンは、不完全版と言うことでしょうか。"わが一族"の雰囲気は、ピックマン家(※)に通ずるものがあります。なお、ピックマン家に伝わるネクロノミコンは、ギリシア語訳です。


(追記) ※印をつけた作品につきましては、既にブログに書いています。

「ネクロノミコンの歴史」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10822809577.html

「ピックマンのモデル」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10814622287.html