創薬メモ

創薬化学、有機化学、有機合成について書き進めていきます。


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First-in-class を基準とし、上市時期を考慮に加えた医薬品の分類がある。

これは、Booth と Zemmel によって提唱された分類方法である。

 

Nature Reviews Drug Discovery 2003, 2, 838.

 

この分類法に基づくと、医薬品は以下の4つのカテゴリーに分類される。

 

1) Novel ≒ First-in-class

 

第1号製品の上市から2年以内に発売された、

同様の作用機序・薬理ターゲットを有する医薬品のこと。

 

2) Fast Followers

 

First-in-class と同様の作用機序が臨床で確認され、

かつ、First-in-class の上市から2~5年以内に上市された医薬品のこと。

 

3) Differentiator

 

先行品により作用機序の知見がすでに確立されており、

かつ、First-in-class の上市から5~15年以内に上市された医薬品のこと。

 

4) Latecomers

 

先行品により作用機序の知見がすでに確立されており、

かつ、First-in-class の上市から15年以上後に上市された医薬品のこと。

 

これらの用語は、新規に上市される医薬品が先行品に対して、

明確な差別化ポイントをすでに有していることが前提である。

発売時期の違いのみに着眼した言葉ではない。

これは、特許の観点からも自明であると言える。

 

特許出願の条件としては、以下のものが考えられる。

 

・発明であること

・産業上利用性

・新規性

・進歩性

・公序良俗を害するおそれがないこと

出願の単一性

 

医薬品の価値を決定づける上で、「新規性」と「進歩性」は、特に重要な要素である。

要するに、新規性や進歩性が合理的に主張できなければ、

そもそも特許が取得できないわけで、上市するのも不可能なわけである。

 

新規性や進歩性の考え方、認定手順については、特許法により定められている。

 

※参考 第 2 章 新規性・進歩性 (特許庁)

 

以下は、一部の抜粋である。

 

 ※新規性

 

 第二十九条 第1項

 

 産業上利用することができる発明をした者は、

 次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。


 一  特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
 二  特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
 三  特許出願前に日本国内又は外国において、

    頒布された刊行物に記載された発明又は

    電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」

 

 1.4 新規性の判断の基本的な考え方

 新規性の有無は、請求項に係る発明が

 第29条第 1 項各号に掲げる発明であるかどうかによって判断する。

 特許請求の範囲に二以上の請求項がある場合は、請求項ごとに判断する。

 

 ※進歩性

 

 第二十九条 第2項

 

 特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が
 前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、
 その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない

 

 2.1 第 29 条第 2 項の規定の趣旨


 第 29 条第 2 項の規定の趣旨は、

 通常の技術者が容易に発明をすることができたものについて特許権を付与することは、

 技術進歩に役立たないばかりでなく、かえってその妨げになるので、

 そのような発明を特許付与の対象から排除しようというものである。

 

 2.4 進歩性判断の基本的な考え方

 

 (1) 進歩性の判断は、本願発明の属する技術分野における出願時の技術水準を

   的確に把握した上で、当業者であればどのようにするかを常に考慮して、

   引用発明に基づいて当業者が請求項に係る発明に

   容易に想到できたことの論理づけができるか否かにより行う。 

 

 (2) 具体的には、請求項に係る発明及び引用発明(一又は複数)を認定した後、

   論理づけに最も適した一の引用発明を選び、請求項に係る発明と引用発明を対比して、

   請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明を

   特定するための事項との一致点・相違点を明らかにした上で、

   この引用発明や他の引用発明 (周知・慣用技術も含む)の内容及び技術常識から、

   請求項に係る発明に対して進歩性の存在を否定し得る論理の構築を試みる。

 

   論理づけは、種々の観点、広範な観点から行うことが可能である。

   例えば、請求項に係る発明が、引用発明からの最適材料の選択あるいは

   設計変更や単なる寄せ集めに該当するか どうか検討したり、あるいは、

   引用発明の内容に動機づけとなり得るものがあるかどうかを検討する。

   また、 引用発明と比較した有利な効果が

   明細書等の記載から明確に把握される場合には、

   進歩性の存在を肯 定的に推認するのに役立つ事実として、これを参酌する。 

   その結果、論理づけができた場合は請求項に係る発明の進歩性は否定され、

   論理づけができない場合は進歩性は否定されない。 

 

 (3) なお、請求項に係る発明及び引用発明の認定、

   並びに請求項に係る発明と引用発明との対比の手法は

   「新規性の判断の手法」と共通である(1.5.1~1.5.4 参照)。

 

 (補足) 画期的な新薬について

 

 卓越した新規性や進歩性を有する「画期的な新薬」においては、

 薬価評価の面でも大きな付加価値を生じる。

 これは薬価の計算において、画期性加算が設けられているためである。

 

 画期性加算は、以下のように定義づけられている。

 

 1) 臨床上有用な新規の作用機序を有すること

 

 2) 類似薬に比べて、高い有効性、または、高い安全性を有することが、

   客観的に示されていること

 

 3) 当該新規収載品より、当該新規収載品の対象となる疾病、

   または、負傷の治療方法の改善が客観的に示されていること

 

 上記の3要件をすべて満たす医薬品に対しては、

 類似薬比較方式で算定された価格の最大 70%~120% の範囲で加算が行われる。

 

探索研究や臨床開発は、極めて困難な仕事である。

一方で、医薬品が「定義可能な特定の化学構造」を持つ以上、マネするのは容易である。

医薬品が正当な経済的価値を生み出すには、特許による防壁が不可欠である。

 

こういった事情は、難解な数学的問題が解決されるプロセスと似ていると思う。

難問は最初に誰かが解くまで、基本的には誰にも解けない。素人などには手も足も出ない。

しかし、一人の天才によって、その解法が提示されると、

不特定多数の人が勉強して "理解できる" くらいの「認識対象」となってしまう。

考えてみるとこれは、驚異的な「パラダイム・チェンジの体験」である。

 

似たような事情は、医薬品の研究開発においても、多かれ少なかれ存在している。

医薬品分子の構造が確定される前と後で、社会全体のパラダイムは大きく変化する。

 

「先行的な医薬品の研究開発」は、著しく困難な仕事である。

しかし、化合物の構造というものが存在する以上、

ある種の「解答」「指針」「出発点」が容易に定義できてしまう。

したがって、後から参入して、マネするのは簡単なわけである。

先人による臨床試験により、薬効や毒性のプロファイルはすでに明らかになっている。

後期参入者のリスクやコストは、先行者のそれよりも遥かに低くなるのである。

 

もし、特許制度がなくなれば、後だしジャンケンが横行することになるだろう。

先発品の研究開発に従事した企業は、投資資金の回収すら難しくなる。

新薬の開発という行為自体、経済的な理由で不可能になると思われる。

これは何より、新薬創製に携わる研究者、知識労働者たちに対する冒涜である。

 

社会に実質的なイノベーションをもたらすのは、現場の卓越した知識労働者である。

彼らの経済的リターンを確保する上で、特許制度は必要不可欠なものである。

 

もっとも、医薬品という知的財産が特許によって防衛されている以上、

医薬品開発・医薬品ビジネスは、特許制度に由来する「制約条件」に縛られることになる。

まず、特許を成立させるには、要求されるだけの必要条件を満たす必要がある。

そして、特許期間は有限である。(特許の存続期間は20年)

医薬品の経済的価値は、社会制度や時間による制約を大きく受けることになる。

 

Booth の分類における「時間の概念」は、

着想する機会の多寡、初期情報の有利さ、研究開発期間の長さ、という問題だけではなく、

先行品の持つ経済的価値の変化を考える上でも、重要な要素だと考えられる。

 

■ First-in-class と Best-in-class

 

First-in-class という言葉は、Booth の定義する Novel と、ほとんど同じ意味だと思われる。

 

一方、Best-in-class は、Fast Followers と Differentiator の両方に帰属できる。

First Followers と Differentiator に属する医薬品のうち、

その時々における最良の薬のことを Best-in-class と呼べば良いと思う。

 

医薬品開発は、自然科学的な側面だけでなく、ビジネスの側面も併せ持つ。

後者の要素により、医薬品開発はより複雑化し、高い戦略性が要求されるようになる。

 

現実というのは実に不条理であり、画期性の高い Novel が、

常に経済的な成功を収めるわけではないのである。

2000年の世界売上を見てみると、Novel に対して、

Fast Followers が約2倍、Differentiator は1.5倍の売上になっている。

ブロックバスターの多くが Fast Followers や Differentiator から出ている。

 

医薬品開発は「ビジネスの側面も大きい」というだけの話である。

顧客である患者は「新規よりも最良の薬」を求める傾向にあると言える。

 

経済的な成功に至るまでには、医薬品の持つ独自性だけではなく、

企業によるマーケティング、処方における医師や薬剤師の判断、

患者自身の持つパラダイムや思い込みなど、

実に様々な要因が絡んでくると思われる。

 

重要なのは、顧客である患者と向き合う努力である。

これは、現場の研究者であっても同じことであろう。

 

『マーケティングを最も短い言葉で定義すると、

 「ニーズに応えて利益をあげること」となる。』

 

『マーケティングとは経営そのもので、

 消費者に自社を愛してもらうことが最終的なゴールだ。』

 

『市場のある部分に対して、自社製品が最善の選択肢であると示すことが出来れば、

 そのセグメントでリーダーになれる。』

 

『私は、ブランドとはマーケティングの部分集合だと位置付けています。

 マーケティングは市場、すなわち顧客と向き合うことそのものです。

 ブランドはそのための道具なのです。

 マーケティング活動のあらゆる要素を結び付ける接着剤といえば、

 イメージが湧いてくるでしょうか。』

 

『なぜその人はあなたの企業やその商品を選んだのか、

 その本当の理由を理解するためには、直接会話することが重要です。』

 

『顧客を理解すること。

 そして顧客ごとの異なるニーズを見抜くことが重要だ。』

 

(フィリップ・コトラー)

 

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