「なんか、今回はうまくいってる気がする!」

 

 

 

 

妊活中、とくにタイミング法から

人工授精に切り替えた当初は

よく妻のテンションは上がりました。

 

 

 

これがまたよく出来たもので、

というか不思議なもので

1日や2日、生理予定日から

生理が遅れたりするのです。

 

 

 

 

だから余計に期待は高まる。

 

 

 

そして早期妊娠検査薬が消費されていく。

 

 

 

 

でも検査薬は何の反応も見せず、

期待してしまったぶん、

生理が来たときのガックリ感は

回を重ねるごとに大きくなっていくわけです。

 

 

 

 

「今回こそは、妊娠したかもしれない!」

 

 

 

こういうとき、夫のとるべきリアクションは難しい。

 

 

そもそも僕はどこに出しても恥ずかしいくらいキチンとひねくれた大人なので、

上手くいったときの喜びよりも、

上手くいかなかったときのガックリを、

警戒して行動してしまうタイプです。

 

 

 

しかも変なところだけ素直な性格なので、

思った通りに

 

 

 

「そんなに期待しないほうがいいよ」

 

 

 

とか口にしてしまうわけです。

 

 

 

「は? なんでそんなこと言うわけ?」

 

 

となるのは

おそらくどこの妊活夫婦でも

似たようなもんじゃないのかなと思います。

 

 

 

ただ僕の妻はヤンキー値が高いので

最初の「は?」がやや強めです。

 

むしろ「は?」の最上級表現である

「あ?」が発音されます。

 

 

 

 

「いや、もちろん妊娠してたらうれしいのは当然だけどさ」

 

 

「当然だけど、なに?」

 

 

「だから、もしね、万が一、上手くいかなかったら余計に落ち込むからさ」

 

 

「落ち込むからなに?」

 

 

「それを避けるためにね、心静かに、平穏な日々のなかで粛々と結果を待てば……

 

 

「まだ結果もわかる前から、そんなに落ち込むこと考える必要なくない?」

 

 

「それは君が紙吹雪の舞う真っ赤なヤンキー街道をひた走って来たからだよ。僕みたいにひなたを避けてね、むしろ日陰を探して青春時代を歩いて来た人間からすれば、いつ、何時、誰かが掘った落とし穴に落ちて両足を即複雑骨折するかもわからないという緊張感を持って……

 

 

 

 

 

「あ?」

 

 

 

となるわけです。

 

 

 

もちろん、

 

 

 

「そうだね、今回はうまくいってるといいね」

 

 

 

と言えばそれで丸く収まるのかもしれないのだけど、

それはそれでどこか嘘をついているというか、

本心を偽っている気がしてしまって、

言葉が上滑りして聞こえてしまう。

 

 

 

 

妊活中の夫婦の会話は難しい。

 

 

とくに生理予定日付近の会話は。

 

 

二人の望みも期待も同じなのにね。

 

 

 

 

僕らの夫婦の人工授精は

三回連続空振りしました。

 

 

タイミング法から数えれば

5回、5ヶ月連続。

 

 

そのたびに空振りの落ち込みは

大きくなっていきました。

 

 

僕が再び生殖医療科と面会したのは

その後のことでした。

 

 

 

つづく

 

 

 

 

妊活編① 我が家の妊活の始めかた その1

 

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