勉強すると脳細胞が増える仕組みの一端を、東大の久恒辰博・助教授(脳科学)と大学院生の戸塚祐介さんが実験で突き止めた。何かを覚える時に出ると知られている脳波の一種「シータ波」が脳の中の海馬という部分に伝わると、将来脳神経細胞に育つ前駆細胞が刺激され、最終的に脳細胞が増えることがわかった。15日付の米科学誌「ニューロン」に発表する。

 実験では、マウスの脳を切り取った切片に電極を刺し、シータ波と同じような刺激を人工的に与えた。すると、海馬にある前駆細胞が興奮し、この興奮が引き金になって前駆細胞が脳神経細胞に育つことがわかった。

 成人の脳の神経細胞はいったん失われると再生できないといわれていたが、98年にスウェーデンの科学者が成人の脳でも海馬で神経細胞が新しく生まれると発表し、注目された。今回の研究で、新しく生まれるきっかけを作るのはシータ波であることが示された。

 久恒さんは「人も学習しているときに海馬からシータ波が出ているとの研究がある。勉強すると頭がよくなる仕組みがわかった」と話す。