2/17『マジック教室(オリジナルターベルコース・レッスン56』終了しました。

 人体串刺し(貫通型)イリュージョン特集です。原型とされるのはインドを代表する魔術「ヒンズーバスケット」です。現代においても盛んに行われている演目ですが、ターベルの時代においてもとてもポピュラーでした。これが進化してゆき、20世紀初頭にセンセーショナルを巻き起こした「美女の胴切り」へとつながってゆくのです。この演目は当時リアリティとグロテスクさもあってかとても話題となりました。古くから存在するこの貫通型イリュージョンですが、正しいショーマンシップが発揮さえすれば、決して古びることはないと断言しています。実際にこの後、進化してジグザグが誕生し、さらにはオリガミボックスなどが世に出てくることになるのです。
 ターベルは、バスケットや箱などに入っている状態の人間に剣などが刺さる、というのは想像力を刺激して良い効果を上げますが、リアリティを求めるがあまり、本当に直接剣などが刺さった状態を見せる、あるいは血を出す、というのは良くないことだ、と苦言を申しています。なんといっても観客を喜ばすのが主体であって、喜んだ結果、あなたが儲かるのですよ、と言うのです。
 またターベルは本来載せるべきイリュージョンとして火を使ったものを考えていたようですが、この時代においても火に対する恐怖から、割愛することになったことが書かれています。これらのことからも他者に気をかけるターベルの性格がうかがい知れるかと思います。

 なお下記の動画は最も近い現象と思われるものを選んだものでターベルの記したものとは異なります。ご了承ください。

1.ソード・ボックス(THE SWORD BOX)
 ヒンズーバスケットの進化系です。剣を12~36本刺すことができます。なおかつトドメとして上から垂直にやりを突き刺します。
https://www.youtube.com/watch?v=8Bvv_IsTzO8

2.貫通する鋼鉄の棒(THE PENETRATIVE STEEL BARS)
 この作品では現代では珍しく男性がキャビネットの中に入ります。27本もの鉄の棒が同方向からスパイク状に刺されます。
https://www.youtube.com/watch?v=jEKkJ0JgkPA

3.不死身の少女(THE INDESTRUCTIBLE GIRL)
 現代では女性アシスタントがイリュージョンの箱の中に入って剣などを刺されるということが当たり前ですが、こうしたスタイルは19世紀末から20世紀初頭にかけて作られたものです。女性は男性に比べて華やかな存在であり、また女性が箱の中に入って危険な目にあっているということは観客の想像力を刺激します。そして何よりも男性よりもサイズが小さく、身体が柔らかいという特性が生かされます。この演目は上記の進化系です。上記と違いキャビネットの正面に小窓があってそこから女性が顔を出すことができます。こうしたタイプの場合は観客は、いつの間にか箱を抜け出して、中が空っぽだ、と想像する場合があります。ですから全部の棒が刺さったあとに小窓から顔を出すということが効果的になるのです。ヒンズーバスケットの場合も剣が刺さったあとに手を隙間から出すことで、まだバスケット内にいることをアピールします。こうしたことで観客が思っていることを否定し、興味を持たせ続けさせるのです。
https://www.youtube.com/watch?v=Out_OfGDlFg&list=PLea0SuE4-e_ESYZ9ltdAM-w_RuUYe_iYR

4.美女の胴切り(SAWING A WOMAN IN HALF)
 この時代においては最もセンセーショナルで刺激的な最新イリュージョンでした。ターベルはセルビットとゴールディンの名前を出しています。どうやらアメリカにおいてはゴールディンによってこの演目が有名となり、その後に英国よりセルビットが同種の演技を行ったことから論争になったようです。ゴールディンは同種の演目を行ったマジシャンたちと複数の裁判を行い、結果財産のほとんどを失ったと言われています。近年ではこのタイプはセルビット考案ということで落ち着いているようです。ターベルによれば当時パリで著名なディーラーであるチャールズ・ドベアから1843年のカタログに胴切りがあることを示されたことが述べられています。
 セルビットとゴールディン以降はサーストンやダンテ、ルロイ、ブラックストーンなども独自のやり方で人気を博しました。セルビット式は箱の中に完全に女性が隠れてしまいます。ゴールディン式は箱から女性の頭と足が出ている状態となります。ここではセルビット式が解説されます。この方式の面白い点は女性の手首と足首をそれぞれロープで縛り、そのロープを箱の穴から出して、舞台に上がってもらった観客たちにそれぞれを持ってもらうというところでしょう。これによって女性は身動きがとれないということがリアルに伝わります。
 またここではパブリシティスタントとしての役割も解説されます。どのようにスポンサーを付けて行ってきたかが背景としてわかるとこれも面白いと思います。ノコ切りにしてもショーマンシップの実例を挙げています。注目してもらいたいのはパター(セリフ)です。当時はこのような演出だったのかということがお分かりになると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=ceFtQw8Vr4I

 次回は3月17日(日)にレッスン57を行います。キャビネット特集です。ジム・ステインマイヤーは著書で箱物マジックの第一号はトーマス・トービンのプロテウス・キャビネットだと述べています。このプロテウス・キャビネットの進化系がテーマとなります。イリュージョンに関しては当店で再現することが不可能です。解説だけとなりますが、ご了承ください。
 また今までの中から重要部分を抜き出して復習を行います。もう一度ターベルシステムを勉強し直したい方もぜひご参加ください。
 マジック教室終了後には飲み会を行います。ぜひ皆様ふるってご参加ください。お待ちしております。