60歳を過ぎたらペットを飼うのは控えるべき?

そんな議論を時折、耳にするようになりました。「飼主が高齢になると十分に世話ができなくなる」「先に死んでしまったら残されたペットがかわいそう」など、いろいろな意見があります。

 

でも、私はあえて言います。60歳からの人生にこそ、ペットが必要なのだと。

人は誰かの役に立ち、守るべきものがあると元気でいられます。定年退職して仕事をリタイアしたあとや、子育てがひと段落して子供たちが独立すると、自分はもう誰からも必要とされていないと感じ、気力を失ってしまう人もいます。でも犬や猫はいつだって大好きな飼主を頼りにし、必要としてくれます。

竜之介動物病院に来る飼主でもペットを看取ったあと、「もう年だから飼わない」と言う人がいます。それは自分の年齢を考えた正当な理由ですが、この人だったらまだ飼える、飼って欲しいいなぁと思う時には「人手が足りないから1週間だけ、子猫を面倒みてもらえないか」と、お願いしてみます。するとその人は「もう少し預かってもいいよ」「このまま飼ってもいいかなぁ」「またペットを飼うかなぁ」となります。子猫を世話することで「お腹空いてるかなぁ?」などと相手を思いやる気持ちが活性化し、その人自身が前向きになり、元気になっていくのです。

2016年4月に発生した熊本地震の際、私は竜之介ビルを「ペット同伴避難所」として開放し、1ヶ月間で延べ1500人の飼主とペットを受け入れました。その時、ペットと一緒にいる人たちは被災していても表情が明るく、活気にあふれていることを目の当たりにしました「この子のためにも、自分が元気でいなければ」とペットの存在が復興の原動力となっていたのです。これは高齢者にも同様なことが言えるのではないでしょうか。

60歳からの人生にこそ、ペットが必要です!もちろんそのためには飼主にも準備しておいていただきたいことがあります。いま高齢者がペットと暮らすことに批判的な現状を踏まえて、解決するために何をしておくべきかをこの本(イヌじまい/ネコじまい)を通してみなさんと考えていきたいと思います。